Microsoft の開発者向けイベントである「 Build 2020 」にて新たに「Microsoft Lists (リスト) 」が 発表されました。
この Microsoft Lists は SharePoint がベースになっており、 Microsoft 365 アプリの一つとして提供されます。
Microsoft Lists とは?
Microsoft Lists は次のように説明されています。
Your smart information tracking app in Microsoft 365
直訳すれば「Microsoft 365 内で動作する賢い情報追跡アプリ」といったところでしょう。
SharePoint には現在も "リスト" という機能が用意されており、多くの方が簡易データベースとしていろいろな用途で利用してきました。
Microsoft Lists は、平たく言えば、これをもっとビジネスシーンに沿って使いやすくしたものです。これがあれば、多くの場合 SharePoint リストではなくMicrosoft Lists を使った方がよいということになりそうです。
Microsoft Lists のコンセプト ビデオが YouTube に公開されています。楽しそうな音楽とともに発信されるメッセージはわくわくするような雰囲気ですが、残念ながらこれだけでは、あまりよくわからないでしょう。
そこで、もう一つのビデオを紹介しましょう。こちらはより具体的に説明しています。
といっても、ビデオを長々とみている時間がないという方もいらっしゃるでしょう。
そこでこのビデオから重要な部分をかいつまんでおきます。かいつまむ割には長いですが(笑)。
まずは見た目からアプリのイメージをつかもう
ビデオの冒頭ではソフトウェア開発を題材にしたIssue Tracker (課題管理)リストを説明していますが、次のような表形式であり、カラフルでアイコンなども充実しているようです。この見た目、日本人好みだと思いませんか?
画面の上の部分の操作コマンドを見ると、SharePoint リストとほぼ同じといったところ。リストの操作に慣れていれば、すぐに使えそうです。
次はこのリストから Event Itinerary (イベントの日程表) を作成したところであり、カレンダー形式で表示されています。ここは重要ですね。また後程説明しますが、このアプリはMicrosoft Teams上でも利用できます。そもそもSharePoint もカレンダー機能がレスポンシブ対応になっておらず、なかなかうまいソリューションがなかったのですが、これがあればカレンダーを Teams 上からも利用できるということです。
さらにこのリストからカード形式の見た目も作成できる。この例ではAsset Manager 、つまり資産管理をするために必要な情報をビジュアルな画像とともに表示しています。
既に紹介したように Microsoft Teams のチーム内の各チャネルにタブとして Microsoft Lists を追加できます。
とここまでが、画面イメージの説明です。
作り方は?
Office 365 アプリランチャー内に Microsoft Lists へアクセスするアイコンが用意されるそうです。これをクリックするとたどり着くのが次の画面。
これが Microsoft Lists のホームページと呼ばれるもの。
画面上部の「Create new list」をクリックすると新規にリストが作成できます。
次の4つから作れるようで、この辺はSharePointリストと同じです。
- 空白リストから
- Excel から
- 既存リストから
- テンプレートから
※裏ではSharePointサイト内にリストが作成されることになるのですが、ユーザーにはそれを意識させない作りになっているようです。
ビデオ内では Event itinerary リストテンプレートを選択してみたところを紹介しています。サンプルデータとともにどんなリストが作れるのかを確認してから作成できるようになっています。一見すると、このまま社内研修の一覧などに使えそうです。
リストを作成する際には次の項目を指定しています。
- リスト名
- リストの説明
- アイコンの背景色
- アイコン
- 保存先
保存先は My lists と Microsoft 365 グループに接続されたチームサイトのいずれかを選ぶことになります。My lists は個人利用のための場所であり、OneDrive for Business と同じような使い方になりそうです。あとから必要があれば、他のメンバーと共有できるとのこと。
アイテムの追加や編集は SharePoint リストの「クイック編集」とほぼ同じですね。メニューを見ても「Exit quick edit」とありますし。
SharePoint リストと同じくビューも持っています。ただし、リストと大きく違うのは「Autofit height」があること。これを選ぶと、フィールドに収まり切れない説明部分が折り返し表示になり、各行の高さが自動的に調整されます。Excel のセルの折り返しと同じようなものですね。モダンリストを使っている方の中には、これをするために今は、列の書式をわざわざ書いている方も少なくないでしょう。
そしてベースが SharePoint なので、SharePoint リストと同じく列の書式、ビューの書式も使えます。
SharePoint リストと違うのがコメントですね。アイテムごとにコメントできる! これは SharePoint リストには今のところありません。
それからリストに対して素早く「ルール」を作れる。ルールにより、列の値が変わったら、アイテムが作成されたら、といった条件で誰かに通知を送信できます。これは SharePoint リストの「通知」設定の進化版といったところでしょう。
一つのリストに対して複数のルールが指定できます。
カード形式のビューもデザイナーツールが用意されているため、JSONなど書く必要がなく、誰でも手軽に構成できます。とはいえ、画面下部には Advanced mode リンクがあるので、従来のビューの書式同様にJSONも書けるようですね。
そして、クラシックリストの時と同様に「カレンダー」ビューが作れる!!
Teams 連携!
Microsoft Teams 内に追加することによる利点も 見逃せません。
まず、アイテムの表示フォームは独自に作れるということ。それから、アイテムごとに会話がつながっていくということですね。この点は現在のSharePointリストと Teams の連携ではリスト単位での会話のつながりになってしまうのですが、アイテム単位で会話がつながるというのは強力です。
Power Platform 連携!
SharePoint リストと同様に Power Apps や Power Automate と組み合わせた利用もできるそうです。
モバイルでも使える!
Microsoft Lists はモバイルアプリとして iOS および Android でも利用できます。リストの作成から閲覧、アイテムの追加、編集まで!
特に、閲覧部分はうまい具合にヌルヌルっと横にスクロールしていますね。これは実際にビデオで確認してみてください。
補足
ここで、Microsoft Tech Community で発表された内容も加味しておきましょう。
Microsoft Lists は SharePoint リストを包括するとのこと。Microsoft Lists のストア先はSharePointサイトとなっているため、SharePointチームサイトから直接アクセスすることも可能だということです。
もっと知りたい方への情報リソース
Microsoft Lists 情報リソースは次のリンク先にあります。
いつから使えるのか?
さてこの機能いつから使えるのか? ということですが、Microsoft 365 Roadmap を見ると、リリース時期が June CY2020 となっています。もうすぐといいたいところですが、いつも通り対象リリースから順次ロールアウトしていくことになるでしょうし、Tech Communityの記事でも夏の終わりごろまでに利用可能になるとのこと。モバイルは年末までに利用できるようにするみたいですが、ロードマップには iOS用のモバイルアプリは既に追加されています。
ちなみに、2020年5月19日付で In Development ステータスとして新たに追加されたのが次の機能群です。まずはこれらの機能から展開されていくということです。
最後に独り言
早く利用できるようになって、もっと仕組みを知りたいところです。
さあて、本格的に使えるようになったら、SharePoint の研修内容を組みなおしていかないといけないなぁ... SharePoint リストとの違いと使い分けがポイントになりそうです。
いつも解りやすい解説ありがとうございます。大変参考にさせて頂いています。
コロナの影響もあって、今年のTeamsの新機能はビデオ会議に関するものが多いと感じていましたが、このListもかなり強力なツールになりそうですね。
特に、アイテム毎に複数のコメントが付けられる機能や、「Teams 連携!」で紹介されていた、独自フォームでアイテムを表示して、アイテム単位で会話がつながる、という点には注目しています。
これは、うまく作りこめば Redmine のように同じテーマの複数の課題をカテゴライズして、その課題一つ一つに対して、検討履歴や対応履歴を Teams で一元化して共有できるようになるのでは、と期待が高まります。
もし、お手元の環境に List アプリがリリースされたら、いち早く解説記事を出していただけると思いますが、もしよろしければ、上記の機能についても触れていただけると嬉しいです。
電話ねこ、さん。コメントをありがとうございます。「アイテム単位で会話がつながる」というところは、本当に注目点だと思っています。
アプリがリリースされたら、その点は私もしっかり検証したいと思っています!
こんにちは!
MS365の勉強を始めたばかりの者です。
まだ基本が理解できておらず、なんとなく使える機能だけ使っている感じだったのですが、
この度T、eams内でIssue管理をするためにツールの連携を検討していたところです。
当初、リスト管理にPlannerを使用しようと思っていたのですが、こちらの記事を拝見し、考えが変わりました。
Listsの方が応用が利くし、データの取得やPower Automateとの連携などもラクにできそうですね!
簡潔な説明と、親しみやすい文章で理解が進みました。
ありがとうございます!
しおごんさん
嬉しいコメントをありがとうございます!
Microsoft Lists は Excel に似た使い勝手となってるので、いろいろと応用しやすいですね。確かにIssue 管理には Planner より使いやすいと思います。
コロナ渦で在宅勤務になりましてMicrosoftさんなどが開催されているイベントでお見かけすることが多くなりました。いつもわかりやすい解説ありがとうございます。
こういう場所のお作法がよくわかっていないのですが、質問をさせていただきたく投稿しました。
作業員ごとの工程管理をExcelで行っているのですが、Listsに切り替えられるのではないかと考えています。他のアプリとの連携もできそうなのですが、たとえば
・登録した工程(イベント)をOutlook予定表に登録すること
・工程(イベント)の日時変更や担当者変更の際にOutlookと連動すること
は可能なのでしょうか。
EIさん、コメントをありがとうございます。
他のアプリとの連携ですが、基本的にはPower Automate と組み合わせれば実現できると思いますよ。チャレンジしてみてくださいね。
分かりやすい記事ありがとうございます
1点お伺いさせていただきたいことがあります。
Event Itineraryをカレンダービューにして利用していますが、
本サイトの見本のようにイベントごとに色分けできるように設定するにはどうすればよいのでしょうか。
カラムに対して条件付き書式を設定してもカレンダービューに反映されないため困っているところでございます。
お知恵をいただけますと幸いです。
一般業務兵さん、カレンダービューは残念ながら書式をサポートしていなかったのですが、朗報です!
書式が対応するようです。Microsoft 365 Roadmap には今月 GA (リリース開始)と予定されているので、続報を待ちましょう。
https://twitter.com/SharePoint/status/1536394903566962688
ちなみに、この記事のスクリーンショットはあくまで、Microsoft 発表のもので青写真も含まれていました。