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2023年11月22日 (水)

Microsoft Ignite 2023 が先週開催されましたが、そこで SharePoint に関するアナウンスがいくつかありました。

Microsoft SharePoint at Microsoft Ignite 2023 The pre-event Guide

今回の Ignite ではやはり目玉は "Copilot" でした。そんな中、SharePoint は少し矛先が違っていたのです。完全に「コンテンツ管理」に特化した内容にしており、 Copilot ばかりが AI の使いどころではなくコンテンツ管理にも AI は利用できるんだという強いメッセージがありました。

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Microsoft SharePoint Premium 💎の発表

さて、まず押さえておかなければいけないのが SharePoint Premium の発表でしょう。従来の Microsoft Syntex の名称から新たに SharePoint Premium に変更されることになりました。

※ちなみに、Microsoft の公式ドキュメントはまだ "SharePoint Syntex" や "Microsoft Syntex" のままになっているところも多いです。

Introducing SharePoint Premium – the future of AI powered content management and experiences - Microsoft Community Hub

詳しくは下記のビデオを参照してください。

「Transform your cloud content experiences: Introducing Microsoft SharePoint Premium | BRK255HG」

さて、ここからは上記セッション内容をかいつまみつつ、補足していきたいと思います。

もともとはコードネーム "Project Cortex(コーテックス)" から始まり、SharePoint Syntex になり、昨年に Microsoft Syntex という名称になったかと思ったら "SharePoint" ブランドが復活です。

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SharePoint Premium は SharePoint のアドオンライセンスです。従来のコンテンツ管理とは異なり、AI をうまく活用しながら大量のコンテンツをより効率的に管理するための機能群を提供します。

現在、Microsoft 365 ではコンテンツ管理の中核は SharePoint であり、組織が抱えるコンテンツ量は増大していく一方であることは間違いありません。SharePoint および SharePoint をベースとするサービスを利用するアクティブユーザー数は月当たり3億。

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そもそも、新たに追加された Microsoft Loop も Microsoft Ignite 2023のタイミングでGA(一般提供開始)となり、動画編集ソフトである ClipChamp もMicrosoft 365 に投入されました。Loop のコンテンツ、動画コンテンツなどもすべて SharePoint で管理することになるわけです。

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SharePoint に追加される日々の新規ドキュメント数は 2.3 Billion (23億)にも達しているとのこと。

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そんな中、どう効率よく管理するのかが課題です。格納して一定期間保管する必要のある「法定文書」を管理するだけでなく、日々、情報共有などのために作成されたコンテンツを有効に参照し、再活用できる必要があります。しかも、セキュリティとコンプライアンスを確保しながらです。

上記セッション内で Jeff Teper 氏は、こう述べています。

"新しい SharePoint Premium の機能について説明する前に、SharePoint の(開発に携わる)チームの大部分はこれまで以上に大きくなっており、何よりもまず、セキュリティ、コンプライアンス、パフォーマンス、信頼性、アクセシビリティといった基本的なことに重点を置いていることを強調しておきたいと思います。"

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基本機能の強化があって、さらにイノベーションをもたらしたいということですね。

オンプレミスの SharePoint 時代から20年ほど製品を見てきている私としては、もともとドキュメント管理+検索から始まった製品にポータル機能が加わり、さらに一時は BI 機能や SNS、タスク管理機能など様々な機能が追加されてきたのを知っています。一時は万能な情報基盤であり開発基盤とみる向きもあり、(個人的には) 無理やりだなと思うカスタマイズを行おうとする開発者なども少なくなかったように思います。もちろん、当時は、「こんなことができそうかな?」「やってみないと分からないな」というところは多分にあり、私自身も失敗を重ねながら多く教訓を得てきました。

SharePoint Server 2013 以降、Microsoft は CEO に Satya Nadela 氏を据え、クラウド化へと加速度的に舵を切りました。私から見るとこの頃から SharePoint はある意味で断捨離をしていったように思います。もともとSharePoint の根幹はドキュメント管理+検索+ポータル+簡易データベース(リスト)の4つだと思っています。その原点に立ち返り基本機能を整備しなおすことに力を入れ、無理していた部分はすべてそぎ落としている。例えば、SNS は Teams, Yammer, LinkedInへ。BI は Power BI へ。タスク管理は Microsoft Planner へとシフトしていったように。そのため Jeff Teper 氏のこの発言は「やはりそうか」と思うところでした。コンテンツ管理機能をより推し進めていくというのは、この流れに沿った必然といえるでしょう。

従来のコンテンツ管理から一歩進んだこれからの先進的なコンテンツ管理機能は、 SharePoint Premium に続々と追加されていくことになりそうです。

ここで Microsof Syntex として既出の情報を整理しておきましょう。

現時点では単に Microsoft Syntex というと次のようなドキュメント管理機能群が含まれています。

  • 事前構築済みのドキュメント処理
  • 構造化 & フリーフォーム ドキュメント処理
  • 非構造化ドキュメント処理
  • 光学式文字認識 (OCR)
  • コンテンツ アセンブリ
  • 画像のタグ付け
  • 分類タグ付け
  • 処理ルール (ドキュメントライブラリでルール設定によるファイルの移動やコピー,
  • コンテンツタイプの自動適用)
  • 注釈
  • コンテンツ クエリ
  • PDFのマージと抽出
  • コンテンツ タイプ ハブ

さらに、現在、Microsoft Syntex - SharePoint Advanced Managenemt (SAM) という SharePoint 管理者向けのアドオンライセンスも提供されており、ここには次の機能が含まれています(本ブログでも時々、一部の機能を紹介してきています)。

  • SharePoint サイトへのアクセスを制限
  • OneDrive コンテンツ アクセスの制限
  • OneDrive サービスへのアクセスを制限する
  • SharePoint サイトのデータアクセスガバナンスレポート
  • SharePointサイトとOneDriveの条件付きアクセスポリシー
  • SharePoint ドキュメントライブラリのセキュリティ保護
  • SharePoint サイトとOneDrive のダウンロードブロック ポリシー
  • 最近の SharePoint 管理者アクション
  • サイト ライフサイクル ポリシーの管理
  • 変更履歴レポートの作成

Microsoft Syntex - SharePoint Advanced Management の概要 - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

つまりは、Microsoft SharePoint Premium は、これら従来の Microsoft Syntex および Microsoft Syntex - SharePoint Advanced Management の機能をプラスし、さらに Microsoft 365 Copilot などの新機能をひっくるめたものと言えそうです。

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SharePoint Premium の新機能

Getting started with Microsoft SharePoint Premium – Microsoft Adoptio

SharePoint Premium – Microsoft Adoption

SharePoint Premium の機能の骨子は次の3つです。

  • Experiences (エクスペリエンス)
  • Processes (プロセス)
  • Governance (ガバナンス)

Experiences

Experiences の概要は次の通り。

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ここでは高価値コンテンツソリューション (High value content solutions) というキーワードが登場しました。契約書や請求書など、日本でいうところの法定保存文書が該当すると思います。

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これは要するに具体的なビジネス シナリオをベースとしたコンテンツ機能強化が進んでいくことを意味します。

Business Documents app in Teams (Teams内の業務ドキュメントアプリ)

その一つが "契約書の管理" です。契約をする際に署名を依頼し、内容を確認後、保管する必要があります。また、契約書のファイル管理とともに各契約の状況ががどうなっているかも把握できれば理想的です。そのための包括的な仕組みを作ろうという試みであるようです。 このことに関して、Microsoft Teams 内に「Agreements」という SharePoint ベースのアプリが追加されており、ここで契約書の管理を一元的に行えるようになります。

ちなみにこのアプリは Business Documents app in Teams (Teams内の業務ドキュメントアプリ) と呼ばれるもので、契約書、SOW (Statements of work), 請求書などにも利用できるようです。

ナビゲーションを見ると「ホーム」「Agreement」「Library」の3つが用意されており、ホームには全体を俯瞰するダッシュボードが用意されているのがわかります。

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Agreements では契約書が一覧できますが、ファイルのメタデータ(ライブラリの列)をうまく利用して、ファイルとそれに伴うステータス情報やサプライヤーなども一覧できるようになっています。契約書はメタデータを使った管理が非常に向いていますね。20231122_103824

この Agreement アプリ内から SOW を作成するデモを行っていましたが、Word が開きここに必要情報を入力します。このWordドキュメントは Syntex の持つコンテンツ アセンブリを利用できるそうで、既存のリストやライブラリなどの列情報を再利用する形で各フィールドに情報を指定できます。

注目すべきは「Agreement」タブで、ここから電子署名や承認フローを開始できるようになっているのは良いですね。20231122_110842

AI駆動型のルール逸脱を検知するエンジン

このWord内では AI 駆動型のルール逸脱を検知するエンジンが動作するようになっており、組織の標準の契約テンプレートと比較して追加の注意が必要だったり、リスクをょ高める可能性がある部分にスポットライトを当て、変更を提案してくれます。

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また、このような高価値コンテンツとされる文書を大量にアップロードすることで、新たな AI 駆動型の分析アナライザーが注意が必要なリスクの高い契約を自動的に分析し抽出してくれます。

[複数ファイルの一括アップロード]

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[AI による分析により3つのファイルにリスクが見つかった]

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[検知された内容]20231122_162400

続いては個人的に注目している電子署名についてみていきましょう。

SharePoint 電子署名 (eSignature)

昨年の Ignite でもアナウンスされていましたが、いよいよ電子署名の機能が SharePoint Premium に来るようです。

SharePoint のドキュメントライブラリに格納されているPDFファイルから直接電子署名を開始することができるようになります。まずは Microsoft が提供する電子署名を使うことになりますが、近く DocuSign や Adobe Acrobat Sign も統合されるため3rdパーティとの組み合わせた利用もできるようになるそうです。

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電子署名に関する詳しい内容は次のセッションをどうぞ。

上記セッションでデモにあるようにSharePoint ライブラリに格納されている PDF から署名を開始しますが、その際に作業用コピーが作成され、すべての署名が完了した後にこの作業コピーに追加されるようになるようです。このコピーは、既定では5年間保持されますが、組織によってドキュメント保持ポリシー(Microsoft Purview) が適用されていればそれに従います。

ということで、署名するのはユーザーはメールでこのファイルの署名用の専用リンクを受け取ることになります。組織外部の署名者が要る場合は、条件付きアクセスによって制御できるようになるそうで、Microsoft Entra 管理センターから承認されたアプリの一覧に Microsoft eSign Service を追加する必要があるようです。

詳しくは次の関連情報を参照してください。

現在、米国市場にロールアウトを開始しているようですが、他のリージョンは2024年に予定されているとのこと。日本はしばらく待つ必要がありますね。

気になる価格ですが、今のところ従量課金でありリクエストごとに $2 。ただリブランド前の情報であるため、今後料金が変わる可能性はあるかもしれません。

ドキュメント ハブ (Documents Hub)

組織の内外のユーザーが一か所からドキュメントにアクセスできるようになる場所がドキュメントハブというポータルです。これを使うと簡単にアクセスできる外部サイトをセットアップし、組織の外観に合わせて見た目のカスタマイズもできるとのこと。ただ、このことに関する詳細な技術文書はまだないようです。

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Proceeses

ここまでは Experiences の話でしたが、続いてはプロセスの話。

Autofill 列 (オートフィル)

AI によってライブラリの列の値を自動的に追加してくれる機能です。列に格納した値を説明することで、ライブラリに格納されている各ドキュメントから目的の値を見つけて追加してくれます。これによってファイルを手軽に仕分けられる。

メタデータ管理してもらいたいといっても、どうしてもユーザーにとってはファイルを放り込むだけでは済まなくなるので面倒。そうなるとメタデータを追加してくれないというのが悩ましいのですが、こうした機能があれば、自動的に情報を抽出してくれるので便利ですね。いや、ほんとメタデータはどの組織もうまく使ってもらいたい。ファイルを見つけやすくなるので。

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他にも次のような機能があります。

  • Translation for files and Stream video (ファイルと Stream ビデオの翻訳)
  • PII detection (PII 検出)
  • Multilabel classifier (複数ラベルの分類器)
  • Redaction (墨消し)

ファイルと Stream ビデオの翻訳は SharePoint Premium の機能になるとのこと。Stream に関してはまた別の記事にまとめます。

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PII検出機能では、住所、電話番号、クレジットカード情報などの個人を特定できる情報(PII)を含むファイルにフラグを立てます。

複数ラベルの分類器では、複数のモデルを実行して最適なものを見つけるのではなく、単一の AI モデルを実行してコンテンツ タイプを自動的に設定し、完全なデータ抽出と分析に適用する適切なモデルを決定します。ということで、"コンテンツタイプ" についての理解がますます重要になりますね。

墨消しでは、名前、住所、社会保障番号など、選択した機密情報を検索してコンテンツ表示から削除します。

Content Governance

コンテンツガバナンスは、Syntex - SharePoint Advanced Management の機能として提供されている機能の一部強化や新機能などがアナウンスされました。

データ アクセス ガバナンス

Syntex - SharePoint Advanced Managment (SharePoint の高度な管理) ではすでに提供されている機能ですが、UIも少し変更され機能が追加されてきます。この機能は例えば、共有リンクを過剰に作成しているサイトを検出できるようになっていますが、デモ画面を見ると電子署名のドキュメント数やを確認できるように列が追加されていたり、High value site であるかどうかの有無を指定できるようになっています。RAC (制限されたアクセス)の有効化の有無を確認する列もあります。ちなみに、RAC は SharePoint サイトのアクセス制限機能のことで、サイトからのコンテンツの共有相手を特定のMicrosoft 365 グループメンバーまたはセキュリティグループに制限する機能です。

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あとは、過剰共有されているサイトを見つけたらサイトの所有者に通知して、コンテンツを確認してもらうという一連の処理が可能です。

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この辺りのデモは去年の Microsoft Ignite でも行われていたので、ここまでは目新しさはありません。ただ、ここに AI が加わってきます。まず、AI がサイトの概況をまとめてくれます。

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また SharePoint 管理センターにも Copilot が導入されてきます。

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これにより会話しながら過剰共有の課題解決に取り組むことができるようになる。

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サイトのポリシーの提案も AI によって行ってくれるようになります。AI が各サイトごとに秘密度ラベルや共有アクセス許可(外部共有)などの推奨値を提案してくれるようです。

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サイトのライフサイクル管理

現時点では非アクティブなサイトを検出して、サイトの所有者に利用を延長するのかどうか確認するだけですが今後は機能が拡充されるようです。例えば、3回確認の催促したあとに、なんの応答もないサイトは次の選択肢のいずれかを指定できるようになる。

  • サイトをアーカイブする
  • サイトを削除する
  • 何もしない

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また AI が非アクティブサイトのトレンドを分析し、やるべきことを提案し支援してくれます。

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Microsoft 365 バックアップ / Microsoft 365 アーカイブ

ランサムウェアなどに対応するためのMicrosoft 365 バックアップと、安価なストレージでのデータの一定保管を行うアーカイブに関しては以前記事に簡単にまとめています。

SharePoint Technical Notes : Microsoft 365 バックアップと Microsoft 365 アーカイブ (lekumo.biz)

各機能がいよいよ従量課金でのパブリックプレビューとして利用できるようになります。まず Microsoft 365 アーカイブ機能のプレビューが11月16日(米国) からロールアウト開始。ちなみに、私のテナントでも利用できるようになっていました。

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アーカイブ機能のプレビュー価格は下記の通りです(Microsoft 365 Archive パブリック プレビューの使用条件 - Microsoft Syntex | Microsoft Learn)。

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バックアップと復元は、Microsoft 365 管理センターから行えます。ただこのプレビューは年末にでてくるようでまだ利用できません。

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バックアップやアーカイブの詳細はまた別の記事で紹介する予定です。

[関連情報]

新しい SharePoint の UX

これは直接的には SharePoint Premium とは関係ありませんが、今年、5月の時点で新しいUXが利用できるようになるというアナウンスがされました。この情報は下記の記事にまとめています。

SharePoint Technical Notes : 2023年5月: SharePoint & OneDrive / Microsoft Lists / Stream の大型アップデート情報 (lekumo.biz)

今後、数か月後に具体的な情報が出てくるようです。Microsoft 365 Copilotも含めた新しいポータル作成機能が出てくるのはとても楽しみです。

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料金体系

新しいブランド名が発表されたばかりであり、具体的な新しい料金体系はこれから情報が出てくるようですが既存の機能に関しては従量課金の料金表は公開されています。

Pay-as-you-go services and pricing for Microsoft Syntex - Microsoft Syntex | Microsoft Learn

2023年10月26日 (木)

Microsoft 365 バックアップMicrosoft 365 アーカイブの機能は、今年の夏に行われた Microsoft Inspire の際にいくつか発表されています。Microsoft Syntex の大規模コンテンツ管理の範疇に含まれています。

Welcome to Microsoft Inspire 2023: Introducing Microsoft 365 Backup and Microsoft 365 Archive - Microsoft Community Hub

この内容を細かく読み込んでおこうと思いつつしばらく放置してしまっていました。ようやく時間が取れたので情報整理を簡単にしておこうと思います。
※ Generative AI は使わずに自分で整理します。そうしないと記憶が定着しにくいように思うので。

なお、Microsoft 365 バックアップとアーカイブは資料によれば、2023年Q4 に Public Preview 予定とあるので、来月開催される Microsoft Ignite 2023 にあわせて発表されるのではないかと期待しています(あくまでも希望的観測)。

では、それぞれ簡単にまとめておきましょう。

Microsoft 365 バックアップ

ランサムウェアによる暗号化攻撃やセキュリティ侵害が増加しています。組織はデータや機密情報を損失しないように対応していく必要があります。こうした背景の中で Microsoft 365 に格納されているデータのバックアップとリストアもより重要になってきています。

Microsoft 365 バックアップ機能は、Microsoft 365 管理センターから特定のOneDrive(Business)、SharePoint サイト、Exchange のメールボックスを高速にバックアップし、かつリストアもできるようになります。Microsoft 365 のセキュリティおよびコンプライアンスはそのまま保証されるというのが重要な点でもあります。また、3rdパーティのソリューションと組み合わせることで Microsoft 365 のデータだけでなく非Microsoft 365 のデータもバックアップできるようになります。

実際の操作画面は下記のリンクからビデオを確認できます。

[Microsoft 365 Backup]

Microsoft 365 アーカイブ

ストレージコストが増大していく中で、頻繁には使われなくなったデータや情報については低コストで管理できるようにしたいものです。Microsoft 365 アーカイブはそのための機能であり、利用頻度が低くなったデータをアーカイブすることで、低コストで管理しようというもの。もともと SharePoint には正式な「アーカイブ機能」というものはこれまでも存在していませんでした。

この機能を使えば、Microsoft 365 外にデータを移す必要がなく、直接アーカイブしたり再びアクティブ化したりできるのがメリットです。当面は、サイト単位でのアーカイブを行うことになりますが、将来的にはファイル単位でのアーカイブもできるようになるとのこと。2024年下半期にはできるようになる予定だそうです。

[Microsoft 365 Archive]

操作自体は、SharePoint の UI から行えるようになるだけでなく、PowerShell を用いた管理も可能。SharePoint 管理センターのAdvanced Management(高度な管理)メニューに用意されている「サイトのライフサイクル管理」機能のポリシーとして組み込むこともできるようになるそうです。

ファイル単位のアーカイブができるようになれば、Microsoft Purview の保持ポリシーでも、保持期限が過ぎた後のワークフローと統合した管理ができるようにもなる。そもそも保持期限については、昔の SharePoint でも単独で設定できており、保持期限が過ぎると別のサイトなどに移動することができていました。AvePoint社のツールなどを組み合わせることで、いきなり破棄するのではなく、第一ステージでは安価なファイルサーバーなどのストレージに移動させて「アーカイブ」を行うといったこともできていました。その後、第二ステージ移行で破棄などを行うといったこともしていました。これを Microsoft 365 アーカイブは自前でも行えるようになるということですね。

2023年10月26日現在、いずれもプライベートプレビューに下記リンク先から申込ができる状態です。

Manage content at scale with Microsoft Syntex – Microsoft Adoption

Microsoft Syntex: SharePoint Advanced Management について

SharePoint Advanced Managment (SAM) は大規模コンテンツ管理のためのサービスであり、これを利用するには追加のアドオンライセンスの購入が必要です。以前の記事もご参照ください。

SharePoint Technical Notes : Microsoft Syntex - Microsoft SharePoint Advanced Management アドオンが GA (lekumo.biz)

2023年7月 6日 (木)

Micorosoft Loop アプリのパブリックプレビューが公開されたあと有志による勉強会を行いました。その時の内容は下記の記事からも参照できます。

Microsoft Loop Public Preview の勉強会開催

この時に私が色々と調べてみた結果「どうも Microsoft Loop アプリは特殊な SharePoint サイトの上に構築されているようだ」と述べたのですが正しくはありませんでした。正確にはSharePointサイトではなく、Microsoft Syntex repository services (リポジトリ サービス) に構築されていることがわかりました。このサービスは5月末の Microsoft Build 2023 で発表され、その時に明らかになったのです。

このブログでも Microsoft Syntex についてはたびたび取り上げていますが、簡単に Syntex について説明しましょう。Microsoft Syntex はもともとは SharePoint Syntex と呼ばれていましたが、2022年に開催された Microsoft Ignite 2022 で Microsoft Syntex と名前が変わりました。従来は AI を使った高度なドキュメント管理に特化していたのですが、新たな “Syntex” ブランドではより包括的なソリューションとなり、組織内の高度なコンテンツ管理に関わる機能を提供する仕組みになっています。

Syntex リポジトリサービスとは? 

※2023年7月6日現在、プライベートプレビューです。そのためまだ広くには公開されてはいません。

基本的には開発者向けのサービスですが、冒頭でも紹介した通りMicrosoft Loop もこの仕組みを使っているため Loop に興味のある方はぜひとも押さえておきたいところ。このサービスは名前通りファイルのリポジトリ(保管場所)を提供するものです。アプリ開発者にとって、ファイルを取り扱う場合にリポジトリをどうするのかというのを考えなくてはいけません。単に保管するだけではなくバージョン管理するとか検索させるとか、セキュリティはどう担保するかなど考えることが多くあるわけです。

そこで既存のノウハウをより広く活用できるようにしようという話がでてくるのです。Microsoft 365 では、SharePoint が20年以上培ってきた多くの機能を持っています。Syntex リポジトリ サービスはこの Microsoft 365 のコンテンツ管理機能を自前で作成するアプリのバックエンドとして利用できるようにしようというもの (PaaS)。このサービスを使えば単なるファイルストレージではなく、次のような機能を自前で開発していかなくてもそのまま流用できるのです。

  • バージョン管理
  • 同時編集
  • 共有
  • 検索
  • セキュリティ (アクセス権限)
  • コンプライアンス対応 など

SharePoint の歴史をさかのぼると、こうした SharePoint が標準で持っているポテンシャルを生かすために SharePoint 上で拡張機能としてアプリを作りこもうとしてきた時期があります。ですが、欲しい機能以外に SharePoint としてのUX 上の制約も色々と受けてしまうことも少なくありませんでした。しかし、この Sytnex リポジトリ サービスを利用することで Teams や SharePoint のユーザーエクスペリエンス(UX)の制約にとらわれることなく、自由にUX を設計できるようになります。

次の図は Syntex リポジトリサービスの位置づけを示すものです。Microsoft DesignerMicrosoft Loop が PaaSとしてこのサービスを使っていることがわかります。Loop アプリが出てきた当初は、特殊な SharePoint サイト上にアプリが構築されていると思っていたのですが、このサービスの発表によりそうではなくリポジトリサービスを使っていたことがわかりました。Syntex7

Syntex リポジトリサービスがもたらすメリット

エンタープライズ アプリと ISV アプリのどちらも、Microsoft 365 の信頼境界の内側に構築することになります。ISVは、独自のリポジトリソリューションをいちから構築するのではなく、顧客の個々のMicrosoft 365テナント内でファイルやドキュメントを管理できます。

SharePoint が提供する Microsoft 365 のコンテンツ管理機能をアプリに組み込めます。Syntex リポジトリ サービスには、バージョン管理、きめ細かなアクセス許可、ごみ箱、検索、サムネイル、共有などの機能が含まれています。

高度な Microsoft 365 セキュリティとコンプライアンス対応を独自のアプリにも適用できます。 Microsoft Purview 機能が提供する監査、eDiscovery、データ損失防止 (DLP)、機密ラベル、保持ラベル、暗号化制御などが利用できるということです。

アプリの一部として、顧客、ユーザー、ゲストユーザーの間で Office ドキュメントが持つ Microsoft 365 リッチコラボレーションを利用できます。Syntex リポジトリサービスを利用したアプリには、プレゼンスインジケータ、コメントでの @ メンションによる注目の喚起と文書共有の促進、リアルタイムの共同執筆などの機能も含まれます。

利用例

すでに先行していくつかのベンダーが Syntex リポジトリサービスを使ったアプリを構築しているそうです。概略をピックアップしておきます。

AvePoint社

Modern Work Solutions 社のパートナーである AvePoint 社は、Microsoft Syntex リポジトリサービスを中心に設計された AvePoint Confide アプリの新バージョンを構築

Peppermint Technology社

法律事務所管理ソフトウェアのグローバルプロバイダーであるPeppermint Technologyは、SyntexのリポジトリサービスをPeppermint CX365と統合し、包括的な文書・記録管理システムを共同顧客のMicrosoft 365テナントに提供します。

Bentley Systems社

インフラストラクチャー・エンジニアリング・ソフトウェア会社であるBentley Systems, Incorporatedは、Microsoft Syntexリポジトリサービスを活用してBentley Infrastructure Cloudを強化し、重要なファイルベースの共同オーサリングワークフローをサポートするとともに、ITによる導入障壁を取り除くことに努めています。

関連情報

詳しくは Microsoft 社の公開している次の資料を参照してください。

Announcing new Microsoft Syntex innovations – Plugins for Microsoft 365 Copilot, Repository Services - Microsoft Community Hub

Introducing Syntex repository services: Microsoft 365 superpowers for your app

2023年4月19日 (水)

下記のリンク先の記事によると、従来 SharePoint Syntex のシートライセンスを別途購入していないと利用できなかった下記の機能が、この夏(2023年)、Microsoft 365 E3, E5, A3, A5 のユーザーへと移管されることになったそうです。

  • コンテンツ クエリ
  • ユニバーサル アノテーション
  • アクセラレーター
  • タキソノミーサービス
  • ルール

Microsoft recognized as a Leader in Forrester Wave for Content Platforms - Microsoft Community Hub

結果的にユーザーごとに必要になっていた SharePoint Syntex は2023年7月1日に廃止され、その代わりに Microsoft Syntex の pay-as-you-go モデル(従量課金モデル)に移行されることになりました。

各機能の概要を確認しておきましょう。

コンテンツ クエリ

まずコンテンツ クエリですが、ライブラリにサイト列が追加されていれば、高度な検索が手軽にできるというもので、ライブラリ内に多くのドキュメントがある場合に難しい検索クエリを覚える手間が減ります。契約書などを検索するときに、任意のキーワードと組み合わせて、契約日の列の値で「いつから、いつまで」と範囲指定した検索などが容易にできるようになります。


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ユニバーサル アノテーション

PDFファイルなどにブラウザーから注釈を書き込む機能です。書き込むといっても直接ファイルを変更するわけではありません。詳しくは下記の記事を参照してください。

SharePoint Technical Notes : Syntex: PDFなどに注釈する (ユニバーサル アノテーション) (lekumo.biz)

アクセラレーター

チームサイトに対して素早く Syntex 機能を利用できるようにするための契約書管理や売掛金のサイトテンプレートを適用できるようになるというものです。

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タキソノミーサービス

用語セットの利用状況のレポートなどを管理者が利用できるようになるということですが、この記事だけだと詳細は未だよくわかりません。

ルール

ライブラリへのファイル保存時に列の値によってファイルの移動やコピーなどができる機能であり、Power Automate は必要としません。詳しくは下記の記事を参照してください。

SharePoint Technical Notes : SharePoint: ルール機能を使ったドキュメントの移動とコピー (lekumo.biz)

まとめ

個人的にこれはとてもインパクトのある変更だと感じています。より多くの人が手軽に新たなドキュメント管理機能が使えるようになれば、ドキュメント管理に課題を抱えている組織に対して私としても提案できる選択肢が増えることになります。

Microsoft Syntex のライセンスを持っているユーザーは SharePoint および OneDrive for Business に格納されているPDFファイルおよび TIFF形式のファイルにハイライトや注釈を書き込めるようになりました。この時、元のファイルは変更されません。この機能は Universal annotations (ユニバーサル アノテーション)と呼ばれます。

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2023年1月よりロールアウトが開始されており、2023年2月10日現在、このテナントで利用できるようになっています。当初は PDF と TIFF のみとのことですが、順次対応を拡大するとのことで、試すと *.ai ファイルも注釈を書き込めました。

実際の動作👇

この機能は、裁判の証拠や記録として保存するために文書を変更する必要がある場合でも、情報を呼び出したり、簡単にメモを取ったりする必要があるような法的環境で特に有用です。

[参考]

Microsoft Syntex: December updates and a 2022 wrap-up - Microsoft Community Hub

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