2024年6月

2024年6月 6日 (木)

※大量メール送信機能(HVE)は執筆現在、パブリック プレビューです。

大量メール送信機能 (HVE) とは?

大量のメールを効率的に管理するための機能です。HVE は High Volume Email の略。Exchange Online 上にHVEアカウントを作成して、これをユーザーは大量メール送信のエンドポイントとして利用します。

Hve

現在、Exchange Onlineではメール送信時に送信制限されます。これは受信者数の制限(迷惑なバルクメッセージの送受信の抑制目的)とメッセージ数の制限(指定された期間内にExchange から SMTP経由で送信できるメッセージ数が決まる)の2つに基づいています。例えば受信者数の制限(Recipent Rate limit) は、1日24時間あたり10,000の受信者に制限されていますし、メッセージ数の上限も1分あたり30個のメッセージ数に制限されます。

一方のHVEの目指すところは次の通りです。

  • HVEは組織内部のマス コミュニケーション向けに設計されており、内部受信者に対しては受信者数の制限なく一般的なメールボックスよりも多くの電子メールを送信できる
  • 外部受信者にして送信料を制限する。 Azure Communication Services が大量の外部メールに対応するソリューションを提供しているためである。
  • 管理者は、アカウントごとに独自の上限を設定できるようになり、消費ベースの課金モデル、使用量メトリクス、トラッキングを利用できるようになる。

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この機能を利用することによるメリットは次の通りです。

  • 送信先の制限
  • スパム対策のバイパス
  • 送信済みアイテムのフォルダーへの保存
  • TLSサポート
  • 認証

送信先の制限

これまでメール送信では外部受信者への送信には制限はありませんでした。ですが、前述の通りHVEは1日あたり2,000人の外部受信者に制限されます。このように制限を設けることで、次のようなメリットが享受できます。

  • セキュリティとスパム対策
  • リソースの効率的な利用

まず、セキュリティとスパム対策ですが、不正な送信者からの大量のスパムメールを防ぎます。また、外部受信者への送信を制限することで悪意ある攻撃やフィッシング詐欺のリスクを低減できます。

次にリソースの効率的な利用ですが、これまでのように無制限だと大量のメール送信によりサーバーリソースが過度に消費される可能性がありますが、制限を設けることでリソースの適切な分配ができます。

スパム対策のバイパス

HVEから送信されたメールは Microsoft 365 または Office 365 のメールボックスであれば、スパム対策をバイパスできます。

送信済みアイテムのフォルダーへの保存

HVEから送信されたメールは送信済みアイテムフォルダーに保存されるため送信履歴を簡単に追跡できます。

TLSサポート

HVEから送信されたメールは従来通りポート25またはポート587ですが、デバイスやアプリケーションサーバーはTLSサポートが必須です。従来はTLSサポートは必須ではありませんでした。

認証

プレビュー期間中は、HVE for Microsoft 365 ではSMTPベーシック認証を必要とします。そのためMicrosoft 365 または Office 365 ユーザー名とパスワードが必要です。

一般提供開始後に OAuth認証がサポートされる予定です。

パブリック プレビューの詳細

HVEを使用することで特定のSMTPエンドポイントを使ってメッセージを送信できるMailUsersを作成できます。プレビュー中は最大20まで作成可能です。現時点での制限は次の通りです。

機能 テナントごとの最大数
HVEアカウント 20
受信者レートの制限 10万/日/テナント
外部受信者 2,000/日/アカウント

サービス情報

  • サーバー/エンドポイント: smtp-hve.office365.com
  • ポート: 587
  • TLS: STARTTLS
  • TLS 1.2 と TLS 1.3 をサポート
  • 認証: ユーザー名とパスワード

VEアカウントの作成

Exchange 管理センターから[メールフロー]>[大容量メール(プレビュー)]の順にアクセスします。次に 「HVEアカウントを追加する」をクリックします。

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表示名、プライマリ メール アドレス、パスワードを指定します。プライマリアドレスは、username@contoso.com の形式にする必要があります。ドメインは承認済みドメインにします。エイリアスは省略可能です。パスワードは Microsoft 365 ユーザーアカウントを作成するときと同じ条件です(8 ~ 256 文字で、大文字、小文字、数字、記号のうち少なくとも 3 つを組み合わせ)。条件を満たさないのだと作成時にエラーになります。

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内容を確認したら、[作成]をクリックします。

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ちなみに、作成したアカウントは Microsoft 365 管理センターのアクティブなユーザーとして表示されます。ただし、送信用の特殊アカウントであるためライセンスは付与することは避けるようにしましょう。

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費用

パブリックプレビュー中はコストは無料ですが、1日当たりの受信者数は10万人に限定されています。GA時には拡張される予定。初期段階ではエンドポイントは北アメリカ地域にありますが、今後数か月以内により多くの地域にラウンチする予定であるとのこと。

メールの送信テスト

Power Automate を使って HVE アカウントを利用した送信テストが可能です。詳しくは次の記事へ。

SharePoint Technical Notes : Power Automate を使ってHVEアカウント経由で電子メールを送信する (lekumo.biz)

参考資料

2024年6月 4日 (火)

Microsoft 365 Community Conference というコミュニティイベント(有償)が米国フロリダで5月上旬に開催されました。このイベントは Microsoft が大掛かりにバックアップしており、ここ数年はいつもこのイベントでSharePoint に関する大きな発表があります。イベント自体は有償でしたが、現在、一部の録画が YouTube に公開されています。

まずはぜひ、Microsoft 社の Jeff Teper氏の Keynote を確認してみてください。

今回の記事では、上記 Keynote や下記のコンテンツをベースに要点をまとめていきます。

テーマ

今回のイベントでの SharePoint のテーマは以下の4つです。これは去年発表されたものと基本的には同じで、基本路線は変わらないようです。

  • よりシンプルなオーサリング
  • 説得力のあるコンテンツ
  • より深いエンゲージメント
  • 柔軟なプラットフォーム

よりシンプルなオーサリング

SharePoint はこれまでも一貫して、ユーザーが手軽にイントラネット上でプロフェッショナルなコンテンツを作成できるよう様々な障壁を減らしてきました。

プロンプトによるページやサイト作成

そして2024年5月に、だれもが魅力的なコンテンツを作成できるようSharePoint に Copilot が導入されます。次のスクリーンショットは Microsoft 365 Conference のものです。

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おそらく SharePoint の新しいスタートページの上部画面ですね。ここには複数のページ作成のためのテンプレートが用意されており、選択すると Copilot に対するプロンプトを入力できます。ただ、通常のブランクのプロンプト画面ではなく、定型文が用意されています。今回選択しているのは “Status update” というテンプレートです。そのため、定型文では期間を “月単位” で入力したうえで、その期間内でのなんの最新ステータス情報なのかを伝えるタイトルなどを入力します。画面下には「 Edit entire prompt 」とあるので、こうした定型文以外に自分で自由に書くこともできるということでしょう。デモは、このページのもととなる情報をWord ファイルをアップロードしています。また、生成する言語も選択できます。「Japanese」とあるので日本語も生成できるようです。

出来上がったページには先ほど指定たタイトル “New campus building update, May 2024”が指定されています。

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プロンプトで指定したセクションも生成されています。

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ちなみに、新しくなる SharePoint スタートページからはSharePointページだけでなく Copilot を使用してサイトの作成もできます。

カスタム フォント

すでに対象リリーステナントで利用できるようになっていますが、SharePoint サイトでカスタム フォントが利用できます。このサイトもカスタム フォントを早速利用しています。詳しくは別の記事に書いているのでそちらを確認してください。

SharePoint Technical Notes : SharePoint ブランドセンター (プレビュー) (lekumo.biz)

ヒーローWebパーツのアップデート

ヒーローWebパーツがアップデートされます。特に注目したいのが、1つのWebパーツ内で異なるデザインをコンテンツごとに適用できるようになるということです。下の2つのスクリーンショットは同じWebパーツですが、それぞれデザインが異なっています。20240530_101832

この機能は現時点では、2024年12月ロールアウト開始予定。Microsoft 365 Roadmap ID: 395214

タイトルエリアが削除可能に

すでに以前記事にしていますが、タイトルエリアが削除できるようになり、より柔軟なページレイアウトが作成できるようになります。

SharePoint Technical Notes : タイトル領域がリニューアルへ(必須ではなくなる)! 新しいバナーWebパーツの登場 (lekumo.biz)

デザイン アイディア

ページのセクションごとに PowerPoint と似たようなデザイン アイディアが利用できるようになります。背景画像や色合いなども複数提案してくれる中から選べます。

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この機能は2024年6月ロールアウト開始予定。Microsoft 365 Roadmap ID: 124846

フレックス レイアウト

これまでセクションの列は、1列から最大3列まででした。新たにフレックスアウトが利用できるようになります。

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セクションも高さが自由に変えることができ、この中に Webパーツを任意の場所に置けるようになります。最大12列にアクセスできるようになっているそうです。

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Microsoft 365 Roadmap ID: 395213

ページの同時編集

2024年6月には SharePoint ページのリアルタイム同時編集ができるようになります。

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2024年後半にはセクションレベルでのインラインコメントが追加できるようになるため、コメントを残しながら互いにページ作成作業を行えるようになります。

説得力のあるコンテンツ

SharePoint の美観が大幅にアップデートされます。画像や動画を取り入れた視覚的に美しいサイトやページを作成できるようになります。

Microsoft は現在、ブランディングとテーマ設定、タイポグラフィとフォント、グリッドとレイアウト、ビデオとイメージ、アニメーションとモーションなど、優れたウェブデザインの全領域に投資しています。この新しいエクスペリエンスは、マイクロソフトのFluent Design Systemに基づいて構築されています。

ブランドセンター 

先ほども登場したブランドセンターですが、今後、組織、製品、子会社などのアイデンティティを反映するフォント、カラー、ロゴ、その他のデザイン要素を指定できるようになります。 これらのブランディング要素はサイト間で再利用でき、SharePoint が適切なガードレールを提供するため、サイト所有者はブランディング・ガイドラインに沿っていることが担保できるようになります。

画像とビデオ

すでに画像Web バーツでは、エディタが新しくなり、形状のトリミング、色の調整、フィルターの追加、テキストのオーバーレイなどができるようになっています。また新しいStream Webパーツはフォルダーやプレイリストを持つ複数の動画をサポートするようになりました。

Microsoft Stream ビデオとの連携

新たにビデオページ テンプレートが提供されます。現在ロールアウト中です。これによりビデオから簡単にページを作成できるようになります。これにより、手軽にビデオと関連コンテンツなどをページの一か所にまとめられるようになります。4_assetidvideocropped次の画面は YouTube の側で提供されているビデオ自体の解像度がいまいちで、メニューがよく見えませんが、Share ボタンのところに、" Create video news post " というメニューがあります。

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ビデオニュース投稿のテンプレートが複数ありますが、その中の一つを選択します。

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以上で、Stream Webパーツとテキスト Webパーツなどが配置されたページが出来上がります。ビデオは配置済みで、画面下のテキストWebパーツにはビデオの説明が書かれています。

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これをメール投稿できるページになっているため、そのままメール送信もできます。Outlook で受け取ったメール内にあるStream のビデオは現在、インライン再生できますが、SharePoint ページから投稿されたものも例外ではなく、そのままメール内で再生できます。

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SharePoint サイトと Microsoft Stream のロードマップ

SharePoint サイトと Microsoft Stream のロードマップは次の通りです。

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より深いエンゲージメント

コンテンツは業務の流れですぐに見つけられるのが最も効果的です。SharePoint では単にコンテンツを作成するだけでなく、エンゲージメントを生み出し、適切な対象者にリーチするための仕組みを提供し続けています。

昨年リリースされた機能にニュースを丸ごと電子メール送信できるというものがありましたが、それもこの一環です。Outlookと SharePoint ページの両方を含めたアクセス状況分析もできるようになりました。SharePoint のページを Outlook で表示する機能は News in Outlook と呼ばれます。日本語で直訳すれば、Outlook 内のニュースですね。今後、SharePoint のニュース投稿ではこれが既定の設定になるようです。

昨年発表された Viva Amplify は、企業のコミュニケーション担当者が従業員へのリーチやエンゲージメントの方法が変革するのをサポートしました。Viva Amplify の配信先チャネルに新たに Viva Engage も加わる予定です。

また、Viva Connectionsも、ダッシュボードでパーソナライズされたビューを表示できるようになっただけでなく、企業ブランディングやダークモードをサポートするようになりました。

ということで記事を見るとこのエリアでは Viva Amplify が一押しでした。Viva Amplify の詳細は過去に書いた記事もどうぞ。

SharePoint Technical Notes : Viva Amplify: お知らせを Outlook, SharePoint, Teams に一括配信しよう! (lekumo.biz)

柔軟なプラットフォーム

最近 Graph API for SharePoint ページがリリースされました。開発者がプログラムで SharePoint Pages や News 投稿とやり取りできるようにし、ページの一覧表示、取得、作成、編集、公開、削除などの機能を提供します。

また、既存の Microsoft Teams ボットフレームワーク統合を Viva Connections に簡単に拡張できるように、ボットフレームワークを利用した Viva Connections の拡張性も追加しました。

2023年11月に発表された SharePoint Embedded は SharePoint のドキュメント管理機能を独自のアプリから利用できるようにするための仕組みです。新たにファイルストレージコンテナという概念が導入されました。 SharePoint のコンテンツとは論理的に分離されていますが、機能としてはアクセス権限管理やバージョン管理など SharePoint の機能をそのまま利用できます。Microsoft Loop は SharePoint Embeddedがベースになっており、SharePoint の管理者はストレージコンテナの管理も行うことになるため最近 SharePoint 管理ポータルにこれを管理するメニューが追加されました。

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その他の機能

サイト機能以外にも新しい機能がこれから登場します。個人的に気になったものをピックアップしておきます。

画像の理解

OneDrive に格納されている画像に関しても Copilot からいろいろと質問できるようになるようです。

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OneDrive(Business)からのメタデータの利用

OneDrive 内のクイックアクセスから各 SharePoint サイトのライブラリにアクセスできますが、現在は機能は限定的です。

しかし、これから列の編集やビューの利用もできるようになります。たとえば、ボードビューも利用可能で、ドキュメントのステータス管理もスムーズに行えるようになります。

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Microsoft Lists での並び替え

アイテムをドラッグ&ドロップで並び替えられるようになります。

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ファイルの要求機能のブランディング

外部共有にファイル要求機能を使っている場合、画面に組織のロゴを指定したり、ボタンの色などを指定できるようになります。

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列の自動フィル

SharePoint のドキュメントライブラリで、列を追加する際に Syntex のライセンスがあれば列の自動フィル機能が利用できるようになります。

ライブラリに格納されるファイルから抽出したい情報をプロンプトに入力しておくことで、AIがプロンプトをもとに列に情報を抽出してくれます。

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ちなみに、この機能、本日(2024年6月3日 米国時間)よりロールアウトが開始されたそうです! 

最後に

一通り、主な内容をピックアップしてみましたが、ページ作成が劇的に変わるので個人的にはとても楽しみにしています。これまでもよく「見栄えのよいサイトを作成するにはどうしたらいいでしょう?」という質問を受けることが多かったのですが、業務用のサイトなので見栄えより従業員が欲しい情報がすぐに手に入ることが重要で、コンテンツとナビゲーションを整えることが重要で、見栄えは二の次だという説明をしてきました。今回のAIによる様々な支援機能が登場することで、画像などの見栄えを考えるのにあまり時間を費やす必要がなくなり、これからはますますコンテンツ勝負になってきます。

新しく登場する SharePoint スタートページは自分が作成したページがどのくらい見てもらえたかといった指標も表示されるようになります。しかもページ作成も Copilot があれば、内容づくり自体も支援してくれるわけで、よりタイムリーに情報も公開していけます。Viva Amplify と組み合わせれば、「いいね」などを押してくれた情報なども収集できるため、単に「見たかどうか」ではなく、公開した情報に対してどういう感情を抱いたかなども反応を把握できるわけです。そういう意味で、ユーザーに対しては、単に見たかどうかの未読既読確認ではなく、いいねなどを押してフィードバックする、他の人の情報を共有して情報を広げてもらうなどのユーザーを巻き込んだ情報の周知も大事になってくるのではないかと思います。

無論、「うちはリテラシーが、、、」という組織は山ほどあると思いますが(うちはリテラシーは高いので大丈夫という組織は、よほどのスタートアップ企業を除いてはほとんどないのでは?)、できない理由を考えるのではなく、中長期的な従業員エンゲージメントをしっかりと見据え、こうした仕組みをどう使っていけるかを考えていく体制づくりを着々と進めていければいいなと考えています。

先日の Microsoft Build 2024 で SharePoint サイト内の複数のファイルなどからカスタム Copilot を素早く作成できるようになることが発表されました。

これから紹介する機能が一通り利用できるようになるのは 2024年の夏ごろになるということで、現在、プライベートプレビューです。

📌プライベート プレビューのエントリー
https://aka.ms/TryCopilotsSharePoint

SharePoint をベースとした Copilot 登場の背景

SharePoint は多くのコンテンツが蓄積され続けています。コンテンツのリポジトリが増え続ける中、より正確な情報に基づいて回答を得たいと思ったときにどうすればよいのか。また知識をほかの人と共有するにはどうしたらよいか悩むところです。

これまでは何か仕事を行うために必要な情報を自らかき集めてくる必要がありました。ですが、AI の力を借りて素早く必要な情報を集め、私たちは自分の行うべき仕事に専念できるようになる。そんな未来を描きつつ、新たに登場するのが数クリックで「 SharePoint からのカスタム Copilot の作成」できる機能です。作成した Copilot は、Teams チャットやメールなどで他のユーザーと共有できます。

この記事について

Microsoft Build 2024のオープニング Keynote で Jeff Taper 氏がこのことについて話しています(1:07頃から)。

この記事では、Keynote と TechCommunityで発表された内容および Microsoft Build 2024 BKR144 の内容を日本語でまとめていきます。

各SharePointサイト (OneDrive含む) で利用できるビルトインの Copilot

SharePoint のサイト所有者はそのサイトのコンテンツを範囲とするビルトインの Copilotを有効化できるようになります。

Sharepoint_builtin_copilot

このビルトインの Copilot はサイト内の情報をもとに回答を生成してくれます。たとえば、マーケティングチームが新しい製品のラウンチに向けて資料などをSharePoint サイトに格納しているとします。そこには、デモビデオ、スペックシート、プレゼンテーション資料、プレスリリースなどが含まれています。このサイトの Copilot は「この製品のラウンチ日は最終決定したの?」などと尋ねるとこうしたサイト内の情報をもとに信頼性の高い回答を返してくれるのです。

ちなみに、Copilot は回答する際にそのサイトのコンテンツ内から情報を得ますが、ユーザーのアクセス権限に基づいて取得するため、ユーザーにとってはその人が閲覧可能な情報から回答が生成されるということです。

Copilot の既定のスコープはそのサイトです。ですが、この範囲を広げたいということもあるでしょう。サイトの所有者として Copilot をカスタマイズできます。 Microsoft Copilot Studio または Visual Studio で作成した Copilot をサイトの既定の Copilot として指定することもできます。

つまり、ビルトインの Copilot独自にカスタマイズする Copilot2つがある。この2つの違いについては Build の BRK144セッションの資料がわかりやすくまとまっています。

Integrating your bots and Copilot experiences natively into SharePoint and Viva | BRK144

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日本語にして少し加筆すると次のようになるでしょう。

harePoint サイトごとのCopilot 自分で選択したコンテンツから作成した カスタム Copilot
サイト用のビルトイン Copilot サイト用にカスタム Copilot を作成したもの
サイトのコンテンツが基盤で、すぐに利用を開始できる 自分で選択したコンテンツが基盤
カスタマイズ可能 左と同じ
Teams やメールなどを経由して Copilot を他のメンバーと共有できる。そのため同僚は同じナレッジベースを使って仕事ができ、リアルタイムにコラボレーションできる 左と同じ
自分のコンテンツのアクセス許可レベルはそのままで応答できる (各ユーザーにとって閲覧権限がなければ、その情報は使われない) 左と同じ
サイトの所有者は自サイトのCopilotを制御できる。 -

誰でも数クリックで SharePoint から Copilot (拡張) を作成できる

サイトの所有者やサイトの管理者だけでなく、サイトの編集権限を持つ人(サイトメンバーなど)であれば、数クリックでサイトの Copilot を作成できます。SharePoint からカスタムのCopilot を作成できるので、特定のプロジェクトなどの特定の目的の専用 Copilotを手軽に用意できます。

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次のスクリーンショットは Microsoft Build 2024のオープニング Keynote 内でのデモ画面です。配達ドローンのラウンチを行うサイトで、ライブラリ内の複数のファイルを選択してコマンドバーから「Create a copilot」をクリックしています。

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次の画面ではこれらのファイルが含まれているフォルダー名と同じ Final Maetrials Copilot という名前で Copilotが生成されるのがわかります。

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ということで、本当に数クリックで Copilot ができてしまいます。この画面からすぐに使う場合は「Try it」、編集する場合は「Edit」をクリックします。

このように作成することで SharePoint サイトの右側でカスタム Copilot がすぐに利用できます。

ちなみに、この Copilot のソースファイルも画面上のドキュメント ライブラリに作成されていることがわかります(ReleCloud_Delivery_Doron.copilot)。

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なお、 Copilot の右上の … をクリックすることで既存の Copilot の共有、編集が行えるだけでなく、新しいチャットを開始したり、チャット履歴を確認することもできます。

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Copilot の設定

SharePoint に Copilot が展開されると、サイトの設定メニューに「Site Copilot Settings (サイトのコパイロットの設定)」が新たに追加されます。

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この設定からこのサイト上でユーザーが利用できる Copilot を選択できます。既定の Copilot を指定するのではなく、複数利用可能な Copilot がある場合に、そのうちのどれをユーザーが利用できるかを決めるということです。

実際には次の図のように Copilot の切り替えができるようになるようです。20240524_201753

Copilot の共有

作成した Copilot は共有できるのですが、結局のところCopilot の共有とは、ライブラリ内に作成された*.copilot であり、このファイルの共有リンクを作成することですね。SharePoint ではおなじみの共有方法です。

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たとえば、この共有リンクは Microsoft Teams のチャットに貼り付けられます。追加するとメンバーもこの Copilot と対話できるようになります。20240524_190424

アクセス権はどうなる?

ビルトインの Copilot と同様に、カスタム Copilot は既存の SharePoint のアクセス許可レベルに従います。カスタム Copilot のファイル自体の共有は共有リンクで行いますが、コンテンツに関してはすでにアクセス権限を持っている必要があり過剰共有の問題はおきません。

Microsoft Copilot Studio との統合

Copilot for Microsoft 365 ユーザーは Copilot Studio の使用権を持っています。ですから、組織内での利用に関しては追加料金がかかることなく利用できます。

次の画面はMicrosoftが発行しているライセンスガイドの一部です(2024年4月のP19)。単体の Microsoft Copilot Studio のサブスクリプションと比較すると機能は限定的ですが社内利用に関してはほとんどの機能が利用できることがわかります。20240604_112802

基盤としてSharePoint 以外に拡張する必要がある場合は、 Copilot Studio からデータソースを追加できます (※現在、1,000種類以上のデータコネクターがある)。Copilot for Microsoft 365 であれば、Copilot Stduio 内でプレミアムコネクターやカスタムコネクターも利用できます。

既存の Copilot を Copilot Studio で編集するには Copilot の編集画面でSource タブまたは Behavior タブをクリックすると下部に表示される「Add advanced customiztion in Copilot Studio」をクリックします。

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画面上部に次のようなメッセージが表示されます。

Your SharePoint copilot extension is ready for editing. Once you choose Create, any additional edits to this copilot can only be made in Copilot Studio.

つまり、SharePoint copilot 拡張を編集する準備ができたので右上の「Create」ボタンが押せます。ただし、一度この Create ボタンを押せば、今後は Copilot Studio 内からしか編集できないようになるということです。

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Copilot Studio では編集にフル機能を使えます。20240526_151540

たとえば、ナレッジベースを追加する場合はDataverse データベースやパブリック Web サイトなども追加できます。これらは Copliot 用のコネクターを通じて行えます。

※ Copilot コネクターのプレビューへのアクセスは2024年6月より開始されます。20240526_102808

またアクションも追加できるようになっており、特定のコネクターのアクションの追加や新規フローの作成などもできるようになっています。一通りの設定が終わったあとは[Publish]ボタンから発行するだけです。

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Microsoft 365 Copilot アプリでの利用

Microsoft 365 の Copilot アプリでもカスタム Copilot として利用できます。この場合は、自分で作ったカスタム Copilot や自分に共有されている Copilot は、自分が最近使った Copilot 拡張の一つとして表示されます。

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最後に

ここまで、これから利用できるようになる SharePoint のサイトをベースにした Copilot やカスタム Copilot 作成について説明してきました。

SharePoint サイト内に共有されている情報を生成AIを使って有効に利活用できるようになります。従来のファイルサーバーでは格納される情報が増大するほど埋もれがちでしたが、Copilot と SharePoint の組み合わせで、SharePoint 内でユーザーが作成した様々なデータだけでなく外部のデータも組み合わせて有効活用できるというのは画期的だと思います。

いよいよ、新しいナレッジマネージメントの姿へと進んでいくという側面としてもとらえられそうです。