SharePoint 2013 の新機能に 機械翻訳サービス ( Machine Translation Service ) があります。この機能の概要について説明します。
機械翻訳サービスとは
サーバー上でこの機能を構成することで、ファイルやサイトを自動的に翻訳できるようになります。実際に翻訳を行うのはクラウド上にあるマイクロソフトが提供する翻訳サービス(Microsoft Translator) であり、機械翻訳サービスを構成するとユーザーはこのサーバーにコンテンツを送信できるようになるというわけです。
ここで、すぐに疑問に思うのが、送信された情報はマイクロソフト側でどのように利用されるのか? ということです。TechNet などには翻訳のために送信された情報は、今後の品質向上のために参考にされる可能性があると記載されていますが、プライバシー情報は保つとののことです。詳しくは、「Microsoft Translator Privacy」を確認してください。
さて、もう少し技術的な話をしましょう。 機械翻訳サービスは、SharePoint Server 2013 のサービス アプリケーションの一つとして追加されます。下記の図は、SharePoint サーバー全体管理サイト内のサービス アプリケーションの管理ページです。ここに「機械翻訳サービスと表示されていることがわかります(画面は プレビュー版です )。
機械翻訳サービスで翻訳対象となるのは、次の拡張子を持つファイルです。基本的にはHTMLベースのWeb ページと Word ファイルです。PowerPoint や Excel は対象外です。
- Word (docx, doc,docm, dotm,dot, rtf) , HTML (html, htm, aspx, xhtml, xhtm), テキスト (txt)、XLIFF (xlf)
機械翻訳サービスを構成するには、対象とするファイルの選択、対象となるファイルの最大サイズ、文字数、同時翻訳の数などの設定が必要であり、もちろん既定値は設定されているものの事前の設計は十分に行っておく必要があるといえます。構成画面を次に示します。
なお、このサービスは SharePoint Server 2010 から導入されている Word Automation Services とコンポーネントを共有しています。
どのように利用するのか
利用方法は、大別すると2つあります。一つは、SharePoint サーバーの以前のバージョンから導入されているバリエーション機能とともに利用する方法でこちらはノンコーディングで利用できます。もう一つは、この機能を利用できるようにコーディングする方法です。
バリエーションの機能は、多言語間で情報を発信するためのポータルサイトとしてSharePoint を利用する場合に利用します。この機能を構成すると、日本語と英語というように異なる言語用のサイトが自動的に作成されます。これにより日本語のWebページを作成して公開すると、自動的に英語サイトにページがコピーされるという仕組みが提供されます。ただ、これまではこのコピーされたページは何らかの形で人の手による翻訳を行う必要がありました。SharePoint Server 2013 からは、翻訳方法としては手動で翻訳することはもちろん、翻訳用のXMLフォーマットであるXLIFFを自動生成したり、今回の記事の内容である機械翻訳サービスを利用したりできるように選択肢が広がっています。
まずは、どのような動きになるのかを知るために Web ページ (*.aspx) の翻訳例をご紹介しましょう。英語サイトに次のようなページを作成します。
このページはしばらくすると日本語用のサイトにコピーされます。バリエーションが構成されているサイトでは、リボン メニューに[バリエーション]というタブが表示されます。ここで[機械翻訳] をクリックします。
すると、内容がクラウド上のマイクロソフトのサーバーに送信されます。
同様に、バリエーションが構成されているサイトでは、Word 文書なども手動で翻訳できます。たとえば、ライブラリに Word ファイルを保存します。ライブラリの画面上にはやはり[バリエーション]タブが表示され、[機械翻訳]メニューが表示されています。
これをクリックすることで、先ほどと同様に機械翻訳が行われ、Word ファイルが更新されます。翻訳の状態列が追加され、ステータスが翻訳済みとなっていることがわかります。
さて、気になる翻訳の精度ですが、現在インターネット上で公開されている BING の翻訳サービス (BING Translator ) でも使用されている Microsoft Translator そのものです。したがって、試してみたい方は以下のURLにアクセスして翻訳をしてみるとよいですよ。
- http://www.bing.com/translator
ここまで、バリエーション機能を使う場合のみご紹介しましたが、この機能を構成していないサイトでも機械翻訳機能は利用できます。Office Web Apps 2013 サーバーを構築している場合は、Word ファイルのみブラウザー上で機械翻訳できます。これについては設定を含め、次回の記事で説明します。
それ以外については、コーディングが必要です。
Server-side Object Model, Client-side Object Model (CSOM) の両方が利用できます。Server-side で利用できるということは、Web パーツなどを開発して利用できるということです。また、CSOM の場合は、C# や VB 、JavaScript を使ってコーディングできます。Silverlight, REST サービスもサポートされます。翻訳の実行は非同期と同期処理の2種類から選べます。
Visual Studio を利用することなく、気軽にちょっと試したい場合は、JavaScript が手軽です。MSDNにコーディング概要は書かれているのですが、詳細な情報はWebにページタイトルしか公開されておらず、コンテンツはこれから作成されるようです。今のところ、Webに公開されているサンプルコードを入手して、動作を確認するのが最善策であるようです。ということで、とりあえず動作確認をしてみようとコンテンツ エディタ Web パーツを使って検証した際のスクリプトを以下に記載しておきますので、参考にしてみてください。このスクリプトを実行すると、翻訳結果は別ファイルとして生成されます。
構成するためには必要な準備
クラウド上の翻訳サーバーへ接続するために SharePoint 2013 は OAuth 2.0 を利用します。そのため、SharePoint Web アプリケーションを作成する際には、クレームベース認証モードとなっている必要があります。ちなみに、SharePoint 2013 では Web アプリケーションを新規に作成する場合にGUIからは認証モードは選択できず、既定でクレームベース認証モードになります。機械翻訳サービスはファーム構成ウィザードを使うと自動的に構成できますが、追加設定として、ファーム内の全 SharePoint Server 2013 サーバーに対して次のリンクの設定を行う必要があります。
関連情報
[TechNet]
- ビデオ : Walkthrogh SharePoint 2013 features in the new machine translation services
[MSDN]
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