SharePoint のクラシックサイトを使い続けている組織ではそろそろカスタムスクリプトも利用できなくなり、モダン化しなければと考えているところも少なくないのではないでしょうか?
モダンサイトへの移り変わりの背景
SharePoint の新たなUXとしてモダンサイトが2016年に提供され、その後の 2017年には新たなサイト構成として "ハブサイト" が発表され、それから7年が経過しました。モダンサイトは従来のクラシックサイトはなんだかんだと Internet Explorer 6をベースとした制約を引きずっています。Internet Explorer (IE)の時代はPC上のIEでないと動かないようなMicrosoft製品のクローズドな世界観の中にありました。ですが、インターネットの世界は本来、ユビキタス構想にあるようにあらゆるデバイス上でどこからでも利用できるオープンな世界観に根差しています。ですが、クラシックサイトはこうした独自の世界観の制約に縛られ、最新のWebの技術(JavaScript の関数や最新のCSSなど)の利用がかなり制限されていました。以前は SharePoint Server をベースとしたBtoCの商用サイトなども作られていましたが、かなりの制約のなか作られていたわけです。ですが、モダンサイトの登場により状況が一変します。Webブラウザーも Chrome ベースの Microsoft Edge となり、こうした最新の Webブラウザーを利用することを前提に最新のWebの技術を容易に利用できるように対応したのがモダンサイトです。モダンサイトではレスポンシブUIとなり、クラシック時代のようなモバイル専用画面は使われなくなり、どんなデバイスでもスムーズにコンテンツが閲覧できるようになりました。一時はクラシックサイトと比較すると機能面で不足するところもありましたが、現在はクラシックサイトとは比較にならないほどのアップデートを続けており、来年にはWebページも現在よりもより柔軟なレイアウトなどが可能になる予定でますます差は広がるばかりです。
また、これまでのサイトコレクションの概念としてサブサイトありきの構成はサイト構成の変更を柔軟性に行うことができず数多くの課題を抱えてきました。そんな中で抜本的に課題を克服するために2017年にハブサイトの概念が登場したのです。これに伴い、検索機能にも莫大な投資が行われ従来と比較しても段違いに「検索による情報の集約」が可能になりました。1つのサイトコレクション内にサブサイトを作成していったのは、特にお知らせなどをサブサイトから集約できるだけでなく、サイト間のナビゲーションも統一感を持って管理できるという点がメリットだったのですが、先に述べたようにサイトの構造を柔軟に変更できないというのは非常に大きなデメリットだったのです。
Microsoft Office SharePoint Server 2007が現在の Microsoft 365 の SharePoint のベースになっていますが、製品名にあるように 2007年リリースで、そこからちょうど10年目の節目にハブという新たな概念が登場し、抜本的な見直しをすることになりました。つまりはサイトの設計思想も大きく変化することになりました。クラシックとモダンでは機能差はあまりに大きく、以前は比較表が欲しいというような要望もありましたがクラシックになかった機能が山のようにあります。そうなると差分で学習するというよりは「改めて学びなおす」必要があるといえます。
移行ではなく "新たな構築" を
クラシックサイトからモダンサイトへは "移行" ではなく、"新たな構築" です。リニューアルといった言葉を使うほうがしっくりきます。サブサイト構成は推奨されなくなり、新たにハブ構成にすることが望ましい。お知らせリストではなく、ニュース機能を使う。ニュース機能をさらに推し進めて Viva Amplify を利用することを検討するのもいいと思います。サイトコレクションはもはやコレクションではなく1つのサイトしか含めないため、単に「サイト」と呼ぶようになっています。現在、毎日20億ものドキュメントが新規に SharePoint へと追加されているなかで、膨大に蓄積されるデータをガバナンスやセキュリティを保ちつつかつ、できるかぎり利便性を損なわずどうデータを利活用していくのか。そのために SharePoint Advanced Managment やMicrosoft Purviewによる管理なども併せて管理していくことも検討していく必要があります。こうしたツールの設定対象は「サイトコレクション」単位であり、サブサイトを個別に設定する思想はありません。ですから、セキュリティの境界線は1サイトのみを含むサイトコレクションに限定した方が管理がしやすくなります。
きっとクラシック環境にはたくさんの不要なファイルも蓄積しているはずですし、埋もれてしまっているものもあるでしょう。時間の経過とともにベストプラクティスも変化しています。新規にサイトを構築し、これを機に断捨離してドキュメント管理のありようを見直すいいタイミングだとも言えます。おそらくこうしたタイミングで対応しないと、なかなかチャンスはないでしょう。
研修のご案内
クラシックサイトからモダンサイトへ切り替えていこう保存としている方は、弊社の研修もご利用ください。まずは知識をアップデートするお手伝いを研修という形で提供しています。最新情報をもとにSharePointの設計思想、運用のポイントなど操作以外について解説します。
- 👩🎓Microsoft 365 - SharePoint サイト管理基礎
- 👩🎓Microsoft 365 - SharePoint モダン ポータルサイトの設計・デザイン・展開 ワークショップ
- 👩🎓Microsoft 365 のドキュメント管理と検索
以前にもましてドキュメントのメタデータ管理は重要でかつ利用しやすくなってきています。また、ドキュメントのライフサイクル管理を見直するなどして不要なデータを削減することも考えてみましょう。このあたりの話は、下記の「Microsoft 365 のドキュメント管理徹底詳解 フル機能を使った高度な管理」のセッション録画でも触れていますのでよかったらどうぞ。
機密情報保護に関してもサイト設計が今のままで適しているのかを再考してみていただきたいです。ちなみに、Microsoft 365 のSharePoint はCopilotの登場もあり、これまで以上にガバナンス機能の強化がされています。
情報システム部門の方に向けては以前から提供しているコンテンツのガバナンス&セキュリティ管理のための基礎コースである「👩🎓Microsoft Purview コンプライアンス入門」を提供しています。この研修では秘密度ラベル、データ損失防止ポリシー、保持期限、レコード管理などについて学べます。また、来年から新たに提供を開始する「👩🎓Microsoft 365 SharePoint の構成と管理」コースもご用意しています。新しいドキュメントのバージョン管理の設定、アーカイブ&バックアップ、サイトのライフサイクル管理をはじめとする SharePoint Advanced Management についても学べます。研修後にどのようなアプローチをとっていけばよいかといったアドバイスはコンサルティングサービスとして別途ご相談をお受けすることも可能です。
モダンサイトへの移行の取り組み
とはいえ、現場ではクラシックに慣れたユーザーはクラシックサイトが「こうあるべき」ものというマインドに傾いているでしょうから、いきなり切り替えていくのはハードランディングになるかもしれません。一部のサイトを凍結して新たな環境を使い始めてもらうなどといった方法で徐々に切り替えていくなど計画も必要になるでしょう。旧サイトから新サイトにすべてのコンテンツを持っていく必要はありません。読み取り専用などにアクセス権限を切り替えて、必要なものは移動する。新たなコンテンツは新サイトに作成する。旧サイトはコンテンツを検索できる状態にしておくなどです。そうでないと、古い情報をせっかく破棄していける良いタイミングを逃しかねません。ですから、ツールで一括移行などということを安易に考えるのは個人的には疑問に思います。どのドキュメントが必要かは業務を知っているユーザーにしかわかりません。ユーザーにも協力を仰ぐ必要があるでしょう。ITのことは情報システム部門がやるべきだとする組織もいくつか過去に見てきましたが、自分たちでコンテンツを管理するというのがもはや当たり前。すべての管理を外注に丸投げするというのも、そういう時代ではないでしょう。組織にナレッジが残りません。Power Platformなど見ていれば「市民開発者」として現場の方が自分たちでコンテンツ管理をし業務改革を推進していく時代です。
先ほども少し触れましたが、従来から利用してきたお知らせリストはやめて「ニュース」に切り替えるのがお勧めです。お知らせリストでは「情報を掲載して終わり」となりがちでしたが、「ニュース」は、どこまで周知できたのかを把握することに重点を置いています。メールでの丸ごと配信も可能になり、Webページ経由だけでなくメール経由での閲覧も含めてどの程度、閲覧されたのかなど把握できます。SharePointから Teams, Outlook, Viva Engage などに一斉配信できる Viva Amplifyはより広く伝達するための手段であり、情報を周知するマーケティング的な手法を組織内の伝達・通達に応用している仕組みで配信後、どの程度閲覧されたのか、どの部署が閲覧できていないのかなどの統計データと分析が可能になっています。「お知らせ」リストを使っていたころとは、こうした観点が大きく変わっているのです。
他に、改めてユーザー教育も必要でしょう。そのためにもクラシックサイトのペインポイントを列挙し、モダンサイトの利点を整理してアナウンスしていく必要もあると思います。
ということで、クラシックからモダンへの切り替えは、心機一転、多くのことを見直すいい機会ととらえていただきたいなと思います。
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