コンテンツ ルール処理 (Content rules processor)
コンテンツルール処理では単純なルール設定もできます。
これにより、次のアクションをトリガーできます。
- アラートやワークフローの実行
- 適切なライブラリへやフォルダーへの移動
[考察] 処理後に別のライブラリやフォルダーへ移動するという機能については、以前、オンプレミスの SharePoint サーバーが持っていたコンテンツ オーガナイザー機能を思い出します。この機能は特定のライブラリにファイルをアップロードするとメタデータの設定を要求され、その設定が終わるとメタデータに応じて事前に設定している複数の場所にファイルを振り分けて移動させてくれるというものでした。図書館の「返却棚」のようなもので、そこに返せば図書館司書の方が本にタグ付けされた情報に基づいて適切な棚に戻してくれるのと似ています。
ただし、以前と異なるのはドキュメントをAIが理解、解析してメタデータを自動抽出し、その後の処理へといざなってくれるところでしょう。手動で判断していたところが、自動化できるわけです。
[考察] このルール機能はドキュメント ライブラリにビルトインで用意されているルール機能と画面が似ているため、この機能の拡張版だろうとみています。ビルトインの機能は通知機能の置き換えでありメールの送信しかできませんが、これ以外にトリガーとなる条件やアクションが増えているようで、ユーザーは簡単に設定できそうです。
PDFファイルのプレビュー画面から、複数の PDF ファイルを結合できるようになります。ファイルの分割もできるそうです。
ファイルのプレビュー表示から直接、電子署名を依頼できます。これは画期的だなぁと個人的には思っています。利用できるのは Syntex標準の eSigniture だけでなく、 Adobe Acrobat Sign や DocuSign なども利用できます。
1 電子署名メニューから設定を開始する
2 ビルトインの Syntex電子署名以外に Adobe社や DocuSign 社のものも選べる
3 署名を求める相手のメールアドレスを順に指定する
4 署名してもらう場所を決定する(色がついているところ)
設定が終わったら画面左上の Send メニューから送信すれば相手にメールが自動送付されます。メールにはファイルが添付(? リンクだと思いますが) されています。
あとはファイルを開いて 署名を追加するだけです。画面の右上には[Decline to sign] もあり署名を拒否することもできます。
このようにして署名された書類が蓄積されていきます。
さて、同僚は何か質問したいことがあるかもしれません。まずは目的のファイルを見つけ出したいのですが、この時に重要なのはメタデータが自動抽出されているということです。メタデータは各列に格納されています。Syntex は検索機能(Microsoft Search)とも協調しており、高度な検索ボックスが利用できるようになっています。これによりユーザーは複数の項目(メタデータ)に検索したいキーワードを指定することで柔軟に素早く検索できるのです。
各項目に検索キーワードを指定して検索する
ファイルを見つけたら、そのまま直接、注釈やインクを追加できるようになっています。オリジナルファイルは更新することなく、こうした情報を追加できるようになっています。
Syntex の一部として提供されるMicrosoft Searchはさらに強力になっています。最先端のディープラーニングモデルを利用して、セマンティック理解、自然言語処理、質問と回答を駆使して、適切な検索結果を提供します。
自然言語検索している例
検索結果の右側には関連情報へのリンクも表示されている
すでに SharePoint Syntex では契約書管理 (Contract management) 用のソリューションが用意されています。今年の末までに新たなソリューションとして買掛金(Accounts payable)用のソリューションが登場する予定だそうです。
Microsoft 365 はレジリエンス(resilience: 回復力)と信頼性の高いストレージ ファブリックですが、ますます多くの情報を取り込むにはより柔軟な管理方法が必要になってきます。
Syntex はコンテンツ管理、バックアップ、復元をするためのツールとして提供していきます。ストレージコストを管理して長期的なアーカイブもニーズに対応できるようにします。
サイトごとにアクセスを制限できるようになります。
具体的には、この設定によりメンバーシップタブに一覧表示されるサイトの所有者とメンバーのみがサイトのコンテンツにアクセスできるように制限します。その他のユーザーは一切サイトのコンテンツにアクセスできません。
[補足] ビデオの説明だけでは詳細が不明でしたが、サイトの共有設定を自由にはさせない設定なのかなと。共有リンクも使えない? 機密情報にアクセスできるユーザーを社内の特定のチームおよび社外の認められたユーザーに限定するのに使えるとのこと。
これはすでに提供されている機能ですが、共有リンクとファイルに適用された秘密度ラベルのレポートを生成するものです(※E5のライセンスが必要)。
共有リンクでは、3種類の共有リンクの利用状況を確認できるようになってり、過剰に共有されていないかを確認できるようになっています。
過剰に共有リンクが生成されているサイトを見つけたら、そのサイトの所有者に対してレビューの依頼をすることができるようになっています。この機能は今はまだ提供されていません。
サイトアクセスのレビューを要求するとサイトの所有者に次のようなメールが送信されます。メールのリンクをクリックするとサイトのアクセスレビューページが表示されます。ここから共有リンクを一覧できるようになっており、必要のない共有リンクを削除できます。
SharePoint 管理センターサイトのホームにある「SharePoint ストレージ使用率」カードに「ストレージを解放する(Free up storage)」メニューが追加されます。
クリックすると非アクティブなサイトの総数と使用してい容量が表示されます。
画面の環境ではストレージが不足しているため、対処方法が提示されています。具体的にはポリシーを作成して次のことを行うように促しています。
- 非アクティブなサイトの検出
- サイト所有者にサイトのアーカイブまたは削除を促す
- サイトの所有者に4回通知したのち、サイト所有者がサイトの利用状況を確認していない場合は、サイトが自動的に削除される
ライフサイクル管理ポリシーを利用することで非アクティブなサイトを識別できます。
とはいえ、アクティブでなくても、機密性の高い情報を保持しているサイトは削除されるのは困ります。そこで、"極秘"などの秘密度ラベルがサイトに適用されている場合は、そのサイトを低コストの不変ストレージ階層に移動して容量を解放してコストを削減できます。(※価格は未発表)
[補足] SharePoint が長年標準では持っていなかったアーカイブ機能がいよいよ登場!!
BCPを確保するには、ランサムウェアからの回復、削除したユーザーの復元などを容易に行えることが重要です。Syntex では新しい強化された共有バックアップと復元により、将来のPoint in recovery (PITR) のために Outlook, OneDrive, SharePoint を全体をバックアップできます。
SharePoint 管理センターのホームに「ランサムウェアの検知」メッセージが表示されている
カードをクリックすると、詳細情報が確認できます。セキュリティインパクトや解決方法なども提示されます。
影響を受けているサイトが一覧できます。
サイトごとに復元したい時点や復元方法を選択できます。Recommendation を見るとどの時点を戻せばデータ損失が最小になるかが示されています。復元方法は新しくサイトを作成してそこにバックアップを戻すのか、同一サイトに復元するのかのいずれかを選べます。
Syntex のコネクターが用意され、Power Automate からも利用できます。スクリーンにあるのは「Generate document using Microsoft Syntex」というアクションです。文字通りドキュメントを生成できるということでしょうがこれだけだと詳細がわかりません。
既存環境で確認したところ、Power Automate のプレビュー環境ではすでにアクションが利用できるようになっていました。名称は今のところ SharePoint Syntex ですけど。またコネクターも SharePoint のコネクターとして提供されています。これが将来的には Microsoft Syntex コネクターに変わるのでしょう。SharePoint コネクタの説明を見るとコンテンツ アセンブリ機能を使ってドキュメントを自動生成する機能ですね。
Syntex のほとんどの機能は一度アクティブ化すれば従量課金で利用できます。 Azure サブスクリプションの pay-as-you-go を利用できるというわけです。
[備考] Azure サブスクリプションの従量課金の仕組み( pay-as-you-go)は Power Platform にも導入されましたね。
ロードマップ
全体的なロードマップは次の通りです。
全体的な感想
これから様々な機能が投入されてくるとのことで個人的にはとても楽しみです。何より日本語対応を待ちたいところ。今のところフォーム処理モデルを利用したコンテンツ処理は日本語をサポートしていますが、それ以外は来年以降となるようです。
一通りの機能を見ると、SharePoint Server 2007 から培ってきたナレッジの集大成になってきそうだなぁと感じています。電子署名も Office 2007 の頃は判子の印影を使った署名機能があったんですが、事前設定などが面倒でしたしそもそも PDF は対応していませんでした。タグ付けを自動化することで、その次のアクションもいろいろとつないでいける。この辺りは、本当に画期的でメタデータを起点にアクションを起こすことは出来はいましたが、手動だったというのも大きく。検索も本当に進化していっています。単一のライブラリに類似ファイルを集約し、自動的にタグ付けしていけばフォルダーにしまい込む必要がないですし、検索ボックスから手軽に探せる。こういったシナリオは非常に魅力的。あとは、保持期限や秘密度ラベルも自動的に適用できるわけですから、トータルで考えると本当に理想的。無論、実装していくときには色々と課題はあるでしょうが。
Syntex はノーコードというのも魅力です。ここに、必要に応じて部分的に Power Platform を組み合わせていけるわけです。しかし、管理機能もここまで強化されてきていて、Syntex に含めてしまうとは!!
弊社でもこうしたソリューションに対応できるべく研修コースをご用意しています。SharePoint 管理者向けのコースはもちろん、Power Apps と Power Automate、Microsoft Search, Microsoft Purview コンプライアンス入門など関連するコースを複数用意していますので、将来のコンテンツ管理の基盤づくりのために情報をしっかりと整理しておくのも大切です。是非、併せてご利用ください。