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2024年7月21日 (日)

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SharePoint のドキュメント ライブラリと OneDrive ではバージョン管理の履歴を制限できるようになります。これまで、バージョン履歴がストレージの容量を圧迫してしまうことも少なくありませんでした。そこで、Microsoftは新しいバージョンの制御方法を導入することにしたのです。

ドキュメント ライブラリと OneDrive のバージョン履歴の制限の概要 (プレビュー)

従来からドキュメント ライブラリの所有者はライブラリ単位でのバージョンの制限は設定できていました。既定ではメジャーバージョンを500作成するようになっていますが、これを容量の圧迫を考慮して必要に応じて少なくするといった対応をとってきていたわけです。しかし、今回のアップデートにより、システムが自動的に判断して(インテリジェントに)、バージョンの世代や復元の確立などの要素を考慮して保持するバージョンを決定するように構成できます。ただし、従来通りの手動での管理の余地も残すため、要件に合わせて選択肢の幅が増えることになります。

📅パブリック プレビュー期間

2024年5月上旬からロールアウトを開始し、2024年6月下旬までに完了予定。この期間は既定でオフなので、必要に応じてオプトインする必要があります。

📅GA

2024年8月下旬よりロールアウトを開始し、2024年10月中頃まで完了予定。

事前設定

パブリックプレビュー中はこの機能は既定でオフになっています。オプトインするにはテナントレベルの管理者が SharePoint Online 管理シェルを使って有効化する必要があります。管理シェルのバージョンは 16.0.24810.12000以上が必要です。

利用するコマンドは次の通りです。

Set-SPOTenant -EnableVersionExpirationSetting $true

上記の設定を行うと SharePoint 管理センターの「設定」ページに次のように「バージョン履歴の制限」という管理項目が追加されます。

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設定

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バージョン管理の履歴を制限する設定では SharePoint と OneDrive の双方に対して組織全体としてバージョン管理をどのように行うのかを決定します。

オプションとして自動と手動があります。既定値は “手動” です。

手動

手動では単純に時間の経過をベースに古いものを削除します。

メジャーバージョンの数の既定値はこれまで通り "500" であり、この数を超えると自動的に古いものから削除される仕組みです。

時間は、一定の期間を経過したバージョンを削除するというものですが、既定では"しない" になっています。

メジャーバージョン数は従来のチームサイトの設定と同様に最低100、最大50,000を指定できます。

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時間は、既定値は “しない” ですが、これ以外に次の選択肢があります。

  • 3か月
  • 6か月
  • 1年
  • ユーザー指定

このUIからは30日未満の値は指定できません。公開されているAPI経由では30未満にすることはできますが、ユーザーによる不注意からデータが損失してしまう可能性が高くなるためMicrosoftはこうした設定は推奨していません。

自動

自動設定が推奨値です。自動オプションに関しては、特に指定する項目はありません。こちらは単に時間の経過だけを考慮するのではなく、アクティビティを考慮するというのがポイントです。

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この設定では、最近作成したほとんどのバージョンにアクセスできますが、古いバージョンで保持されるバージョンが少なくなります。

利用する確率の高そうなバージョンのみを残し、使わないであろう古いバージョンは適宜、間引いていくアプローチです。このようにしてストレージ使用量を最適化します。Photo

Microsoft の資料(Plan version storage for document libraries(Preview) - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn)を見ると次のような例が挙げられています。3つのオプションでの比較です。

  • 手動: 60日経過すると削除
  • 手動: 500バージョン以上は古いものから削除
  • 自動


3か月間、バージョンが追加された後の経過がどうなるのかを示しています。Automaticsettingversionstorage60日経過すると削除するパターンでは、3か月以上経過すると保持されるバージョンが0になり容量は最も節約できますが、反面、以前のバージョンに復元することはできなくなります。

従来の500バージョン保持だと、6月時点で最大500バージョンに達しているため、これ以降も継続して500バージョン保持したままです。容量が減ることはありません。その代わり、保持している500バージョン中の任意のバージョンに復元できます。

自動の場合は、6月時点で保持するバージョン数を必要な数に抑えてくれているので103 まで減っています。8月以降、何も編集などされなかった場合も最低17バージョンは保持しているので、容量を抑えつつ、以前のバージョンに戻せる余地を残しています。

ここまでをまとめると次のことが言えます。

 

バージョン制限 メリット デメリット
手動: 保持日数の制限 容量を最大限節約できる 編集しない期間が長くなると、以前のバージョンに戻せなくなる (バックアップが全くない状態)
手動: 保持バージョン数の制限 容量はあまり節約されない 保持しているバージョンからいつでも復元できる (バックアップが機能している)
自動 容量を節約しつつ、バックアップとしても機能する 保持するバージョン数は少なくなる

 

設定単位

テナントレベルでの設定はテナント全体でこれから新規に作成されるドキュメント ライブラリすべてに適用される既定値を指定することになります。

ただし、サイト単位、ライブラリ単位での設定も可能です。ライブラリ単位での個別の設定が最も優先されます。

サイト内に新規にライブラリが作成されるときに、サイトレベルでのバージョン履歴の制御設定があるかどうかが確認され、なければテナントレベルの設定を適用する。あれば、そのサイトの制御を適用するということになります。

なお、サイト単位の設定は PowerShellコマンドを使用する必要があります。

サイトのバージョン履歴の制限を変更する (プレビュー) - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

OneDrive (Business) に関しても基本的にはテナントレベルの設定を引き継ぐことになりますが、ユーザー単位での設定も可能でこれは PowerShellを利用する必要があります。

PowerShell (プレビュー) を使用して OneDrive のバージョン制限を設定する - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

SharePoint ドキュメント ライブラリ

ドキュメントライブラリの設定にある「バージョン管理」では、新たに「バージョンの時間制限」という項目が追加されます。

新規に作成するライブラリでは、既定ではテナントレベルの設定が適用されます。スクリーンショットでは「自動」になっています。この項目からライブラリごとにテナントレベルやサイトレベルとは異なる個別の設定ができるわけです。

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既存のドキュメントライブラリについては、今回のアップデートの影響は受けず設定はそのままで、勝手に設定が変更されることはありません。また、既存のライブラリのバージョン管理設定を “自動” に変更した場合は、その後に作成されるバージョン以降が自動管理の対象となります。

ちなみに、ファイルのバージョン履歴を確認してみると新たに「有効期限」という列が追加されていることがわかります。各バージョンがいつ頃削除されるかがわかるということですね。

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自動でかつマイナーバージョン管理を行う場合は、従来と異なり、保持するマイナーバージョン数は指定できません。これも自動的に管理されることになります。

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この状態でバージョン管理はどうなるのかということですが、試すと一定の規則性は見いだせましたが確実ではありません。ただ、時間が経過すると古いバージョンが間引かれていくことはわかります。

保持されるバージョン

最初のバージョン、最新のメジャーバージョン、現在のバージョンの3種類

有効期限が設定されるバージョン

基本的にマイナーバージョンは30日後に削除されます。ただ、試すと一部、60日保持するものもあるようです。また古いめじーバージョンも基本的には公開後、30日経過すると削除されます。

ちなみに、次のスクリーンショットは1か月以上前のバージョン履歴の状態です。

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次は7月21日現在の状態です。古いバージョンが間引かれているのがわかりますね。

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自動設定によるバージョン履歴の削除のアルゴリズム

自動設定によるバージョン履歴の削除アルゴリズムが公開されています。最大500保持の原則は変わらりませんが、30日以内のバージョンは基本的に制限500個内ではあるが全バージョン保持する方向で、1か月を超えると、徐々に時間単位、日単位、週単位で最初のバージョンという具合に減っていきます。Photo_2

既存バージョンについて

すでに説明した通り、既存のライブラリは新たなバージョン管理の対象とはならず、また既存のライブラリでも設定を個別に変更した場合は変更後に作成されるバージョンからが新規ロジックによる制御対象になります。

Photo_3 実際に既存のライブラリでバージョン履歴がどうなるのかを試した結果が次の図です。

Photo_4

既存バージョンのトリミング

ここまで確認してきたように、既存バージョンは従来通り残ります。ストレージ容量を節約できるよう新たにトリミングするための PowerShell コマンドが利用できるようになっています。これはサイト単位またはライブラリ単位の設定です。

指定できるオプションは次の通りです。

  • 期限切れとする日数を指定します。これにより対象となるバージョンはトリミングジョブをキューに入り非同期にバッチ処理されます。
  • 保持するメジャーバージョン数を指定します。これにより対象となる古いメジャーバージョンはトリミングジョブをキューに入り非同期にバッチ処理されます。
  • 推定自動トリミング アルゴリズムを使用してバージョンを削除するよう指定します。

他にも進行中のトリミングジョブの状態を取得したり、ジョブを中止するコマンドなども用意されています。詳しくは次のリンク先を確認してください。

サイト、ライブラリ、または OneDrive (プレビュー) の既存のバージョンをトリミングする - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

バージョンストレージの使用状況レポートの生成

現状を把握し、バージョン履歴の制御計画を立てるために現在のバージョンストレージの利用状況レポートを生成できます。

レポート生成は PowerShellを使ってサイト単位で出力します。出力結果はあらかじめ指定した SharePoint のドキュメント ライブラリにCSVファイルが生成されます。ジョブは数日間にわたって非同期に実行されるため完了までに小規模なサイトやライブラリの場合は24時間以上、大規模な場合は数日かかります。

レポートは徐々に作成されるため生成されるCSVファイルを覗くことで途中経過を確認できますが、ファイル自体を編集していけません。これを行うとジョブが失敗するとのこと。

詳しくは下記のリンク先を確認してください。

サイトのバージョン ストレージ使用状況レポートを生成する (プレビュー) - SharePoint in Microsoft 365 | Microsoft Learn

2024年7月16日 (火)

Microsoft OneDrive for the web に新たにリストやファイルをフィルターするためのファイルの種類が追加されました。

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追加されたのは次のファイルの種類です。

  • OneNote
  • Microsoft Lists
  • ビデオ
  • Loop
  • 写真 ※写真は実際には項目がないので、アナウンス時点での誤記かもしれません。
  • Whitboard
  • Power BI

上のスクリーンショットでは [その他] をクリックしたときにドロップダウンメニューが表示され、ここに新しいファイルの種類があることがわかります。このドロップダウンメニューは、ホーム以外に、共有、お気に入り、ユーザー、会議の各ビューでも利用できます。

ロールアウト時期

  • 対象リリース: 2024年7月上旬~7月中旬
  • 一般提供: 2024年7月中旬~7月下旬
2023年12月14日 (木)

2023年の Microsoft 365 Advent Calendar に参加しています。※2023年12月11日付で公開する予定が体調不良によりずれ込みました。すみません💦。

Microsoft 365 Advent Calendar 2023 - Adventar

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OneDrive の製品の歴史について知らない方も多くなってきているようなので、SharePoint に携わって20年ほどになる経験者としてこれまでの経緯を記憶を掘り起こしながらここにまとめておきたいと思います (あくまでも 2023年12月時点までの話)。

※古い記憶をたどるので誤りがあるかも。誤りがあれば、どうぞご指摘ください🙇‍♀️。

すでにこのブログでも何度も話に出てきていますが、OneDrive には企業組織や教育機関で利用する OneDrive for Buusinss と一般消費者向けの OneDrive とがあります。それぞれ別物です。私個人は一般消費者向けの OneDrive の旧製品に関してはあまり携わってきていないため、ここでは for Business にターゲットを絞って説明していきます。

一般消費者向けの OneDrive の変遷は Wikipedia が詳しいのでどうぞ (英語版の記事が情報が充実している)

OneDrive - Wikipedia

OneDrive (Business)

OneDrive (Business) は組織や教育機関で利用する Microsoft 365 のファイルのストレージサービスです。とはいえ、実体は SharePoint サイトであるため OneDrive 内には Microsoft リストを作成することもできます。

振り返ってみるとオンプレミス時代の SharePoint Server 2007 のころに OneDrive の元となる機能が登場します。これは「個人用サイト」と呼ばれていました。ユーザーひとりずつに割り当てる SharePoint サイトであり、それぞれがサイトの管理者となるので自分の裁量で自由に利用できます。基本的には自分だけのサイトであるため中のコンテンツは他者には公開しませんが、自分で特定のファイルやフォルダーを共有すれば当然、ほかの人も参照できるようにはなります。この考え方は現在の OneDrive (Business) も変わりません。

ところで、個人用サイトは英語では My Site と呼ばれていたので、その名前のほうが馴染みがあるという方もいるかもしれません。

オンプレミス時代はサーバーを自前で構築していたわけですが、SharePoint や OneDrive のデータは SQL Server (データベース サーバー)に格納していましたから、SQL Server も構築していました(むろん、今もオンプレだよという組織もありますが)。大規模組織で全社員が利用するとなると容量のコストが高くなりがちで自分専用とはいえ容量は一人当たり1GB にも満たないケースが多かったのではないかと思います(500MBとかそんな感じ)。現在、Microsoft 365 の OneDrive (Business) は1人当たり最低でも1TBの容量が割り当てられており、管理者の設定によっては5TBまで拡張できるわけですから隔世の感があります。

単なるファイルストレージではなかった個人用サイト

ちなみに、当時の個人用サイトは単なるファイルストレージだけでなく、自分のプロファイルや所属する組織なども公開できるようになっていました。

昔のスクリーンショットを探していたら見つかりました。下の図を見るとわかりますが、左側のナビゲーションに2つのライブラリのリンクがあります。この一つである「個人用ドキュメント」が現在の OneDrive (Business) につながるものです。ただ、それ以外にホーム画面は今とは異なり、少し雑然とした感じがあります。

Photo

個人用サイトにはサブサイトとしてブログサイトを追加することもできるようになっていました。現在はプロファイル情報は Delve 側で管理するようになり(Delve Webは 2024年11月16日に廃止予定で、新たなプロファイル更新の仕組みが2024年後半にでてくるようです)、ブログサイト機能は提供されなくなっています。今だとブログ代わりには Viva Engage のストーリーラインを使うのがよいのではないでしょうか? 

ということで、当初は「個人のファイルストレージ」+「SNS の情報発信の起点」にしていこうという流れが個人用サイトにはあったのです。この流れは SharePoint Server 2010 で強まってきます。個人用サイトには、次のメニューが用意されていました。

  • 個人用ニュースフィード
  • 個人用コンテンツ
  • 個人用プロファイル

Sp2010

個人用ニュースフィード機能は SharePoint Server 2010 の新しい機能として追加されました。Webページになっており、ここには仕事仲間からの最近の活動情報が個人用サイトに流れてくるようになりました。当時すでに Twitter は登場していたようですが、現在のような認知度はまだありません。ですが、そういった短文のSNSが登場しはじめた時代です。類似する機能として個人用サイトに「タグとメモ」という機能が用意されており、短文でほかの人と情報共有する仕組みが用意されました。タグはいわゆるハッシュタグです。なかなかよさそうな機能な気もしますが、実際にはあまり使い勝手の良いものではなく使っているユーザーは多くなかったはずです。さて、このうちの「個人用コンテンツ」がいわゆる現在のOneDriveに通じるものであり、ようするに個人用サイトに既定で用意されているドキュメント ライブラリへのリンクでした。

SharePoint Server 2013 でもこの流れは続きます。個人用サイトにアクセスするとサイトの上部のメニューは次のように変化します。

  • ニュースフィード
  • SkyDrive
  • サイト

Sp2013

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ニュースフィードは「タグとメモ掲示板」を強化したようなものとなり、今でいうと若干 Facebook に近いUXを持っていて、ほかの人とスレッド形式で会話できるというものでした。

SkyDrive

さて、ここで注目すべきが「SkyDrive」です。正式には SkyeDrive Pro と呼ばれ、「個人用コンテンツ」と呼ばれていたところの名称が変わりました。名前が変わっても実体はドキュメント ライブラリです。個人的なファイルを格納していく場所です。ところで、"Pro" とついているのは個人消費者向けのファイルストレージサービスとして SkyDrive が登場しており、ビジネス向けと個人向けとに分かれていることを示すためビジネス向けは "Pro" として区別できるようになっていたのです。現在のOneDrive と OneDrive (Business) と同じ関係がここで出来上がります。

「ひと目でわかる SharePoint Server 2013」を確認すると、このころのファイルの容量は既定値が最大100MB まで、このころすでに登場していた SharePoint Online は当時の最大値が 7GB だったようです。今となってはずいぶん少ないですね。

ということで、OneDrive につながるややこしさが生まれたのが SharePoint Server 2013 からだったようです。このあと、SkyDrive は商標上の理由などから結果的に名前を変え OneDrive という名前に変わって今に至っています。

マイクロソフト、SkyDriveをOneDriveに変更 SkyDrive ProはOneDrive for Businessに |ビジネス+IT (sbbit.jp)

同期アプリとしての OneDrive の変遷

現在、Windows に標準搭載されているのは OneDrive 同期アプリです。クラウド側の OneDrive に格納されているフォルダーやファイルのうちよく利用すものを手元のPC上に同期して常にクラウドとPC上のファイルが同じ状態になるようにします。

同期対象は OneDrive (Business) ですが、OneDrive は SharePoint がベースであることから、SharePoint のドキュメント ライブラリも OneDrive の同期アプリで同期できるようになっています。

※ただし、現在は SharePoint のドキュメント ライブラリを直接同期するのではなく、OneDrive にライブラリのショートカットを追加して、OneDrive 側で一括して同期するアプローチを進めようとしているようです。下手をすると、2重同期になりかねないですからね。

このファイルの同期機能の元となるのが Microsoft Office Groove 2007 です。Office 2007 製品ファミリーに新しく導入されたアプリであり、もともとは Notes の開発者であるレイオジー氏が立ち上げた組織である Groove Works 社の Groove Workspace という製品を買収したものです。この製品がファイルの同期機能を持っていたのです。当時注目されていた P2P での同期機能であり、Groove クライアント同士で同期します(当時は Winny というのが流行っていた)。ただし、それ以外にもチャット、ホワイトボード、スケジューラ、ディスカッションボードなどのコラボレーション機能もあり多機能でした。特にNotes を使ったことがあるユーザーなら Notes に似たアプローチでカスタマイズなどもできました。残念ながら、手元に昔の資料が残っていなかったため、ZDnetさんの当時の記事のリンクを貼っておきます。

Officeのニューファミリー「Groove」で何ができる? - ZDNET Japan

このアプリは Office 2010 では SharePoint Workspace 2010 に名前を変更してファイルの同期機能に特化したものに変わります。「SharePoint に格納されたコンテンツをオフラインでも使えるようになる」というのがアピールポイントでした。ファイルだけでなく、リストも対象。

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調べてみるとサポート文書に情報が残っているのでこれもリンクを貼っておきます。

SharePoint Workspace 2010 の基本的な作業 - Microsoft サポート

そしてこの次に登場するのが SkyDrive Pro デスクトップアプリです。SkypDrive Pro と同期をする専用のアプリケーションです。またまた、名前が変わっただけでなくファイルの同期に特化するようになったのが特徴的です。さて、先ほど述べた通り SkyDrive という名称はのちに使えなくなり、その後、OneDrive 同期クライアントが登場することになります。ちなみに現在は OneDrive同期アプリと呼ばれています。

SharePoint Workspace から OneDrive 同期クライアントになるまでしばらくの間、同期エンジンは Groove.exe でした。OneDrOneDrive の同期用とSharePoint のドキュメント ライブラリの同期用で Groove.exe と OneDrive.exe のエンジンとが平行していた時期もあったのですが、現在は新しいエンジンである OneDrive.exe に変わりました。

ということで、要するに Windows に標準搭載されている OneDrive は同期アプリであるということを意識してもらえればと思います。本体はあくまでもクラウドのWebサイトである OneDrive(Business) 。Microsoft も OneDrive と話を切り出す時には本体の側を指します。Windows 側のアプリをいうときには Sync アプリなどと必ず表記します。

ちなみに、現在の OneDrive の同期アプリは実はファイルの同期だけではなく、Microsoft リストの同期などにも利用されるようになっています。同期エンジンも日々進化しています。2021年に発表された "Project Nucleus" という同期エンジンの情報なども参考にしてみてください。

Building fast, offline-capable Microsoft 365 web applications

ということで、とりあえず、ざっと OneDrive の歴史をまとめてみました。また思い出したら書き足すかもしれませんがここまで。

SharePoint にまつわる、四方山話でした。

2023年10月 5日 (木)

OneDrive の同期機能も改善や強化されるようです。詳しくは下記の記事に書かれています。

🔗 New OneDrive Sync Enhancements - Microsoft Community Hub

この内容の対象はあくまでも OneDrive (Business) 向けです。

上記の記事を読めばいいわけですが、ここでは自分自身の備忘録を兼ねて要約したり、手元で確認した内容を追記していきます。

ということで、ここから機能を確認していこうと思いますが、実は上記の記事はコメント欄が結構大事で、いろいろな方がフィードバックしています。「私も、そう思ったんだよね」と思うところが書かれていたり。そんな点も参考になると思います。

ではピックアップしましょう。

不用意な削除を防ぐ

PCと同期しているファイルを削除すると、大元のファイルの削除となり全ユーザーに影響します。そこで、削除しようとするときに「みんなからも削除されるけどいいの?」という趣旨の警告が出るようなるそうです。現在ロールアウト中。

共有されたコンテンツのショートカットの削除

OneDrive に追加した SharePoint のコンテンツのショートカットは、削除すると大元のファイルも一緒に削除されてしまっていました。が、今回のアップデートでショートカットだけを削除し、大元のファイルは温存されるようになります。ただし、従来通り、ショートカットの削除と同時に大元のファイルも削除したいという場合はファイルのコンテキストメニュー(右クリックすると出てくるメニュー)からそれを選べるそうです。

ファイルエクスプローラーの強化

ファイルエクスプローラーのホームが OneDrive の Web版と似たようなホーム画面になります。推奨されたコンテンツ、お気に入り、最近使ったファイルなど表示される。ファイルを選択する右側のウィンドウにサムネイル、共有の状況、最近のアクティビティ、関連ファイルなどが表示されるようになります。ということですが、手元の環境だと Windows 11 (22H2) ですが、すでにそうなっていますね。

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同期設定のアップデート

同期の設定メニューがよりわかりやすくなりました。よく使う設定が最初に表示され、その他は「詳細設定」に移動しています。

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さらに、近く、同期から除外したいファイルの種類(ファイル、フォルダーまたは拡張子)をより細かく制御できるようになるようです。

アプリで開く

Word, Excel, PowerPoint のファイルは選択して、...>[開く]>[アプリで開く]メニューが用意されており、デスクトップアプリで直接開いて編集できます。これがOfficeドキュメント以外にも拡大されて PDF や CADファイル(JPEG, MP4 など)でも利用できるようになるそうです。2023年12月までに利用できるようになるようです。OneDrive だけでなく、SharePointおよびTeamsでも。

デスクトップアプリで開いて編集後は上書き保存すれば、Web版のOneDriveの側に同期されます。

コメントの抜粋

この記事のコメント欄から、いくつか意訳して抜粋しておきます(だいたいあっていると思いますけど、ニュアンスが違うかもしれないので、きちんと元の文書は読んでくださいね)。

  • SharePointのコンテンツを同期するとき最大パスの長さを越えているファイルを同期することで OneDrive が壊れてしまう。リンクの削除もできなくなってしまう。
  • SharePointからカスタムのメタデータもファイル エクスプローラーに同期できたらいいのに
  • 同期できないときにははっきりと示してほしい。
  • Mac クライアントにはこの強化機能は追加されるの? 
  • 不用意な削除を防ぐ機能が追加されるとのことだが、ダイアログを表示しても防げないのでは? そもそも全ユーザーに対してファイルが削除されることをユーザーは理解していないと思う。もっと具体的な対策を去らないとダメだろう。たとえば、ファイルエクスプローラーから一度に削除できるファイルの数を50に制限するとか。空のフォルダーのみを削除できるとか。ユーザーにとってはクリーンナップできないので不満は出るだろうけれど、偶発的に削除される方がより大きい混乱を招いている。

以上です。

2023年10月 4日 (水)

2023年10月3日(米国時間)付で OneDrive 3.0 の発表がありました。詳しくは下記のページとページ内のビデオを参照してください。

Unveiling the Next Generation of OneDrive - Microsoft Community Hub

ただ上記ではすでに利用できている新機能も改めて紹介されていることもあり、このブログでは、私が個人的に興味をもったポイントのみをかいつまんでおこうと思います。簡単な要約なら Bing Chat や ChatGPTでもできますしね。

ちなみに、OneDrive には無料で利用できる個人用(office.com)と組織向けの有償で利用する OneDrive for Business とがありますが、OneDrive for Business が中心です。あと、Windows エクスプローラからアクセスできる OneDrive はあくまでも Windows に搭載されているOneDrive同期アプリが同期したファイルやライブラリであり、実態はWeb上の OneDrive です。基本には公式の資料等で OneDrive と言えば本体 (Web版) のことです。

OneDrive の変遷

OneDrive は今、3世代目へと突入していっています。これまでの世代で掲げてきた目標は以下の通り。

  • OneDrive 1.0 - どこからでもどのデバイスからでもファイルを保存しアクセスできる
  • OneDrive 2.0 - 同期、共有とシームレスでセキュアなコラボレーション

そして、時代は OneDrive 3.0 へ。

3世代目に移行するにあたり、上記のJeff Teper 氏の話では現状を取り巻く環境について説明されています。現在、 OneDrive には、日々 20億近くのファイルが追加されているそうです。

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 Microsoft 365 のファイル管理の中核(プラットフォーム) は引き続き SharePoint です。セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス、コラボレーションの基盤です。この点は変わらないので、しっかり把握しておいてください。

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そしていよいよい OneDrive は3.0 世代へと突入していきます。

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ここまでのJeff Teper 氏の話から私なりのまとめと考察を加えてみましょう。

現在、私たちを取り巻く環境ではローカルPCだメールだ、Teams だとあちこちにファイルが散らばっています。しかもファイルの量は、数年前と比較しても格段に、しかも膨大に増えていっている。そんな中、IT担当者はセキュリティやコンプライアンスを確保していかなければいけない現状があります。こうした困難を解決していくには、ユーザーにとっては自分が必要な情報を1か所から素早くアクセスできるような仕組みが必要で、そこの部分を OneDrive に担わせるということでしょう。AIの力も借りながら。

SharePoint はあくまでも共有のファイル置き場であり、どうしても最大公約数的な見せ方になります。必ずしも自分が欲しいファイルが決まった場所にあるとは限らない。欲しいファイルは人ごとに異なる。となれば、OneDrive 側でユーザーごとの切り口でファイルのリンクを集める方が理にかなっている。そういうことでしょう。

余談ですが、従来のファイルの形式でなく、Notion や Microsoft Loop のような形式で情報を整理したいという声もあるようです。ですが、Microsoft 365 の Loop に関しては、結局、作成されるのは .loop という拡張子のファイルであるため、Word, Excel, PowerPoint などのファイル群と結果的には変わりません。そうすることで、既存のセキュリティやコンプライアンスの仕組みも流用できる利点があります。

そして今回の発表の目玉はやはり "Copilot in OneDrive" でしょう!

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ここからは、上記のビデオから個人的に面白いと思った機能を私の所感とともに取り上げてみます。

お気に入り機能の進化

OneDrive ではファイルやフォルダーにお気に入りを設定できるようになっています。Webブラウザーのブックマークのような機能ですね(ちなみに、SharePoint ページの「後で見る」をクリックしたページもここに入ります。Web版の OneDrive の話ですが)。この「お気に入り」が OneDrive だけでなく、モバイル版の OneDrive, Teams, Windows エクスプローラーとも同期されるようになります。それこそどこからでも自分が必要なファイルにアクセスしやすくなります。

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SharePoint サイトのコンテンツのショートカットを手軽に追加できる 

SharePoint サイトのライブラリにあるファイルのお気に入り(星アイコン)をクリックすると、お気に入りに追加されますが、それだけでなく、ショートカットを OneDrive の任意のフォルダーに追加できるようになります。ひとが作成したフォルダー構成は必ずしも自分にとって使いやすいとは限りません。OneDrive には好きなようにフォルダー構成を作り、そこにショートカットをためていくことで自分オリジナルの階層も作成できるわけです。

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メディアビューの追加!

あちこちから要望が上がっていたようですね。写真やビデオだけを表示する「メディア」ビューが追加されるそうです!! 個人的にもこれは欲しかった。

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OneDrive の新規追加メニューからテンプレートを選択できる

OneDriveの新規追加メニューをクリックすることで、各アプリのテンプレートをプレビューしながら適切なものを選んで新たなファイルを作り始めることができるようになります。個人的にはこれは良いなぁと思っているんですが、日本の組織の場合は、誰かが作成したファイルをコピーしてアレンジしていくことが多いようで一からファイルを作ることが意外と少ないようです。ならば、独自のテンプレートを作って追加できればいいとも思いますが、それはそれでテンプレートのメンテナンスを誰がやるのかとういう問題がでたり。それでも新規にファイルを作ることの多い人は重宝するのではないかと思います(日本語フォントに適したテンプレートがもっと増えるといいんですけどね)。

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オフライン編集 (Files On-Demand for Web)

OneDrive に同期しているライブラリやフォルダーであることが前提ですが、これから出かけるよというような場合に、ファイル単位で一時的にオフラインで編集したいと思うことはあったのですがこれができるようになります! Web版の OneDrive 上から Windows エクスプローラーに移動することなく、直接オフラインで利用できるのが利点。 

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パフォーマンスの改善

OneDrive の起動速度、スクロール速度、並び替え速度などが2倍以上速くなります。写真などファイルの数が多くなるとスクロールが重いなぁと思ことはよくあったので、これも嬉しい機能ですね。

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Windows エクスプローラーでも OneDrive Home が!

Windows エクスプローラーの Home ではOneDriveと同様に AI がユーザーごとにお勧めしてくれるファイル群が上部に表示されるようになり、お気に入りや最近使ったファイルなどが表示されるようになります。ファイルを選択すると右側にプレビュー、アクティビティ関連するファイルが表示されます。ちなみに、手元のWindows 11 (22H2) で確認したら、ほぼこうなっていますね。20231004_113326

 管理面

これは、Microsoft Syntex Advanced Managment のライセンスを持っておきましょうという話につきますね。

  • SharePoint 管理センターで「コラボレーションインサイト」レポートを確認できる (コラポレーションの状況を俯瞰できる)。またユーザーごとにどのくらいの数のファイルを外部などに共有しているかわかる
  • 特定のユーザーの OneDrive へのアクセスに MFA を必須とするなどの「詳細な条件付きアクセスポリシー」を適用できる
  • OneDrive でも「制限付きアクセス」を適用することで、コンテンツの過剰共有を低減する

など。

写真の検索

これは個人向けの OneDrive の話になりますが、写真を検索できるようになります。セマンティクインデックスを作成するようになっており、自然言語で検索できます。つまり、文脈で画像を探しに行ってくれる。タグ付けなど特にしなくても。まずはプレビューだそうですが、今日から使えるとのこと。写真が趣味で、膨大な量の写真を個人の OneDrive に格納しているんですが、探すのに一苦労だったのでこれは助かります。あとで、日本語でどの程度、検索できるのかを試してみないと。

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Copilot in OneDrive

ようやく目玉の機能、Copilot ですね。検索ボックスに自然言語で欲しいファイルを説明すれば、合致するものを見つけてきてくれます。

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選択したファイルを要約してくれと言えば、要約してくれます(ここは想定内)。

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凄いのは、ユーザーの意図をくみ取ってくれるということ。たとえば、ファイルをフォルダーにまとめるよう依頼する。

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すると関連するファイルも探してきてくれてフォルダーに追加しないかと提案してくれる。提案されるファイル群は 自身の OneDrive 内だけでなく、SharePoint などからも。これらのファイルはショートカットを追加することになる。こういうのは、AI ならではですね。

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しかも、フォルダーを共有するときにも Copilot がそばで支援してくれる!

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さらには、見逃したかもしれない OneDrive 内の更新情報をピックアップしてくれる。これで終わりではなく、次のステップをそれぞれ提案してくれているのが凄い。PowerPoint なんか、「内容をみて、返事を作成する」んですからね。。。

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この Copilot in OneDrive ですが、利用するには Microsoft 365 Copilot のライセンスが必要であり、12月までに利用できるようになるそうです! 

と、ここまでがビデオの内容をもとにした話です。

最初に紹介したリンク先では、さらに多くの情報が公開されています。

たとえば、Teams や Outlook に OneDrive アプリが追加されます。Teams はファイルアプリが 新しいOneDrive アブリになっています。こちらは新しい Teams アプリではすでに利用できる。Outlook への追加はこれからのようですね。

ファイル管理の在り方が、少しずつ変わってきている過渡期ですが、個人的には従来から抱えている各種の課題を超えるべく、新たなファイル管理のありようを追求して行きたいと思っています。