2016年6月

2016年6月24日 (金)

検証環境で SharePoint Server を利用していると、同一サーバーに Office クライアントもインストールして動作検証を行いたくなることがあります。弊社の SharePoint 研修で利用しているマシンは、SharePoint サーバー内の構成情報などを確認することがあるため、SharePoint サーバー上で様々な機能検証を行えるように SharePoint サーバー+ Office クライアントで構成しています。ちなみに、この構成は運用環境などでは当然推奨はされません。

ですが、これも SharePoint 2013 と Office 2013 までの話。SharePoint 2016 からは、MSDN版を利用する限り、そうはいかなくなる可能性があります。MSDN版のOffice 2016 はクイック実行インストール (C2R) のみが提供されています。しかし、SharePoint は Windowsインストーラー形式です。クイック実行形式とWindowsインストーラー形式では形式が異なるため、あとから Office をインストールしようとすると下図のようにエラーとなりインストールできません。

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クイック実行形式とWindowsインストーラー形式の違いについては、山市良さんが書かれている@ITの記事が非常にわかりやすくお勧めです。

管理者が知っておくべきOffice 2016のインストールと更新の変更点 (1/3)

以上のことから、MSDN版を使っているのであれば、SharePoint 2016 とOffice 2016との組み合わせを検証するには別途WindowsクライアントOSを用意するのが無難です。

 

 

2016年6月21日 (火)

昨日、研修用のデモマシンで突然 SharePoint サイトにアクセス出来なくなるトラブルに遭遇したため、備忘録として、その経緯を記載しておきます。トラブルシューティング方法の流れを確認するには参考になるのではないかと思います。

※とはいえ、これは滅多にないと思いますが。ちょうど先週はサーバー内部のファイル構造などを説明する研修を行っていたので(SharePoint Server 2013 周辺技術の基礎コース) このときデモしながら、なんか、やってしまったかも。

現象と調査過程

サーバー全体管理サイトをはじめ、すべてのSharePointサイトにアクセスできなくなる。しかも、アクセスすると 404 エラーで、サーバーにはアクセスできたが、指定したファイルがないという。

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そこで、何が起きたのか確認しようとまずイベントログを見るが特に問題は上がっていない。そこで、早速問題の切り分けを試みた。

  • ネットワーク設定は正常か
  • IISは正常に稼働しているか
  • SharePoint の DB 側は正常に稼働しているか

ネットワーク設定に問題がない。IISについては、新規に単純なIISサイトを作ってアクセス出来るか確認すると問題がない。アプリケーション プールも正常稼働している。アプリケーション プール IDも変更はない。ということは、SharePoint Web アプリケーションが使っている仮想ディレクトリにはアクセスできるということか? たとえば、<サイトURL>/_layouts/15/Images/spcommon.png などを試すと、アクセスできる。ということはサイトの設定ページにはアクセスできるということ。 <サイトURL>/_layouts/15/settings.aspx などはOK。

では、念のためDB側はどうか。アプリケーション プールIDに対して各SharePoint DBが持つべき権限を確認する。他ファームの正常なサーバーと設定比較しても、これも問題ない。次に、PowerShell から、サイトコレクションやサイトのオブジェクトを取得してみる。これも問題ない。サイトの設定変更など試みる。これも問題なくできる。ということは、SharePoint サーバーのIIS 経由でのアクセスがだめなだけで、SharePoint の本体であるDB側は問題ないよう。念のため、手持ちのSharePoint Server Side Object Model を使って作っているアプリで、サイト内のアイテムなども取得出来るか確認するがこれも問題ない。

イベントビューアにもSharePointに関するクリティカルなエラーは出ていないため、となると、やはり IIS 側が怪しい。IISに関わるローカルグループの設定も確認する。ローカルの IIS_IUSRSグループメンバー、WSS_WPGグループメンバーなど設定は既定のままだ。そこで再び、サイトの設定ページにアクセスする。サイトの権限設定ページをクリックすると、エラーとなった。

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ここで関連付けIDを得られたので、当該する日付のSharePoint の URL ログを確認してみる。先ほど得た 関連付けID を元に一致する Correlation ID を持つログを確認する。どうやら seattle.master を探しに行って見つからなかったといっているようだ(ついでに、SharePoint 2013 だけでなく、過去のサーバーエディションのフォルダーも想定して探しに行っていることがわかって驚いた。15は SharePoint 2013 だが、14は SharePoint 2010 、12は SharePoint 2007, 60は SharePoint Portal Server 2003用のディレクトリ) 。

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このファイルが存在しているか、確認してみたほうがよさそうだ。ということで、 SharePoint ルートディレクトリをたどっていくと、Global フォルダーごとごっそりなくなっていた。これが原因か? ゴースト化されたマスターページが参照出来なかったので、404 エラーとなっていたといこうとでつじつまも合う。

解決

他の正常稼働しているSharePoint ファームのサーバーから Global フォルダーをコピーし、デモ用マシンに再配置。これで、問題なく、どのサイトにもアクセスできるようになった。

ちなみに、今回のトラブルシューティングに関わるような内容を学べるのが、弊社オリジナルの "Microsoft SharePoint Server 2013 と周辺技術の基礎" コースです(ついでに宣伝です)。

2016年6月 9日 (木)

Microsoft Planner が2016年6月6日に正式に利用可能になりました(プレビューでは、Office 365 Planner と呼ばれていました)。これは、タスク管理をビジュアル管理するツールです。これから数週間の間に、Office 365 ユーザーに対して順次この機能が展開されていきます。

PlannerOV

Microsoft Planner についてご存じない方も多いと思いますので、本記事では概要を説明します。

公式情報 : Microsoft Planner ready for showtime

Microsoft Planner が登場するまでの経緯

従来の SharePoint Server や SharePoint Online ではタスク管理は簡易的にタスク リストで行います。使い勝手は Microsoft Project の簡易版的なものです(事実、Microsoft Project と同期でき、プロジェクト管理者は Microsoft Projectで、メンバーへのタスク公開はSharePoint 上でというように使い分けられます)。ただ、これは複数のサイトに散らばって作成されてしまうため、集約表示および管理できる機能が望まれていました。そこで SharePoint Server 2013 ではタスクの集約ができる機能として "Work Management" という機能が新規に追加されました。サーバーの基盤管理者が追加設定することで利用できる機能であり、あちこちに散らばっているタスクをユーザーの個人ポータルに集約表示できます。また、Outlook (Exchange) 内のタスクや Microsoft Project Server 上で管理される個人タスクも併せて取得できるようになっていました。SharePoint Online でも一時期、この機能が利用できるようになっていたのですが後にこの機能が削除され、これに変わる新しい機能が出てくるというアナウンスがでました。この Work Management 機能に変わるのが、"Microsoft Planner" です。

タスク管理の考え方を根本的に見直し、新たな Office 365 の一機能としてリリースされたというわけです。

どんな機能が利用できるのか  "Storyboard と Microsoft Planner"

Microsoft Planner の考え方は、ホワイトボードや壁に付箋を貼ってタスク管理するのと同じような発想です。タスクをカード形式で管理します。こうした手法は「ストーリーボード (法)」とも呼ばれます。簡単に言えば、各々が対処すべきタスクをカードに書き出して、これを貼り出し、カテゴリ分けし時系列で並べるなどして管理する手法です。もともとは、ウォルトディズニーが映画作成するために編み出した方法だそうです。こうしたタスク管理ツールは、Microsoft 社以外では Trello などが知られています。

[参考] [第7回]ディズニーも使う「ストーリーボード法」を我がものにせよ

Microsoft Project と Microsoft Planner

タスク管理といえば、他に Microsoft 製品には Microsoft Project 製品群がありますが、これはプロジェクト遂行のためにコスト管理など含め PMBOK などを実践する比較的玄人向け (IT業界でいうプロフェッショナル ですね) のツールです。ガントチャートやタイムラインを使った進捗管理が主体です。一方の、Microsoft Planner はもっと手近で手軽に仕事の作業進捗管理をするものであり、個人レベルでは、どれだけタスクを消し込んでいき、表示されるカードを減らしていくかということに終始することになります。MS Projectは全体把握に主軸がありますが、Planner は作業を着々と終わらせていくことに主軸があるように思います。

使い勝手は?

Microsoft Planner で具体的にどのようなことができるのかは次の動画で確認できます。

 

Microsoft Planner 内の構成

Microsoft Planner を初めて使い始める際に、全体構成を把握しておいた方がスムーズに利用を始められるでしょう。そこでイメージを簡単にまとめてみました。

Planner

最初に作るのは "プラン" です。プラン内に複数のタスクを作成していきます。プランは、一般的には業務単位、プロジェクト単位で作成し、メンバーに仕事を割り振って作業分担するわけですね。そして、各タスクは、"パケット" (日本語のバケツ) という単位で仕分けられるようになっています。※2016年6月現在、タスクの担当者は 1ユーザーのみとなっています。

利用者は複数の業務やプロジェクトに携わっていることがほとんどですから、全体として自分が関わっている仕事を見渡せるようになっている必要があります。これを俯瞰するのが Planner ハブという画面です。そして、自分が抱えているタスクを素早く把握し、作業が終わればすぐに消し込めるように "マイタスク" という画面で自分に割り振られているタスクのあるプランを一覧できるようになっています。

Office 365 グループとプラン

プランは Office 365 グループの一機能として搭載されるため、プラン=Office 365 グループと考えてよいでしょう。そもそも Office 365 グループは、文字通り Office 365上に作成できるグループですが、すぐにコラボレーションができるようにメンバーを束ねるだけでなく、ファイル共有のストレージ (OneDrive for Businessがベース) や予定表、会話スレッドなどの機能がグループごとに作成されます。

PlannerAndO365Groups

そのため、タスク内に追加する添付ファイルはメンバーの共有ストレージに格納できるためアクセス権限管理などほとんど考慮する必要はありませんし、複数のタスクで共有されているファイルだけをまとめて取り出すこともできます。

既定ではユーザーはいつでもプランを作成できるのですが、削除はできません。プランを削除するということは、Office 365グループを削除するということであり、基盤管理者が行います。

利用できるユーザー

Microsoft Planner が利用できるユーザーは次のサブスクリプション プランに加入している組織のユーザーです。この機能がロールアウトされるとOffice 365 のランチャーからアクセスできるようになります。

  • Office 365 Enterprise E1 - E5
  • Office 365 Business Essentials
  • Office 365 Premium
  • Office 365 Education

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※先行リリースを利用できるよう設定しているテナントではすでに利用できるようになっています。

今後について

今後も機能改善や追加を継続するそうです。数ヶ月後には次の機能が追加される予定とのこと。

  • 1つのタスクへの複数のユーザー割り当て
  • 外部ユーザー アクセス
  • プランのテンプレート
  • ボードのカスタマイズ機能
  • iOS, Android, Windows 用のアプリ

ということで、今後もいろいろと楽しみですね。

2016年6月 5日 (日)

Microsoft Office Dev Center で先日アナウンスがあったオンプレミスの SharePoint で利用できる Responsive UI Package を試してみました。ちなみに、レスポンシブ Web デザインとは、利用する端末の種類を問わず、Webブラウザーの解像度に合わせて自動的にWebページのレイアウトを調整してくれる仕組みを持ったデザインのことです。

基本的な使い方等は下記の通り動画が公開されています。

 

概要

さて、このパッケージについて簡単に解説しておきましょう。

このパッケージは Microsoft 社が公開しているサンプルコード集である SharePoint Patterns & Practices (PnP) の一環として公開されています。PnPは GitHub 上で共有されています。GitHub から必要なファイル群をダウンロードすれば、パッケージの適用自体は、PowerShell で行えるようになっています。このレスポンシブWebデザインのパッケージは、JavaScript と CSS のみで動作するようになっており、既存のマスターページは一切手を入れていないというのが特徴です。適用対象はチーム サイトです。また、この機能を利用するにはサイトの拡張機能の一つである「モバイル ブラウザー ビュー」は非アクティブ化され利用できなくなります。

このパッケージでは、次の3つのレンダリングモデルをサポートしています。

  • デスクトップ : 768px 以上のスクリーンサイズ
  • タブレット : 481px から 768 px までのスクリーンサイズ
  • スマートフォン : 480px 以下のスクリーンサイズ

スクリプトは jQueryを使っておりインターネット上の CDNを参照しているため、インターネット接続環境が必要です。インターネット接続環境が利用できない場合は、JQueryのクラスライブラリをダウンロードし、任意のライブラリに格納した上で、 PnP_Responsive-UI.js内にある参照パスをこれに書き換えます。

手順

検証した際の手順は次の通りです。ちなみに、各手順はすべて検証環境の SharePoint 上で行いました。

SharePoint 2013 でこのパッケージを利用するには最低限 2015年4月のCUが適用されている必要があります。これ以前だとPowerShell実行時にエラーとなります。現在使っているサーバーの状況を確認するには手っ取り早くビルドナンバーを確認してみましょう(SharePoint 2013 のビルドナンバー)。

  1. GitHub から必要なファイルをダウンロードする。
  2. ソフトウェアをセットアップする
  3. PowerShell を使って Enable-SPResponsiveUI コマンドを実行する

GitHubから ZIPファイルをダウンロードします(ダウンロードリンク)。ダウンロードしたら、ZIPを解凍し、 Solutions フォルダ内の SharePoint.UI.Responsive フォルダーを開きます。
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ちなみに、この中にある pnp_responsive_ui.css と PnP_Responsive-UI.js はPowerShellコマンドレット実行後に、目的のサイトの"サイトのリソース"ライブラリにアップロードされます。

続いて、OfficeDevPnP.PowerShellコマンドを利用できるよう準備します。これは次の URLからダウンロードできるためそのまま SharePoint 上で実行します。

OfficeDevPnP.PowerShell v15 package

最後に Windows PowerShell を使って、目的のサイトに UIを適用します。まず、PowerShell コマンドでSharePoint.UI.Responsive フォルダーにカレントを移動します。

次のようなコマンドを実行します。-TargetSiteUrl では目的のサイトコレクションのURLを指定します。オプション等は GitHub のページに記載されているので、そちらを確認してください。

PS C:\> .\Enable-SPResponsiveUI.ps1  -TargetSiteUrl "https://sp2013-b.contoso.com/sites/ResponsiveUiTest"

以上でSharePoint サイトがレスポンシブUIになります。

[デスクトップ] 通常のチームサイト表示のまま

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[タブレット] サイドリンクバーが小さく折りたたまれ、検索ボックスの位置も変わる。また、本文も縦方向に並ぶ。


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[スマートフォン] タブレットよりさらにコンパクトに!


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使ってみて問題点などあれば、GitHubにてフィードバックするようにしましょう!