Microsoft 社の Office Blog で新しい SharePoint リストに関するアップデート情報が正式に公開されました。
Office 365 を利用しているユーザーのうち先行リリースを設定しているユーザーには、新しい SharePoint リストが 2016年8月よりロールアウト開始されます。
さて、新しいリストがどのようなものかをまずはコンパクトに説明しておきましょう。
先日ロールアウトが開始された新しいドキュメント ライブラリと似た見た目になっており、リボン メニューはなくなります。
SharePoint モバイル アプリにも最適化されています。モバイル ブラウザーの画面イメージは次の通り。
さて、ここからが肝心のお話です。
既存のリストは " SharePoint クラシック リスト" と呼ばれますが、ほとんどの SharePoint リストは自動的に新しいインタフェースを継承することになるそうです。ただし、従来のモードも引き続きサポートするとのこと。ユーザーがリストにアクセスする度にMicrosoftはカスタマイズの互換性をモニタしているそうです。サポートされないブラウザーや JSLInkのカスタマイズなど、互換性の阻害要因があれば、自動的にクラシック設定のままにします。もちろん、ユーザーは従来の画面のままを選択することも出来るほか、管理者はリスト、サイト、サイトコレクション、テナントレベルで既定値をクラシックのままにしておくこともできるそうです。そして、"クラシックモードを削除する予定は当面ない" ということが重要です。
現在のクラシックのままでは、やはり昨今のWebの技術からすると古さは否めず、レスポンシブWebデザイン対応にもなっていません。そのため、モバイル ファーストを考えるとそろそろ大幅な変更を加える過渡期に来ているのは間違いありません。
ただし、ユーザーからすればいきなり変えられても困る、というところは当然であり、当面の猶予期間内に徐々に新しいインターフェイスへ移行を進めていく必要がありそうです。なお、Modern SharePoint リストのカスタマイズ手法は、近くにリリースされる SharePoint Framework で対応していくことになります。
SharePoint リストをかなり使い込んでいるケースとしては、Notesからの移行などでよく見られるワークフローとの組み合わせがあります。リストの見栄えは、少し前までは InfoPathでカスタマイズというのが主流であり、ここにいくらか XSLTでのカスタマイズなどもありました。しかし、昨今の技術移り変わりの中ではすでに古びてしまい、いろいろとほころびを見せていたわけです。マイクロソフト社はこうしたリストのカスタマイズやワークフローに関して、新しいアプローチとしてAzureを基盤とする PowerApps と Microsoft Flow を推し進めています。PowerApps は端的に言えば、入力フォームを作成して、データの取得と保存までノンコーディングで開発するツールであり、Microsoft Flow はデータフローを制御するツールです。
こうした新しい技術のアプローチの特徴としては、モバイルを意識したシンプルなUI と、データフローが SharePointの内側に閉じず、外向きに向かっており、Microsoft 社以外も含め様々なサービスとつながることです。それもノンコーディングで。そこで挙げられるのが、Exchange, SQL , Dynamics, Salesforce, Google, Mail Chimp, Twitter, Wunderlist などであるわけです。
弊社の研修などではよく、「Office 365 をクラウド版のグループウェアと呼ぶのは日本のマーケティング上の話であり、海外ではこうした呼び名はほとんど見られない。言葉は陳腐化するためである。従来からあるグループウェアの発想からは異なっているので言葉にとらわれないように」というようなことを再三申し上げています。従来のグループウェアのイメージは、各製品の内部ですべてが完結する方向でしたが、現在は外向きです。製品の垣根を越えたデータのやりとりがよりスムーズに出来るようになってきています。そのため、マイクロソフト社はこうした流れを止めてしまわないよう、諸刃であるデータのセキュリティや機密性を確保するため、Office 365 全体としてセキュリティ強化、コンプライアンス強化にもより積極的に取り組んできているようです。
とかくアップデートというと振り回されがちですが、全体像を見据えながら、進化の方向性を見定めOffice 365 の活用を進めていくとよいのではないでしょうか?