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2024年11月 2日 (土)

現在、Microsoft 365 内の OneDrive (Business) には EnableHoldTheFile グループポリシーがありますが、2025年4月上旬~下旬にかけてこのポリシーが削除されます。このロールアウトは自動的に行われるためロールアウト前に管理者が対応べき操作はありませんが、どのように変更されるのかを管理者は把握し、ユーザーにアナウンスするなどの対応が必要になります。

このポリシーは Office ファイルの同期中の競合を処理するためのものです。 EnableHoldTheFileポリシーを明示的に有効化している場合は同期の競合が発生した場合にマージするか両方のコピーを保持するのかを指定できていました。

[参考] IT 管理者 - OneDrive ポリシーを使用して同期設定を制御する - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

このMicrosoft によるポリシーの削除前にからすでにEnableHoldTheFile ポリシーを無効化していて、ポリシー削除がロールアウトされる前だとOneDriveは競合を見つけるとそのコピーを自動作成します。そのため、ユーザーが競合をマージすることを選択する代わりに、自動的に非常に多く作成されるコピーを管理しなくてはならなくなる可能性があります。

ポリシー削除後

ロールアウト後にはこのポリシーの削除後され、Word, Excel, PowerPoint でファイルが競合した際にどのバージョンを選ぶのかユーザーが選択できるようになります。このグループポリシーに関連付けられているエクスペリエンスはすべてのテナントで有効になります。

ユーザーが Word, Excel, PowerPoint ファイルを開く時に同期の競合があれば、それを解決するようユーザーは要求されます。そこでユーザーはファイルのどれを保持するかを選択できるわけです。もし競合が解決できない場合は、バナーには「ファイルのコピーを保存する」または「変更を破棄する」のいずれかが表示されます。

PowerPoint でファイルを選択するためのユーザー通知は次のようになります。

Powerpoint_confilct_1

「ファイルのコピーを保存する」または「変更を破棄する」のユーザー通知は次の通りです。

Powerpoint_conflict_2

情報ソース

この情報はMicrosoft 365 管理センター内のメッセージセンターの Message ID: MC922630 です。

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2024年9月25日 (水)

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Power Automate を使って複数の Excel ファイルを一括生成し、それぞれの Excel ファイルで特定のOffice Scripts を実行するようにフローを組んでいたとします。Office Scripts を実行するわけですから、 Excel Online (Business) コネクターを使います。このコネクターには次の2つのスクリプト実行アクションがあります。

  • SharePoint ライブラリからスクリプトを実行する
  • スクリプトの実行

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このコネクターに最初に追加されたのは「スクリプトの実行」であり、スクリプトはユーザーの OneDrive に格納されている前提でした。ですが、そのあと、スクリプトを SharePoint のドキュメント ライブラリに格納して複数ユーザーで共有利用ができるようになりました。そこで新たに追加されたアクションが " SharePoint ライブラリからスクリプトを実行する" です。

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さて、従来からある "スクリプト実行" アクションは、スクリプトがOneDrive (Business) に格納されていることが前提であるため同時アクセスは考慮されていません。

たとえば、ファイル作成をする際に Apply to each を使って処理するときに Apply to each には「コンカレンシー制御」オプションがあります。既定ではオフで最大50まで指定できます。

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これを使えばファイル作成をバトンリレー式に1つのファイルが作成されてから次のファイルを作成するという処理を複数のファイル作成を同時に一斉作成できるようになります。ならば、このオプションを有効にしてファイル作成後にいっきに各ファイルで Office Script も動かそうか考えるわけですが、この場合はスクリプトファイルへの同時アクセスが生じることになりフローはエラーとなります。

ですが、後発のアクションである「SharePoint ライブラリからスクリプトを実行する」を利用する場合は、最初から複数同時アクセスを考慮しているため Apply to each のコンカレンシー制御を有効にしても問題なくフローが実行できます。

試しにコンカレンシー制御をおこなわずに5つのファイルを一括作成してみたところ、Apply to each には42秒ほどかかりました。

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ですが、コンカレンシー制御を有効化したところわずか9秒に短縮されました。

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このようにコンカレンシー制御はフローのロジックによって向き不向きがありますが、うまく活用できればフローの実行時間が短縮できます。

2024年7月21日 (日)

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SharePoint のドキュメント ライブラリと OneDrive ではバージョン管理の履歴を制限できるようになります。これまで、バージョン履歴がストレージの容量を圧迫してしまうことも少なくありませんでした。そこで、Microsoftは新しいバージョンの制御方法を導入することにしたのです。

ドキュメント ライブラリと OneDrive のバージョン履歴の制限の概要 (プレビュー)

従来からドキュメント ライブラリの所有者はライブラリ単位でのバージョンの制限は設定できていました。既定ではメジャーバージョンを500作成するようになっていますが、これを容量の圧迫を考慮して必要に応じて少なくするといった対応をとってきていたわけです。しかし、今回のアップデートにより、システムが自動的に判断して(インテリジェントに)、バージョンの世代や復元の確立などの要素を考慮して保持するバージョンを決定するように構成できます。ただし、従来通りの手動での管理の余地も残すため、要件に合わせて選択肢の幅が増えることになります。

📅パブリック プレビュー期間

2024年5月上旬からロールアウトを開始し、2024年6月下旬までに完了予定。この期間は既定でオフなので、必要に応じてオプトインする必要があります。

📅GA

2024年8月下旬よりロールアウトを開始し、2024年10月中頃まで完了予定。

事前設定

パブリックプレビュー中はこの機能は既定でオフになっています。オプトインするにはテナントレベルの管理者が SharePoint Online 管理シェルを使って有効化する必要があります。管理シェルのバージョンは 16.0.24810.12000以上が必要です。

利用するコマンドは次の通りです。

Set-SPOTenant -EnableVersionExpirationSetting $true

上記の設定を行うと SharePoint 管理センターの「設定」ページに次のように「バージョン履歴の制限」という管理項目が追加されます。

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設定

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バージョン管理の履歴を制限する設定では SharePoint と OneDrive の双方に対して組織全体としてバージョン管理をどのように行うのかを決定します。

オプションとして自動と手動があります。既定値は “手動” です。

手動

手動では単純に時間の経過をベースに古いものを削除します。

メジャーバージョンの数の既定値はこれまで通り "500" であり、この数を超えると自動的に古いものから削除される仕組みです。

時間は、一定の期間を経過したバージョンを削除するというものですが、既定では"しない" になっています。

メジャーバージョン数は従来のチームサイトの設定と同様に最低100、最大50,000を指定できます。

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時間は、既定値は “しない” ですが、これ以外に次の選択肢があります。

  • 3か月
  • 6か月
  • 1年
  • ユーザー指定

このUIからは30日未満の値は指定できません。公開されているAPI経由では30未満にすることはできますが、ユーザーによる不注意からデータが損失してしまう可能性が高くなるためMicrosoftはこうした設定は推奨していません。

自動

自動設定が推奨値です。自動オプションに関しては、特に指定する項目はありません。こちらは単に時間の経過だけを考慮するのではなく、アクティビティを考慮するというのがポイントです。

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この設定では、最近作成したほとんどのバージョンにアクセスできますが、古いバージョンで保持されるバージョンが少なくなります。

利用する確率の高そうなバージョンのみを残し、使わないであろう古いバージョンは適宜、間引いていくアプローチです。このようにしてストレージ使用量を最適化します。Photo

Microsoft の資料(Plan version storage for document libraries(Preview) - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn)を見ると次のような例が挙げられています。3つのオプションでの比較です。

  • 手動: 60日経過すると削除
  • 手動: 500バージョン以上は古いものから削除
  • 自動


3か月間、バージョンが追加された後の経過がどうなるのかを示しています。Automaticsettingversionstorage60日経過すると削除するパターンでは、3か月以上経過すると保持されるバージョンが0になり容量は最も節約できますが、反面、以前のバージョンに復元することはできなくなります。

従来の500バージョン保持だと、6月時点で最大500バージョンに達しているため、これ以降も継続して500バージョン保持したままです。容量が減ることはありません。その代わり、保持している500バージョン中の任意のバージョンに復元できます。

自動の場合は、6月時点で保持するバージョン数を必要な数に抑えてくれているので103 まで減っています。8月以降、何も編集などされなかった場合も最低17バージョンは保持しているので、容量を抑えつつ、以前のバージョンに戻せる余地を残しています。

ここまでをまとめると次のことが言えます。

 

バージョン制限 メリット デメリット
手動: 保持日数の制限 容量を最大限節約できる 編集しない期間が長くなると、以前のバージョンに戻せなくなる (バックアップが全くない状態)
手動: 保持バージョン数の制限 容量はあまり節約されない 保持しているバージョンからいつでも復元できる (バックアップが機能している)
自動 容量を節約しつつ、バックアップとしても機能する 保持するバージョン数は少なくなる

 

設定単位

テナントレベルでの設定はテナント全体でこれから新規に作成されるドキュメント ライブラリすべてに適用される既定値を指定することになります。

ただし、サイト単位、ライブラリ単位での設定も可能です。ライブラリ単位での個別の設定が最も優先されます。

サイト内に新規にライブラリが作成されるときに、サイトレベルでのバージョン履歴の制御設定があるかどうかが確認され、なければテナントレベルの設定を適用する。あれば、そのサイトの制御を適用するということになります。

なお、サイト単位の設定は PowerShellコマンドを使用する必要があります。

サイトのバージョン履歴の制限を変更する (プレビュー) - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

OneDrive (Business) に関しても基本的にはテナントレベルの設定を引き継ぐことになりますが、ユーザー単位での設定も可能でこれは PowerShellを利用する必要があります。

PowerShell (プレビュー) を使用して OneDrive のバージョン制限を設定する - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

SharePoint ドキュメント ライブラリ

ドキュメントライブラリの設定にある「バージョン管理」では、新たに「バージョンの時間制限」という項目が追加されます。

新規に作成するライブラリでは、既定ではテナントレベルの設定が適用されます。スクリーンショットでは「自動」になっています。この項目からライブラリごとにテナントレベルやサイトレベルとは異なる個別の設定ができるわけです。

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既存のドキュメントライブラリについては、今回のアップデートの影響は受けず設定はそのままで、勝手に設定が変更されることはありません。また、既存のライブラリのバージョン管理設定を “自動” に変更した場合は、その後に作成されるバージョン以降が自動管理の対象となります。

ちなみに、ファイルのバージョン履歴を確認してみると新たに「有効期限」という列が追加されていることがわかります。各バージョンがいつ頃削除されるかがわかるということですね。

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自動でかつマイナーバージョン管理を行う場合は、従来と異なり、保持するマイナーバージョン数は指定できません。これも自動的に管理されることになります。

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この状態でバージョン管理はどうなるのかということですが、試すと一定の規則性は見いだせましたが確実ではありません。ただ、時間が経過すると古いバージョンが間引かれていくことはわかります。

保持されるバージョン

最初のバージョン、最新のメジャーバージョン、現在のバージョンの3種類

有効期限が設定されるバージョン

基本的にマイナーバージョンは30日後に削除されます。ただ、試すと一部、60日保持するものもあるようです。また古いめじーバージョンも基本的には公開後、30日経過すると削除されます。

ちなみに、次のスクリーンショットは1か月以上前のバージョン履歴の状態です。

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次は7月21日現在の状態です。古いバージョンが間引かれているのがわかりますね。

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自動設定によるバージョン履歴の削除のアルゴリズム

自動設定によるバージョン履歴の削除アルゴリズムが公開されています。最大500保持の原則は変わらりませんが、30日以内のバージョンは基本的に制限500個内ではあるが全バージョン保持する方向で、1か月を超えると、徐々に時間単位、日単位、週単位で最初のバージョンという具合に減っていきます。Photo_2

既存バージョンについて

すでに説明した通り、既存のライブラリは新たなバージョン管理の対象とはならず、また既存のライブラリでも設定を個別に変更した場合は変更後に作成されるバージョンからが新規ロジックによる制御対象になります。

Photo_3 実際に既存のライブラリでバージョン履歴がどうなるのかを試した結果が次の図です。

Photo_4

既存バージョンのトリミング

ここまで確認してきたように、既存バージョンは従来通り残ります。ストレージ容量を節約できるよう新たにトリミングするための PowerShell コマンドが利用できるようになっています。これはサイト単位またはライブラリ単位の設定です。

指定できるオプションは次の通りです。

  • 期限切れとする日数を指定します。これにより対象となるバージョンはトリミングジョブをキューに入り非同期にバッチ処理されます。
  • 保持するメジャーバージョン数を指定します。これにより対象となる古いメジャーバージョンはトリミングジョブをキューに入り非同期にバッチ処理されます。
  • 推定自動トリミング アルゴリズムを使用してバージョンを削除するよう指定します。

他にも進行中のトリミングジョブの状態を取得したり、ジョブを中止するコマンドなども用意されています。詳しくは次のリンク先を確認してください。

サイト、ライブラリ、または OneDrive (プレビュー) の既存のバージョンをトリミングする - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

バージョンストレージの使用状況レポートの生成

現状を把握し、バージョン履歴の制御計画を立てるために現在のバージョンストレージの利用状況レポートを生成できます。

レポート生成は PowerShellを使ってサイト単位で出力します。出力結果はあらかじめ指定した SharePoint のドキュメント ライブラリにCSVファイルが生成されます。ジョブは数日間にわたって非同期に実行されるため完了までに小規模なサイトやライブラリの場合は24時間以上、大規模な場合は数日かかります。

レポートは徐々に作成されるため生成されるCSVファイルを覗くことで途中経過を確認できますが、ファイル自体を編集していけません。これを行うとジョブが失敗するとのこと。

詳しくは下記のリンク先を確認してください。

サイトのバージョン ストレージ使用状況レポートを生成する (プレビュー) - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

2024年7月16日 (火)

Microsoft OneDrive for the web に新たにリストやファイルをフィルターするためのファイルの種類が追加されました。

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追加されたのは次のファイルの種類です。

  • OneNote
  • Microsoft Lists
  • ビデオ
  • Loop
  • 写真 ※写真は実際には項目がないので、アナウンス時点での誤記かもしれません。
  • Whitboard
  • Power BI

上のスクリーンショットでは [その他] をクリックしたときにドロップダウンメニューが表示され、ここに新しいファイルの種類があることがわかります。このドロップダウンメニューは、ホーム以外に、共有、お気に入り、ユーザー、会議の各ビューでも利用できます。

ロールアウト時期

  • 対象リリース: 2024年7月上旬~7月中旬
  • 一般提供: 2024年7月中旬~7月下旬
2023年12月14日 (木)

2023年の Microsoft 365 Advent Calendar に参加しています。※2023年12月11日付で公開する予定が体調不良によりずれ込みました。すみません💦。

Microsoft 365 Advent Calendar 2023 - Adventar

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OneDrive の製品の歴史について知らない方も多くなってきているようなので、SharePoint に携わって20年ほどになる経験者としてこれまでの経緯を記憶を掘り起こしながらここにまとめておきたいと思います (あくまでも 2023年12月時点までの話)。

※古い記憶をたどるので誤りがあるかも。誤りがあれば、どうぞご指摘ください🙇‍♀️。

すでにこのブログでも何度も話に出てきていますが、OneDrive には企業組織や教育機関で利用する OneDrive for Buusinss と一般消費者向けの OneDrive とがあります。それぞれ別物です。私個人は一般消費者向けの OneDrive の旧製品に関してはあまり携わってきていないため、ここでは for Business にターゲットを絞って説明していきます。

一般消費者向けの OneDrive の変遷は Wikipedia が詳しいのでどうぞ (英語版の記事が情報が充実している)

OneDrive - Wikipedia

OneDrive (Business)

OneDrive (Business) は組織や教育機関で利用する Microsoft 365 のファイルのストレージサービスです。とはいえ、実体は SharePoint サイトであるため OneDrive 内には Microsoft リストを作成することもできます。

振り返ってみるとオンプレミス時代の SharePoint Server 2007 のころに OneDrive の元となる機能が登場します。これは「個人用サイト」と呼ばれていました。ユーザーひとりずつに割り当てる SharePoint サイトであり、それぞれがサイトの管理者となるので自分の裁量で自由に利用できます。基本的には自分だけのサイトであるため中のコンテンツは他者には公開しませんが、自分で特定のファイルやフォルダーを共有すれば当然、ほかの人も参照できるようにはなります。この考え方は現在の OneDrive (Business) も変わりません。

ところで、個人用サイトは英語では My Site と呼ばれていたので、その名前のほうが馴染みがあるという方もいるかもしれません。

オンプレミス時代はサーバーを自前で構築していたわけですが、SharePoint や OneDrive のデータは SQL Server (データベース サーバー)に格納していましたから、SQL Server も構築していました(むろん、今もオンプレだよという組織もありますが)。大規模組織で全社員が利用するとなると容量のコストが高くなりがちで自分専用とはいえ容量は一人当たり1GB にも満たないケースが多かったのではないかと思います(500MBとかそんな感じ)。現在、Microsoft 365 の OneDrive (Business) は1人当たり最低でも1TBの容量が割り当てられており、管理者の設定によっては5TBまで拡張できるわけですから隔世の感があります。

単なるファイルストレージではなかった個人用サイト

ちなみに、当時の個人用サイトは単なるファイルストレージだけでなく、自分のプロファイルや所属する組織なども公開できるようになっていました。

昔のスクリーンショットを探していたら見つかりました。下の図を見るとわかりますが、左側のナビゲーションに2つのライブラリのリンクがあります。この一つである「個人用ドキュメント」が現在の OneDrive (Business) につながるものです。ただ、それ以外にホーム画面は今とは異なり、少し雑然とした感じがあります。

Photo

個人用サイトにはサブサイトとしてブログサイトを追加することもできるようになっていました。現在はプロファイル情報は Delve 側で管理するようになり(Delve Webは 2024年11月16日に廃止予定で、新たなプロファイル更新の仕組みが2024年後半にでてくるようです)、ブログサイト機能は提供されなくなっています。今だとブログ代わりには Viva Engage のストーリーラインを使うのがよいのではないでしょうか? 

ということで、当初は「個人のファイルストレージ」+「SNS の情報発信の起点」にしていこうという流れが個人用サイトにはあったのです。この流れは SharePoint Server 2010 で強まってきます。個人用サイトには、次のメニューが用意されていました。

  • 個人用ニュースフィード
  • 個人用コンテンツ
  • 個人用プロファイル

Sp2010

個人用ニュースフィード機能は SharePoint Server 2010 の新しい機能として追加されました。Webページになっており、ここには仕事仲間からの最近の活動情報が個人用サイトに流れてくるようになりました。当時すでに Twitter は登場していたようですが、現在のような認知度はまだありません。ですが、そういった短文のSNSが登場しはじめた時代です。類似する機能として個人用サイトに「タグとメモ」という機能が用意されており、短文でほかの人と情報共有する仕組みが用意されました。タグはいわゆるハッシュタグです。なかなかよさそうな機能な気もしますが、実際にはあまり使い勝手の良いものではなく使っているユーザーは多くなかったはずです。さて、このうちの「個人用コンテンツ」がいわゆる現在のOneDriveに通じるものであり、ようするに個人用サイトに既定で用意されているドキュメント ライブラリへのリンクでした。

SharePoint Server 2013 でもこの流れは続きます。個人用サイトにアクセスするとサイトの上部のメニューは次のように変化します。

  • ニュースフィード
  • SkyDrive
  • サイト

Sp2013

Sp2013_2

ニュースフィードは「タグとメモ掲示板」を強化したようなものとなり、今でいうと若干 Facebook に近いUXを持っていて、ほかの人とスレッド形式で会話できるというものでした。

SkyDrive

さて、ここで注目すべきが「SkyDrive」です。正式には SkyeDrive Pro と呼ばれ、「個人用コンテンツ」と呼ばれていたところの名称が変わりました。名前が変わっても実体はドキュメント ライブラリです。個人的なファイルを格納していく場所です。ところで、"Pro" とついているのは個人消費者向けのファイルストレージサービスとして SkyDrive が登場しており、ビジネス向けと個人向けとに分かれていることを示すためビジネス向けは "Pro" として区別できるようになっていたのです。現在のOneDrive と OneDrive (Business) と同じ関係がここで出来上がります。

「ひと目でわかる SharePoint Server 2013」を確認すると、このころのファイルの容量は既定値が最大100MB まで、このころすでに登場していた SharePoint Online は当時の最大値が 7GB だったようです。今となってはずいぶん少ないですね。

ということで、OneDrive につながるややこしさが生まれたのが SharePoint Server 2013 からだったようです。このあと、SkyDrive は商標上の理由などから結果的に名前を変え OneDrive という名前に変わって今に至っています。

マイクロソフト、SkyDriveをOneDriveに変更 SkyDrive ProはOneDrive for Businessに |ビジネス+IT (sbbit.jp)

同期アプリとしての OneDrive の変遷

現在、Windows に標準搭載されているのは OneDrive 同期アプリです。クラウド側の OneDrive に格納されているフォルダーやファイルのうちよく利用すものを手元のPC上に同期して常にクラウドとPC上のファイルが同じ状態になるようにします。

同期対象は OneDrive (Business) ですが、OneDrive は SharePoint がベースであることから、SharePoint のドキュメント ライブラリも OneDrive の同期アプリで同期できるようになっています。

※ただし、現在は SharePoint のドキュメント ライブラリを直接同期するのではなく、OneDrive にライブラリのショートカットを追加して、OneDrive 側で一括して同期するアプローチを進めようとしているようです。下手をすると、2重同期になりかねないですからね。

このファイルの同期機能の元となるのが Microsoft Office Groove 2007 です。Office 2007 製品ファミリーに新しく導入されたアプリであり、もともとは Notes の開発者であるレイオジー氏が立ち上げた組織である Groove Works 社の Groove Workspace という製品を買収したものです。この製品がファイルの同期機能を持っていたのです。当時注目されていた P2P での同期機能であり、Groove クライアント同士で同期します(当時は Winny というのが流行っていた)。ただし、それ以外にもチャット、ホワイトボード、スケジューラ、ディスカッションボードなどのコラボレーション機能もあり多機能でした。特にNotes を使ったことがあるユーザーなら Notes に似たアプローチでカスタマイズなどもできました。残念ながら、手元に昔の資料が残っていなかったため、ZDnetさんの当時の記事のリンクを貼っておきます。

Officeのニューファミリー「Groove」で何ができる? - ZDNET Japan

このアプリは Office 2010 では SharePoint Workspace 2010 に名前を変更してファイルの同期機能に特化したものに変わります。「SharePoint に格納されたコンテンツをオフラインでも使えるようになる」というのがアピールポイントでした。ファイルだけでなく、リストも対象。

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調べてみるとサポート文書に情報が残っているのでこれもリンクを貼っておきます。

SharePoint Workspace 2010 の基本的な作業 - Microsoft サポート

そしてこの次に登場するのが SkyDrive Pro デスクトップアプリです。SkypDrive Pro と同期をする専用のアプリケーションです。またまた、名前が変わっただけでなくファイルの同期に特化するようになったのが特徴的です。さて、先ほど述べた通り SkyDrive という名称はのちに使えなくなり、その後、OneDrive 同期クライアントが登場することになります。ちなみに現在は OneDrive同期アプリと呼ばれています。

SharePoint Workspace から OneDrive 同期クライアントになるまでしばらくの間、同期エンジンは Groove.exe でした。OneDrOneDrive の同期用とSharePoint のドキュメント ライブラリの同期用で Groove.exe と OneDrive.exe のエンジンとが平行していた時期もあったのですが、現在は新しいエンジンである OneDrive.exe に変わりました。

ということで、要するに Windows に標準搭載されている OneDrive は同期アプリであるということを意識してもらえればと思います。本体はあくまでもクラウドのWebサイトである OneDrive(Business) 。Microsoft も OneDrive と話を切り出す時には本体の側を指します。Windows 側のアプリをいうときには Sync アプリなどと必ず表記します。

ちなみに、現在の OneDrive の同期アプリは実はファイルの同期だけではなく、Microsoft リストの同期などにも利用されるようになっています。同期エンジンも日々進化しています。2021年に発表された "Project Nucleus" という同期エンジンの情報なども参考にしてみてください。

Building fast, offline-capable Microsoft 365 web applications

ということで、とりあえず、ざっと OneDrive の歴史をまとめてみました。また思い出したら書き足すかもしれませんがここまで。

SharePoint にまつわる、四方山話でした。