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2024年2月16日 (金)

旧名称: Bing Chat Enterprise は現在、Microsoft Copilot という名称になっています。これと "Copilot for Microsoft 365" とが混乱している方を割と見かけるので簡単に整理しておこうと思います。

Copilot の名称の変遷

Microsoft Bing(www.bing.com)にWebブラウザーを使ってアクセスすると画面上部に「COPILOT」タブが表示されます。これをクリックすると文字通り Copilot によるAIチャットが利用できるようになっています。ユーザーは自然な対話形式で情報を得たり、課題解決する糸口を見つけられたりします。様々な情報を収集するのには検索エンジンとしての Bing の技術が生かされています。

Copilotは大規模言語モデルとして GTP-4 DALL-E 3 を使用しています。ChatGPT とは異なり、回答の根拠となったWebサイトのURLが示されようにもなっています。

Bing Chat から Copilot へ

Copilot は初期のころは Bing Chat という機能としてリリースされました。ここで名称の変遷について簡単に確認しておきましょう。

2023年2月7日に Microsoft は Bing の検索エクスペリエンスの一部としてチャットボットAI として Bing Chat を導入しました。最初は個人向けのサービスが投入されたわけですが、その後、2023年7月18日に企業向けの Bing チャットとして Bing Chat Enterprise を発表します。 2023年11月15日Bing Chat Bing Chat Enterprise Copilot に名称を変更することになります。

  • Bing Chat → Microsoft Copilot
  • Bing Chat Enterprise → Microsoft Copilot → Microsoft Copilot with commercial data protection (商用データ保護を伴うCopilot)
 
Bing チャット は最初はEdge 上でだけ利用できるようになっており Bing  に Microsoft アカウント(個人アカウント) でサインインすることで利用できていました。現在は、Copilot は公的な Web サービスとしてだれでも利用できるようになっており、サインインしなくても下記のURLから Copilot (旧Bing チャット) を利用できます。
 
次の図は Edge にゲストでアクセスしているところであり、対話上ではたまたまですがBingチャットという言葉が返ってきています。古い名称はまだ一部に残っているようです。
 

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現在は Edge に限らず、次の主要なブラウザー上でも動作します(それぞれ最新版であること)。
  • Google Chrome
  • Firefox 
  • Safari
下図は Google Chrome 上での Copilot の画面です。

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Edge と Copilot 

ここからは Edge に的を絞って話をすすめていきましょう。Edge を使ってにアクセスし、Microsoft アカウント(個人アカウント)または 職場および学校のアカウント(Entra ID) でサインインすることで、サイドバーからCopilot にアクセスできるようになります。

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この Copilot は Microsoft Copilot in Edge とも呼ばれます。

Copilot in Edge | Microsoft Learn

今、表示しているページやブラウザー上で開いている PDF ファイルの内容について質問したり要約を依頼することなどができます。この場合、Microsoft にデータを渡すことに同意することが前提となります。

ちなみにMicrosoft アカウント(個人アカウント)でサインインしていると、サイドバーには Copilot 以外に生成 AI サービスの一つである Microsoft Designer (preview) も表示されます。Entra ID アカウントでは表示されません。

Microsoft Designer - Stunning designs in a flash 

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商業データ保護

ビジネスや教育機関での利用では組織内のデータを保護するために、Copilot は商用データ保護を行います。商用データ保護が有効になるとチャットの情報は保存されず、Microsoft は目視でアクセスできません。 チャットデータは、基盤となるモデルのトレーニングにも使用されません。 Microsoft によってすべてのチャットデータが処理されるようになっており、OpenAI に情報が共有されることもありません。これにより組織外にチャットから情報が漏洩することはありません。

商用データ保護を備えた AI を活用した Web 用チャット |Microsoft Copilot

商用データ保護の機能の名称は 2024年1月下旬には 「Commercial data protection for Microsoft Copilot」に変更されています。

この機能が適用されるためにはユーザーがMicrosoft Entra ID でサインインしており、かつ次のサブスクリプションを持っている必要があります。

  • Microsoft 365 E3または E5
  • Microsoft 365 F3
  • Microsoft 365 Business Standard
  • Microsoft 365 Business Premium
  • Microsoft 365 A3または A5(教職員以上)(18歳以上)
  • Office 365 A1、A3、A5(教職員以上)(18歳以上)

上記のサブスクリプションには「Commercial data protection for Microsoft Copilot」サービスプランが付与されるため、Copilot 利用時に商用データ保護が必ず適用されます。これにはMicrosoft 365 テナント管理者が Microsoft Search in Bing の機能をオフにしていたとしても影響は受けず、Copilot 利用時に商用データ保護されます。

実際に Entra ID でサインインした当該アカウントでCopilot in Edge にアクセスすると次の図にあるように画面上部に「保護済み」と表示され、プロンプト入力部分の直前にも「このチャットでは、個人と会社のデータが保護されています」と表示されます。なお個人の Microsoft アカウントと組織アカウント(Entra ID) をリンクさせることができるため、リンクしていればどちらのアカウントで Copilot にアクセスしてもデータは保護されます。

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商用データ保護を伴わない Copilot との主な違いは次の通りです。

  • チャット履歴: 商用データ保護されている場合は、チャット履歴は現在サポートされていません。Copilotは以前のチャットを取得せず、ユーザーも組織もチャット履歴は有効になりません。
  • 3rdパーティプラグインとアクション: 外部プロバイダーに対して商用データが送信されることの内容に現時点ではサポートされていません。

Copilot を商用データ保護なしで使用できないようにするには、DNS 設定を変更する必要があります。具体的には copilot.microsoft.com のエントリーを cdp.copilot.microsoft.com の CNAME にします。詳しくは下記のリンク先を参照してください。

Copilot を管理する | Microsoft Learn

Copilot for Microsoft 365 

Copilot for Microsoft 365 は単なる Copilot とは異なります。

Microsoft Copilot for Microsoft 365 | Microsoft 365

そもそもCopilot は Bing の検索インデックスだけを利用しパブリックWebから情報に基づく生成AIサービスです。商業データ保護が有効になっている場合は、Copilot 自体が組織内リソースや Microsoft 365 Graph 内のコンテンツ(OneDrive for Business, 電子メールなど) にアクセスすることはできません。

ですが、Copilot for Microsoft 365 が利用できる場合は Copilot のもつ機能に加えて次のことが可能になります。

  • ユーザーが所属するテナントの Microsotft 365 Graph 内データにアクセスできる
  • プロンプトと回答は、Microsoft 365 固有のセキュリティ、コンプライアンス、プライバシー機能とともに、Microsoft 365のテナント境界内で完全に処理される
  • Teams, Outlook, Word といった Microsoft 365 アプリケーションから生成 AI 機能にアクセスできる

Copilot for Microsoft 365 は Microsoft 365 のアドオンとして追加購入する必要があります。購入できるのは次の Microsoft 365 のサブスクリプションを持っている組織です。

  • 大規模企業
    • Microsoft 365 E3, E5
    • Office 365 E3, E5
  • 一般法人
    • Microsoft 365 Business Standard, Business Premium
  • 樹養育機関
    • Microsoft 365 A3, A5
    • Office 365 A3, A5

価格については組織アカウントであればユーザー当たり月額¥3,750で年間契約になっています。詳しくは下記を確認してください。

Copilot for Microsoft 365 の価格

このライセンスを付与されたユーザーは Copilot in Edge 内の画面右上に「職場」と「Web」を切り替えられるようになっています。職場を選ぶと Microsoft 365 のコンテンツをもとに質問や依頼などができます。

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またwww.microsoft365.com にアクセスすると Microsoft 365 Chat が利用できるようになり、チャットで対話しながらOutlook から目的のメールを要約したりOneDriveやSharePointに格納されたファイルを探し出すことができるようになります。

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Copilot for Microsoft 365 に対応しているサービスは次の通りです。

  • Word
  • Excel
  • PowerPoint
  • Outlook
  • Teams
  • OneNote
  • Whiteboard
  • Loop
  • Microsoft 365 Chat

2024年3月以降、Copilot for SharePoint, Copilot for OneDrive も登場する予定となっています。

個人向けの Copilot 

個人向けには有償の Copilot Pro もあります。現時点では月額ユーザー当たり¥3,200で利用できます。Copilot Pro を契約することで、個人契約のMicrosoft 365 アプリ(Word, Excel, PowerPoint, Outlook, OnNote)で Copilot が利用できるようになります。

Copilot Pro プラン & 価格 - プレミアムな AI 機能と GPT-4 & GPT-4 Turbo | Microsoft Store 

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最後に

Copilot はここで紹介した Copilot と Copilot for Microsoft 365 だけでなく、GitHub Copilot や  Copilot for Windows, Power Platform 内で利用できる Copilot in Power Apps, Copilot in Power Automate など多くのものがあります。これからも増えていくでしょう。

それぞれの特徴を確認しつつうまく活用していくようにしたいですね。

参考資料

 
2023年11月 1日 (水)

  • 2023/11/2 : いくつか追記および修正しました。

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2023年11月1日付で Microsoft 365 Copilot がリリースされました。

🔗Microsoft 365 Copilot

基本的に必要なライセンスは Microsoft 365 E3 と E5であり、このライセンスを持っていることを前提に Microsoft 365 Copilot を購入できるということです。

ですが、どうやら、はじめは Microsoft 365 E3 または E5 のEA契約があり、かつ300ライセンス以上持っている大規模組織月額$30 でアドオンとして購入することで利用可能になるということのようです。

EA契約 + 300ライセンスを持っている大規模組織でしか使えないという縛りが公式ドキュメントにかかれているわけではありません。あちこち情報を調べてみると分かりますがほぼ公の話のようです。Microsoft 365 Copilot の購入は Microsoft の営業担当から購入することになっており、Microsoft 365 管理センターからライセンスを購入する現時点ではスタイルではないようです。

ちなみに、トライアルの提供はないとのこと。

小規模、中規模の組織 (SMB: Small and medium business) について

2023年9月21日付で Microsoftは次の記事を公開しています。

🔗 AI Transformation Drives Small Business Success (microsoft.com)

大まかにとらえれば、大規模だけを特に大事にしているわけではないというMicrosoft からのメッセージです。この中で、Microsoft 365 Copilot SMB Early Access Program が水面下で始まっているとのことで、時期は未定ではあるものの、今後、中小規模の組織でも利用できるようになるようです。現時点でも Microsoft 365 Business Standard と Business Premium では Copilot with Bing Chat が利用できるようになっていますし。この Bing Chat が Microsoft 365 Copilot への布石でもあるので期待したいところです。20231102_104430

言語について

また、最初は Microsoft 365 Copilot は英語からの提供のようですし、日本で話題になるのはもう少し先になりそうですね。ただ、日本語は最初からサポートはされるようです。Excel を除いては。Excelはリリース時点では英語のみが提供されます。

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質疑応答

ちなみにM365 Copilot の質疑応答は下記のリンク先でやり取りされています。

🔗 Microsoft 365 Copilot - Microsoft Community Hub

小規模な組織はがっかりだよね、というコメントもちらほら。コメントの中には "パートナー企業としてはさぁ、潜在顧客にどうやってデモすりゃいいの? " など書かれていて、個人的にはそうなんだよねぇと思うところも。

無論、現時点ではCopilot の大規模展開となると必要な計算リソースをいっきに割くのは難しいでしょうから、こうした制限を設けてから徐々に拡大していくのは道理だとは思うんですけど。それだけみんな、楽しみにしているということでもあります。

ということで、まだほとんどの日本の組織では準備フェーズだと言えると思います。Microsoft Copilot の導入のための資料としては下記に情報が公開されているので、まずはここを情報収集の入り口にするといいと思います。

🔗 Microsoft Copilot – Microsoft Adoption

「Microsoft 365 Copilot って Word, Excel, PowerPoint とかで使えるようになるってことだけど何ができるようになるんだっけ? 一覧ってないの?」という方は下記のページにまとまっています。

🔗 Microsoft 365 Copilot の概要 | Microsoft Learn

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ちなみに個人的には上記以外に Microsoft 365 Chat, セマンティック インデックスがやはりポイントかなぁと。

Microsoft Learn 

Microsoft Learn に Mcirosoft 365 Copilot の準備コースが複数公開されています。一通り確認しておくとよさそうですね。

ところで個人的には事前準備として情報保護 ( Micorosoft Purview との組み合わせ)を行う体制をみなおしておくことが重要だと思います。もちろん、 組織で安心して生系AIを利用できるようにするために、Copilot のプロンプトなどは学習させないようにするなど情報漏洩などに対応できるよう配慮がなされています。詳しくは下記に公開されています。

🔗 Microsoft 365 Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ | Microsoft Learn

とはいえ、組織内では各ユーザーが閲覧できるようになっている様々な情報をもとにメールのドラフトを書いてくれたり、文章を遂行してくれたり、グラフを探してきてくれたりするわけです。その元となるデータは誰が再利用していいものなのか? をしっかりと管理しておくことが大切です。フォルダー階層に埋もれてしまっているようなファイルも対象になり得ます。今まで気が付かなかったファイルも利用されるということ。こうした背景からもドキュメント管理のありようも、実は、今からしっかり見直していくべきだろうとも思います。上記コースだと4つめですね。


弊社でも去年から Microsoft Purview のコースの提供も始めています。独学だと大変だなぁと感じている方は、こちらの研修のご利用もご検討ください。

🔗【オフィスアイ株式会社】Microsoft Purview コンプライアンス入門~Microsoft 365 ファイルおよびメールに対する機密情報保護と情報ガバナンス~ (office-i-corp.jp)