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2024年2月26日 (月)

COVID-19 によるパンデミックが宣言された翌年の2021年2月に Microsoft は自社の Microsoft 365 サービスを活用した新しい働き方を推進していくソリューションとして "Microsoft Viva シリーズ" を発表しました。その一つが今回とりあげる Viva Topics (ビバ トピックス) です。

Viva Topics は SharePoint をベースに AI を活用した新しいナレッジマネージメントシステムとして登場しました。組織内で交わされるコミュニケーションの中では製品名や単語、用語など様々な言葉が行きかいます。こうした言葉が意味するところ、関係する情報の所在、かかわっている人などを知りたくてもすぐにそうした情報にたどり着けないことも少なくありません。そんな中、AI がこうした頻繁に交わされる "言葉" をトピックとして抽出し、会話やSharePoint 上のファイル、ページなどから言葉の説明を自動的に抽出し、関係者を見つけ出し、言葉同士の相関関係を可視化するシステムが Viva Topics です。

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さて、この Viva Topics ですがタイトルにもあるように残念ながら 2025年2月22日に廃止されます。

これに伴い、Viva Topcis に対する新機能の開発への投資は 2024年2月22日より凍結されます。この記事を書いているのが2024年2月26日ですから、すでに開発は終了しているということです。今後はトピックカードは表示されなくなりますし、Viva Engage とのトピック統合も廃止となるとのこと。

Copilot の台頭

この背景にあるのが、生成AIの台頭です。2023年からMicrosoft は OpenAI 社に出資しつつ自社のサービスおよび製品に対して Microsoft Copilot を大々的に投入しました。つまり、これからは Copilot が新たな世代のナレッジマネージメントを担うということです。

そもそも、ナレッジマネージメントをシステム的に行おうという試みは Microsoft 社に限らず長年行われてきました。Notes などでもそうでし、自社開発のWebシステムを持っているところもあったのではないかと思います。SharePoint でもそうした試みは行われてきました。社内版の Wikipedia のようなものを構築しようというものです。どうしても情報はしばらくすると分散に転じるので、人の手で分散していく情報をなんとか集約しようという取り組みともいえると思います。

ただ、課題だったのが、システム構築まではいくもののそのあと誰がメンテナンスするかというところ。元ネタがあってそれをシステム化するのは良いのですが、そこから新しいナレッジを誰が登録し最新化するのか。ここが大きな課題で、どうしても情報が陳腐化していってしまい、利用頻度が下がってしまう。

そこで Viva Topics は AI を使って人の手をなるべく借りずに情報の鮮度を保っていこうという試みだったと私は考えています。そこに来て大きな変革をもたらしたのが ChatGPT をはじめとする生成AIです。

これからのナレッジマネージメント

Microsoft 社は Viva Topics にかわってこれからは Copilot for Microsoft 365を導入し、ナレッジを SharePoint ページとして生成していくように勧めています。2024年2月時点では  Copilot for SharePoint はまだロールアウトされていませんが、3月以降にロールアウトが予定されています。SharePoint のページ生成も Copilot を使って行えるようになる予定です。

つまりは、必要な時に必要な情報をその場で生成するというスタンスに変わるわけです。しかも分散した情報をもとに新たな情報を生成できる。何か不明な点があれば Copilot に尋ねればよいということですね。

結局、Viva Topicsでは最後まで日本語対応はされずじまいでした。ですが、ChatGPTベースであれば多言語対応はできているので日本語でもきちんと対応してくれるというのはありがたいことです。検索に関してもベクトル検索を利用して「自然言語で検索すれば、文脈を踏まえて結果を得られる」方向に進んでいます(Copilot for Microsoft 365 を導入していることが前提)。

ベクトル検索については次の「Copilot 用のセマンティック インデックス」に関する資料を参照してください。

Semantic Index for Copilot | Microsoft Learn

ただし、こうした仕組みを生かすにはドキュメントをはじめとする情報の整理整頓として、古い情報や間違った情報をどう排除していくかを考慮したドキュメントのライフサイクルはますます重視するべきでしょうし、機密情報保護をきちんと行っていく必要があることは言うまでもありません。各組織はCopilot を使って、Microsoft 365 に蓄積されていく情報をどのようにうまく再利用し、それそれのナレッジとして高めていけるかを模索していく必要があると考えています。

2024年2月16日 (金)

旧名称: Bing Chat Enterprise は現在、Microsoft Copilot という名称になっています。これと "Copilot for Microsoft 365" とが混乱している方を割と見かけるので簡単に整理しておこうと思います。

Copilot の名称の変遷

Microsoft Bing(www.bing.com)にWebブラウザーを使ってアクセスすると画面上部に「COPILOT」タブが表示されます。これをクリックすると文字通り Copilot によるAIチャットが利用できるようになっています。ユーザーは自然な対話形式で情報を得たり、課題解決する糸口を見つけられたりします。様々な情報を収集するのには検索エンジンとしての Bing の技術が生かされています。

Copilotは大規模言語モデルとして GTP-4 DALL-E 3 を使用しています。ChatGPT とは異なり、回答の根拠となったWebサイトのURLが示されようにもなっています。

Bing Chat から Copilot へ

Copilot は初期のころは Bing Chat という機能としてリリースされました。ここで名称の変遷について簡単に確認しておきましょう。

2023年2月7日に Microsoft は Bing の検索エクスペリエンスの一部としてチャットボットAI として Bing Chat を導入しました。最初は個人向けのサービスが投入されたわけですが、その後、2023年7月18日に企業向けの Bing チャットとして Bing Chat Enterprise を発表します。 2023年11月15日Bing Chat Bing Chat Enterprise Copilot に名称を変更することになります。

  • Bing Chat → Microsoft Copilot
  • Bing Chat Enterprise → Microsoft Copilot → Microsoft Copilot with commercial data protection (商用データ保護を伴うCopilot)
 
Bing チャット は最初はEdge 上でだけ利用できるようになっており Bing  に Microsoft アカウント(個人アカウント) でサインインすることで利用できていました。現在は、Copilot は公的な Web サービスとしてだれでも利用できるようになっており、サインインしなくても下記のURLから Copilot (旧Bing チャット) を利用できます。
 
次の図は Edge にゲストでアクセスしているところであり、対話上ではたまたまですがBingチャットという言葉が返ってきています。古い名称はまだ一部に残っているようです。
 

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現在は Edge に限らず、次の主要なブラウザー上でも動作します(それぞれ最新版であること)。
  • Google Chrome
  • Firefox 
  • Safari
下図は Google Chrome 上での Copilot の画面です。

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Edge と Copilot 

ここからは Edge に的を絞って話をすすめていきましょう。Edge を使ってにアクセスし、Microsoft アカウント(個人アカウント)または 職場および学校のアカウント(Entra ID) でサインインすることで、サイドバーからCopilot にアクセスできるようになります。

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この Copilot は Microsoft Copilot in Edge とも呼ばれます。

Copilot in Edge | Microsoft Learn

今、表示しているページやブラウザー上で開いている PDF ファイルの内容について質問したり要約を依頼することなどができます。この場合、Microsoft にデータを渡すことに同意することが前提となります。

ちなみにMicrosoft アカウント(個人アカウント)でサインインしていると、サイドバーには Copilot 以外に生成 AI サービスの一つである Microsoft Designer (preview) も表示されます。Entra ID アカウントでは表示されません。

Microsoft Designer - Stunning designs in a flash 

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商業データ保護

ビジネスや教育機関での利用では組織内のデータを保護するために、Copilot は商用データ保護を行います。商用データ保護が有効になるとチャットの情報は保存されず、Microsoft は目視でアクセスできません。 チャットデータは、基盤となるモデルのトレーニングにも使用されません。 Microsoft によってすべてのチャットデータが処理されるようになっており、OpenAI に情報が共有されることもありません。これにより組織外にチャットから情報が漏洩することはありません。

商用データ保護を備えた AI を活用した Web 用チャット |Microsoft Copilot

商用データ保護の機能の名称は 2024年1月下旬には 「Commercial data protection for Microsoft Copilot」に変更されています。

この機能が適用されるためにはユーザーがMicrosoft Entra ID でサインインしており、かつ次のサブスクリプションを持っている必要があります。

  • Microsoft 365 E3または E5
  • Microsoft 365 F3
  • Microsoft 365 Business Standard
  • Microsoft 365 Business Premium
  • Microsoft 365 A3または A5(教職員以上)(18歳以上)
  • Office 365 A1、A3、A5(教職員以上)(18歳以上)

上記のサブスクリプションには「Commercial data protection for Microsoft Copilot」サービスプランが付与されるため、Copilot 利用時に商用データ保護が必ず適用されます。これにはMicrosoft 365 テナント管理者が Microsoft Search in Bing の機能をオフにしていたとしても影響は受けず、Copilot 利用時に商用データ保護されます。

実際に Entra ID でサインインした当該アカウントでCopilot in Edge にアクセスすると次の図にあるように画面上部に「保護済み」と表示され、プロンプト入力部分の直前にも「このチャットでは、個人と会社のデータが保護されています」と表示されます。なお個人の Microsoft アカウントと組織アカウント(Entra ID) をリンクさせることができるため、リンクしていればどちらのアカウントで Copilot にアクセスしてもデータは保護されます。

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商用データ保護を伴わない Copilot との主な違いは次の通りです。

  • チャット履歴: 商用データ保護されている場合は、チャット履歴は現在サポートされていません。Copilotは以前のチャットを取得せず、ユーザーも組織もチャット履歴は有効になりません。
  • 3rdパーティプラグインとアクション: 外部プロバイダーに対して商用データが送信されることの内容に現時点ではサポートされていません。

Copilot を商用データ保護なしで使用できないようにするには、DNS 設定を変更する必要があります。具体的には copilot.microsoft.com のエントリーを cdp.copilot.microsoft.com の CNAME にします。詳しくは下記のリンク先を参照してください。

Copilot を管理する | Microsoft Learn

Copilot for Microsoft 365 

Copilot for Microsoft 365 は単なる Copilot とは異なります。

Microsoft Copilot for Microsoft 365 | Microsoft 365

そもそもCopilot は Bing の検索インデックスだけを利用しパブリックWebから情報に基づく生成AIサービスです。商業データ保護が有効になっている場合は、Copilot 自体が組織内リソースや Microsoft 365 Graph 内のコンテンツ(OneDrive for Business, 電子メールなど) にアクセスすることはできません。

ですが、Copilot for Microsoft 365 が利用できる場合は Copilot のもつ機能に加えて次のことが可能になります。

  • ユーザーが所属するテナントの Microsotft 365 Graph 内データにアクセスできる
  • プロンプトと回答は、Microsoft 365 固有のセキュリティ、コンプライアンス、プライバシー機能とともに、Microsoft 365のテナント境界内で完全に処理される
  • Teams, Outlook, Word といった Microsoft 365 アプリケーションから生成 AI 機能にアクセスできる

Copilot for Microsoft 365 は Microsoft 365 のアドオンとして追加購入する必要があります。購入できるのは次の Microsoft 365 のサブスクリプションを持っている組織です。

  • 大規模企業
    • Microsoft 365 E3, E5
    • Office 365 E3, E5
  • 一般法人
    • Microsoft 365 Business Standard, Business Premium
  • 樹養育機関
    • Microsoft 365 A3, A5
    • Office 365 A3, A5

価格については組織アカウントであればユーザー当たり月額¥3,750で年間契約になっています。詳しくは下記を確認してください。

Copilot for Microsoft 365 の価格

このライセンスを付与されたユーザーは Copilot in Edge 内の画面右上に「職場」と「Web」を切り替えられるようになっています。職場を選ぶと Microsoft 365 のコンテンツをもとに質問や依頼などができます。

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またwww.microsoft365.com にアクセスすると Microsoft 365 Chat が利用できるようになり、チャットで対話しながらOutlook から目的のメールを要約したりOneDriveやSharePointに格納されたファイルを探し出すことができるようになります。

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Copilot for Microsoft 365 に対応しているサービスは次の通りです。

  • Word
  • Excel
  • PowerPoint
  • Outlook
  • Teams
  • OneNote
  • Whiteboard
  • Loop
  • Microsoft 365 Chat

2024年3月以降、Copilot for SharePoint, Copilot for OneDrive も登場する予定となっています。

個人向けの Copilot 

個人向けには有償の Copilot Pro もあります。現時点では月額ユーザー当たり¥3,200で利用できます。Copilot Pro を契約することで、個人契約のMicrosoft 365 アプリ(Word, Excel, PowerPoint, Outlook, OnNote)で Copilot が利用できるようになります。

Copilot Pro プラン & 価格 - プレミアムな AI 機能と GPT-4 & GPT-4 Turbo | Microsoft Store 

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最後に

Copilot はここで紹介した Copilot と Copilot for Microsoft 365 だけでなく、GitHub Copilot や  Copilot for Windows, Power Platform 内で利用できる Copilot in Power Apps, Copilot in Power Automate など多くのものがあります。これからも増えていくでしょう。

それぞれの特徴を確認しつつうまく活用していくようにしたいですね。

参考資料

 
2024年2月 8日 (木)

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Office 用の Azure Information Protection (AIP) アドインは廃止となり、2024年5月1日以降無効になります。

代わりに Microsoft 365 アプリの組み込みのラベル機能に移行する必要があります。AIPによって提供されてきたOffice の秘密度ラベルを使ってきた組織はビルトインの秘密度ラベルに移行する必要があります。

マイルストーンは次の通り。

2024年4月

AIP アドインを削除した Microsoft Purview Information Protection クライアントのバージョン 3.0 がリリースされる。
Microsoft Purview Information Protection Scanner(旧 AIP スキャナー), MIP ビューアー (Windows/iOS/Android) と MIP ファイルラベラー(ファイルを右クリックして[分類と保護]を行う) を使い続けるには、新しいパッケージにアップグレードして展開する必要がある。

2024年4月11日

AIP統合ラベルアドインがサポート終了。

2024年5月1日

AIP統合ラベルアドインが Office で完全に無効化。バージョン 2.16以降、Office 用のAIP統合ラベルアドインはブロックされるようになる。AIPアドインを使い続けるための拡張子を持たないすべてのクライアントはラベルポリシーの適用が失敗する。

資料

移行手順の詳細は下記のリンク先に掲載されています。

AIP2MIPPlaybook - Microsoft Purview Customer Experience Engineering (CxE)

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FAQ については下記のブログを参照してください。

Retirement notification for the Azure Information Protection Unified Labeling add-in for Office - Microsoft Community Hub

メールやファイルを保護する最新の秘密度ラベルの情報については弊社の研修でも取り扱っておりますので、ご参考まで。

【オフィスアイ株式会社】Microsoft Purview コンプライアンス入門~Microsoft 365 ファイルおよびメールに対する機密情報保護と情報ガバナンス~ (office-i-corp.jp)

2024年2月 7日 (水)

Microsoft Forms のアンケートとクイズ機能に対してより素早く簡単に結果を Excel ファイルに同期する機能を追加されるそうです。 

あとから Excel へとエクスポートするのではなく、あらかじめ用意した Excel ファイルに自動的に回答が同期されていくため、Excel 本来が持つ豊富な機能を使ってデータを分析できるようになります。20240207_143336

新機能のエクスペリエンス

  • フォーム/クイズのページ上で自分の OneDrive 内に Excel ワークブックを作成できる
  • フォームへの回答はこのワークブックに自動的に同期される
  • ワークブックを Excel for the web で開いている間は新しい回答も自動的に同期される
  • Excelの共同編集者も Excel for the web 上で同期された回答を受け取れる

注意点

  • ライブデータをトリガーできるのは Excel for the web 上に限定される。データをデスクトップアプリで分析したい場合でも自動的に最新情報を受け取りたいのなら Excel for the web でファイルを開いておく必要がある
  • フォームはフォーム、Excel は Excel で別々に権限は管理することになる。要するにFormと同期するようにしたExcelファイルの編集者がその フォームの作成者になるわけではないということ

この新機能では新しいデータ同期のソリューションを導入しており、より信頼性が高く高速なパフォーマンスがある。まずは個人向けのフォームとクイズに対してこの新しいソリューションがロールアウトされていくことになります。

既存のグループフォームと Excel 用フォームも引き続き使えるますが利用しているテクノロジーは古く、最終的にはすべてのフォームの種類が新しいソリューションへと徐々に移行する予定になっているそうです。

ロールアウト

  • 標準リリース (プレビュー) … 2024年1月下旬~2024年3月上旬

プレビューステージの間は、フィードバックに基づいて機能を改善し、リリース後3~6か月以内にプレビューのラベルを削除する予定。

2024年1月12日 (金)

Microsoft Teams に Viva Connections アプリを追加している場合、Viva Connections アプリ上でのキーワード検索は上下に分かれるようになっています。

上の「Viva Connectins で"<検索キーワード>" を検索」を選ぶと SharePoint 側を対象にした幅広い検索が行えます。一方、下の「Microsoft Teams で残りの部分で "<検索キーワード>" を検索します」を選ぶと Teams 内の会話検索ができます。

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実際の検索画面は次の通りです。Viva Connections 検索では SharePoint 内検索と同じ画面が表示されています。

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一方の Teams 内検索では会話がヒットしています。

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画面の下部までスクロールするとTeams 内で共有されたファイルも対象になっていることがわかります。従来通りですね。20240112_173937_2

実際の操作ビデオ↓

なお、この機能はクラシックな Teams アプリでのみ有効であり、新しい Teams ではまだ利用できません。新しい Teams にも数か月後には投入されるようです。