2025年5月16日 (金)

Microsoft 365 に導入される次世代の共有機能について

2025年5月に米国ラスベガスで開催された Microsoft 365 Community Conference にて2025年後半に導入される次世代の共有の仕組みにがアナウンスされました。

Microsoft Tech Community の記事

Simple, Smart, and Secure: The next step in sharing files in Microsoft 365 | Microsoft Community Hub

この機能がリリースされるとユーザーにとっては非常にインパクトが大きいものになるため、現段階で公開されている情報の要点を日本語で補足しつつ、抑えておこうと思います。

ヒーローリンクの登場

2011年に SharePoint Online では直接アクセス権限を付与することで共有できるようにしていました。これはオンプレミス時代の SharePoint と同じです。

そこから3年後の2014年に「リンクベースの共有」が導入されました。つまり「共有リンク」のことで、これまでは管理者が決めた範囲でのコンテンツの共有だけができていたのですが、これに加え、ユーザー自身が共有範囲を自ら決めて安全な範囲内でそのリンクを他者と共有できるようになりました。

さらに現在はユーザー規模は大幅に拡大し、毎月12億人以上が Microsoft 365 の共有ダイアログを使うようになりました。そんな中で新たなニーズも出てきます。こうした背景から Microsoft 365 の第三世代の共有機能が登場することになったのです。

この第三世代の共有リンクを「ヒーローリンク (hero link) 」と呼びます。

ヒーローリンクの登場により、共有は、よりシンプルに、よりインテリジェントに、そして既定でセキュアな状態を保てるようになります。

ヒーローリンクでは、 “リンクをコピー”をクリックしても、電子メールで送信しても、WebブラウザーのアドレスバーからURLをコピーしたとしてもすべてヒーローリンクになります。つまり、これまでは共有方法によってアクセス権限がまちまちになっていたものが統一されるわけです。

また、従来の共有リンクの場合は共有範囲が変わる場合はリンクを再度作り直す必要がありました。ですがヒーローリンクでは送信済みのリンクであっても、共有範囲のみを編集できるようになるためリンクの再作成は不要ですし、リンクを送信後にアクセスできないユーザーがいたとしても素早く対応できます。

Herosmallv2_1

[共有範囲を「追加されているユーザー」から 「組織内の全ユーザー」へと変更している]

Secure by default (セキュア バイ デフォルト)

ヒーローリンクは既定ではドキュメントにすでに追加されているユーザーのみがアクセスできます。そこからコラボレーションを進める中で必要に応じて直接人やチームを追加するなどして共有範囲を広げることも可能です。

外部ユーザーに共有されるファイルについては、共有の設定画面上にゲストとしてタグ付けされ、素早く把握できるようになります。次の図では外部ユーザーの場合は「External」とタグが表示されているのが分かります。Clipboard_image21746639511693

管理者は必要に応じてサイトコレクションやOneDriveごとに既定値を変更できます。

まただれがユーザーを追加したりファイルやフォルダーへのアクセスを更新したりできるかを制御することでよりセキュアにできます。これにより、非常に重要なコンテンツを保護する必要がある場合は、細かなアクセス権限を付与できるようになります。

画面を確認すると、選択肢は今のところ次の2つです。

  1. ファイルの所有者だけがアクセス権限を管理できる
  2. ファイルの所有者と編集権限を持つユーザーに限定する

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新しい用語 「ファイルの所有者」

“ファイルの所有者” というのは新しい用語ですが、フルコントロールを持つすべてのユーザーを意味しています。サイトの場合はサイトの所有者、OneDrive ならOneDrive の所有者などが該当します。

共有ダイアログと管理画面のエクスペリエンスの統合

次世代では、ファイルにアクセスできるのが誰なのかだけでなく、どのようにアクセスするのかもすぐにわかるようになっています。共有ダイアログとアクセス管理のエクスペリエンスが1つに統合されたためです。権限はリアルタイムで更新されます。またアクセス権限の一括更新もできるようになります。

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より細かい単位で共有する必要があれば、特定の用途で利用する追加の共有リンクを作成することも可能です。

これらの追加の共有リンクには名前を付けることができるため、リンクを追跡して特定のタスクに割り当てることも容易に行えます。

次の図は左が追加の共有リンクの作成画面で、上部で名前が付けられるようになっているのがわかります。共有範囲は組織内のユーザー全員または特定のユーザーのいずれかを選択できるようです。

Clipboard_image51746639511684

ちなみに原文では言及はないのですが、画面最下部を見ると社内向けのリンクにも “パスワード”を指定できるようですね。

その他の気になる点

原文の下の方に質問欄があり、いくつかやり取りがされています。その中から主なものをピックアップしておきます。

下位互換性

気になる既存の権限ですが、完全に下位互換性を持つとのことで従来通り動作するそうで、これまでのアクセス権限もダイアログの「追加のリンク」セクションに表示されることになります。

ファイルの名前の変更や移動

共有リンクの場合は同一サイト内であればファイル名を変更したり移動させたりした場合でも動作しましたが、ヒーローリンクも同様に動作することが期待されているそうです。詳細はロールアウトが近くなったら情報を共有するとのことです。

有効期限

リンクの有効期限についても追加のリンク機能としてサポートが続くそうです。

既存のアクセスでの共有

現在、共有リンクにある「既存のアクセス権で共有」するオプションがヒーローリンクの説明画面では見当たりませんが、ヒーローリンクの一部となっているとのこと。ヒーローリンクの既定値は「追加されたユーザーのみ」であり、これが「既存のアクセス権」と同じように機能するそうです。ただし、これまでとの違いはヒーローリンクの方が柔軟性があり、URLを変更することなくセキュリティの範囲や役割を変更できることでにあると言及されていました。

ダウンロード禁止

ダウンロード禁止も引き続き利用できるとのこと。直接のアクセス許可、ヒーローリンクおよび追加のリンクでも引き続きオプションとして選択できるそうです。

従来の「高度なアクセス権限の設定」

これまで通り、高度なアクセス権限の設定画面は引き続き利用できるそうです。

さいごに

さて、ここまで紹介してきた次世代の共有モデルである「ヒーローリンク」ですが、冒頭でも述べたように2025年後半にロールアウトが予定されています。最新情報は下記のMicrosoft 365 Roadmapでも確認できます。

Microsoft 365 のロードマップ | Microsoft 365

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リリースが近くなれば、スムーズに移行できるようにドキュメント、ビデオとガイダンスを提供する予定であるとのことです。

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