COVID-19 の影響も後押ししているようで、多くの組織で急激に Microsoft Teams の導入が進み、同時に Power Platform の人気もあり SharePoint を意識的に使い始めた人も増えているようです。Teams では SharePoint は切っても切り離せない関係にありますし、Power Platform と SharePoint を連携させる業務も多いため当然といえるでしょう。20年弱 SharePoint に携わり続けている私としては、かつてに比べて SharePoint の認知度が随分と上がっていて(それでも知らない方がもちろん多いんですが)、感慨深く思っています。
ちなみにTeams と SharePoint の関係性については昨年末に日経BP社より発行した拙著『ひと目で分かる Microsoft 365 SharePoint 運用管理編』で詳しく説明しています。気になる方はよければ一読してみてください。
さて、SharePoint には次の大きな柱の機能があります。
- ポータル機能
- ファイル管理
- 簡易データベース(Microsoft Lists)
タイトルにあるように、今回はこのうちのファイル管理について、私なりの見解を共有したいと思っています。とはいえ、実は2年前にもこの話をブログに書いていて、基本的な指針は変わっていません。未読の方は、ぜひ、過去の記事も一読してみてくださいね。
SharePoint Technical Notes : SharePoint でのファイル管理について考える (lekumo.biz)
とはいえ2年前の1月といえば、まだコロナ禍直前。状況がまた変わってきているため、今回は、前の記事を補足する形で書き進めます。
プラットフォーム化する SharePoint
現在、SharePoint 上でのファイル共有というのはMicrosoft 365 上でユーザーが意識することなく、いつの間にか利用するファイルがSharePoint で管理されているという状況になってきています。これはファイル管理の基盤 (プラットフォーム) として浸透してきているといっていいでしょう。これはオンプレミス(社内設置型)の SharePoint でそうなるだろうと予想されてきた流れではあります。
余談ですが、こうした状況はMicrosoft 社の開催する大規模な技術者向けのイベントなどでも伺えます。数多くあるセッションを見ても、タイトルにあえて SharePoint というキーワードは出されていないことが多くなっており、実際にセッションに参加すると説明の中では当たり前のように SharePoint が使われていたりするのです。
ですが、意識されないことが裏腹に抱える問題点にも注目しなければなりません。
ファイル サーバーの抱える課題と SharePoint
ちょうど先週末に Twitter で次のような発言をしたところ思いのほか共感いただいたようです。それもあって改めてこのブログを書こうと思うに至ったわけです。
SharePoint でファイル管理したいと考え、ついファイルサーバーと同じ理屈で管理しようとしてしまう。特にファイルサーバーからの移行を考えるととかくファイルサーバーで当たり前だと考えていた理屈をそのまま持ってきてしまいがちです。
もともと、 SharePoint Server 2010 (2010年にリリース) の導入時あたりからずっと懸念してきたことで、今に始まった話ではありません。Microsoft 社は Windows サーバーを持っており、多くの組織でファイルサーバーとして利用してきたわけです。ですが、皆さんによく考えてほしいのが、Windows ファイルサーバーと全く同じものを SharePoint という製品上に果たして実装するだろうか? ということです。
そもそも、ファイルサーバーが完全無欠で非の打ちどころがなかったのか? 課題があるはずではないのか? 課題があるのに「使い慣れているから」という理由で、情報共有を改善しようと真摯に向き合ってこなかったのではないか? 私自身、Microsoft 認定トレーナーとして Windows Server OS の研修に長年携わってきていましたので、共有方法、権限の管理方法などの基礎はしっかり把握できています。だからこそ、「Windows サーバーはこうなっているのに、SharePoint はどうしてこういう仕組みになっているんだろう」という疑問と好奇心からいろいろな観点で物を見られる。
無論、組織の規模や使い方によってはファイルサーバーと同じ使い方でなんら問題もないということもあるでしょう。ファイルサーバーを完全に否定しようという話ではありません。
ですが、やはり根本には立ち返りたい。
そもそも、ファイルサーバーが使われ始めたころ何が重視されたかを考えてみると、おそらく各自が紙で管理したり紙でなくとも個人がPC上で抱えてきた情報を収集し共有することだったはず。
そして、次の段階として考えるべきは「集めてきたのはいいけど、これをどうやって見やすくしようか、探しやすくさせようか」という話です。今この段階に来ています。
ということで、まずはよくある課題を色々と考えてみしまょう。
階層管理の限界
(2020年の記事でも書いていますが) 情報が一か所に集まることで今度は探しにくくなるため、ファイルサーバーでは分類する(小分けにするともいえる) ためにフォルダーを使って階層管理をするわけです。そこで多くの組織でとった方法が部署ごとにフォルダーを分けて階層化していくことです。とはいえ、部門が同じでも同じ業務をしているわけでもなく、他部門と共有すべき情報もあったりもします。そうなると、ひとによっては見ていいもの見てはいけないもの、編集できるものできないものなどが混在していく。さらにフォルダーを分けて階層化してというのが繰り返されていく。データが少なければ、まだ何とかなりますが、長年、多くの人が使っていれば、複雑な階層と権限構成になっていくのは火を見るより明らかです。
各フォルダーに個別の権限を細かく設定していくわけですが、たとえば、組織改編があるとそのたびに棚卸と再設定を行う必要がある。さらに、ユーザーはフォルダーへのショートカットを作って利用しているので、フォルダー名が後から変更できない。こっちのカテゴリのフォルダーにも関わりがあるし、あっちのカテゴリのフォルダーにも関わりがあるからと同じファイルをコピーして複数個所に置き、同じ目的のファイルのはずがそれぞれで更新されて、どれが正しいかよくわからない。思い思いに作成するので階層がとても深くなる。すると一覧性が損なわれるので、どこに何があるのかを作った本人しか把握できない。そんな状況が長年続くと、「このフォルダーって何に使っているんだろう」と深いフォルダー階層を辿っていってみたところ、ファイルが何も入っていなかったり、すでに退職した人が作成した使っていなさそうなファイルがあちこちにあったり。。。しかもバージョン管理するために、類似したファイルのコピーが複数出来上がり、ファイルの末尾に日付とともに最終版、最終版2などともはやどれが最新版かわからない。
これがよく言われるサイロ状態。
探すための手がかり
ファイルサーバーでの管理のそのほかの問題点としては、探す側は手がかりが少ないことです。探すときに頼りになるのは基本的にはフォルダー名とファイル名です。これだけの手がかりで膨大な情報量の中から、目的のファイルを見つけなくてはいけない。そのため、一度見つけたフォルダーやファイルを見失わないようにデスクトップ上に山のようにショートカットを作っていく。
ちなみに作った本人も探しにくくなるので、フォルダー階層をさらに作ったり、複雑な名前を付けたり。変更するたびにファイル名の末尾に日付を入れ、さらにはどこを変更したかという変更履歴のような情報もファイルに含まれているケースも見ます。
一覧できないことによる問題
階層化すること簡単にはファイルを全体を一覧できなくなるというも非常に問題です。フォルダーにしまわれているファイルを探すときに、どこに何が入っているかさっと確認できません。箪笥の引き出しを一つ一つ空けていくのと同じです。情報を探し出すのに手間取ったり、最悪、たどり着けない。
一覧できないと、実は検索にも影響します。どこに何があるのか分かっていなければ、キーワード検索するときに何を手かがりに検索していいかひらめきにくいものです。
ちなみに、SharePoint での検索に不満を抱いている人は比較的多いと思いますが、検索はある程度、情報の整理整頓やチューニングしないと欲しいものが見つかりません。チューニングというと、類似する情報をサイトごと、ライブラリごとにきちんとまとめるとかメタデータを活用するといったことをしっかりと踏まえていくことです。
「えっ、チューニングしないと使えないの?」と思う人もいるでしょうが、家の中だってある程度片付いていないと物は見つかりません。探したいものが人によっても異なりますし、魔法使いじゃあるまいし、そう都合よくはならない (いろんな人の要望をすべて満たすのは至難の業です)。いろんな人が雑多に情報を放り込んでいるわけですから、ある程度、検索しやすいように整理整頓しないと。もちろん、SharePoint で使われている検索エンジンに課題がないわけではありません。一般的に検索エンジンでは、日本語、中国語、タイ語など単語の間に空白を入れない言語圏は特に検索のときに、どこで単語を分かつべきかを判断させるのが難しいといわれています。ただ、この点については AI による学習がずいぶん進んできているので、ひとによって欲しい情報が優先的に見つかるように、改善は進んでいくと思います。
共有した情報は本当に相手に届いているのか?
そのほかにもこんな課題が。
A:「こういう情報がほしいんだけど。どこにありますか?」
B: 「ここに置いているんだからちゃんと見てください! 」
というやりとりもよくあります。情報提供側はきちんと共有しているのに肝心な相手に届いていない。見ていない人が悪いという理屈でいてはダメです。情報過多になっているのに、時間をかけて情報を探していられない。見つけやすくする工夫、届けやすくする工夫が必要です。だからと言って、メールで通知する方法をとることも多いのですが、メールが埋もれてしまう。発信者のタイミングで一方的に送られても来ます。本当はその情報が必要になるのは、人によってはもっと後かもしれない。それでも確実に読ませるために回覧板形式で未読既読を確認するという方法をとるもありますが、碌にに読んでいなくても既読にはできるので、そこまで効果的かどうかは疑問です。
情報を欲する側が適切なタイミングで、情報を見つけ出せるように一工夫欲しいところ。
SharePoint を生かしたファイル管理とは?
SharePoint では単なるファイル共有にとどまらず、バージョンを重ねるごとにドキュメント管理機能が強化されてきました。SharePointは特定の業種業態をターゲットにしているわけではなく、どんな分野においても汎用的に使える情報共有の仕組みとして利用できるように考えられています。ですから、従来通りのファイルサーバーと同じようなフォルダーによる仕分けもできますが、それ以外にも色々とファイルを見つけやすくする工夫ができるようになっている。これをうまく活用することが大切です。それと併せて、この際、権限管理を抜本的に見直したい。
より一歩進んだ効果的なファイル共有を目指すなら次のポイントを押さえておく必要があります。
✅フォルダーは極力利用せず、メタデータを利用して分類する
✅データの分類には AI を利用できることも知っておく
✅検索機能を使って、格納場所に制限されず様々な切り口で情報を収集できるように準備する
✅権限管理はシンプルさを保つ
メタデータを使うことで、情報を格納されている場所だけではなく、情報の性質も踏まえて分類できるようになります。メタデータとは、ファイル名以外に追加する情報のこと。ファイルサーバーの場合は、ファイル名、作成日、更新日、作成者、更新者など決まった属性情報がありますがメタデータを利用するというのはこれらに加え、ユーザーな好きな情報を追加できる。例えば、ファイルの説明、顧客名、製品名、プロジェクトコード、ファイルの分類、機密度など。こうした情報をファイル名以外に複数持たせることができるれば、柔軟に仕分けられるわけです。こうした情報は場所に縛られないので、任意のサイト、任意のライブラリで同じメタデータ持たせることができる。そうすると複数の場所に分散されている「提案書」なども検索機能を使って一覧できるようになります。Power Platform の AI Builder を使うことでコンテンツの自動判定も随分とできるようになっています。単に、コンテンツを「契約書」だとか「請求書」として判断するだけでなく、ファイルの中の情報を抽出してメタデータとして設定するところまで自動化できます。また、機密情報が含まれているかどうかは Microsoft 365 コンプライアンスを組み合わせることで自動判定もできるようになってきています。また、情報は増える一方です。細かい権限管理をしていては追いつかない。SharePointの場合は、なるべくサイト単位で管理が完結するのが望ましいです。ファイル単位ではなく。となるとどのようにサイトを分けるかを、かなり慎重に考えていく必要があるわけです。あとはメタデータはライブラリの列として実装していくため、メタデータの持たせ方でライブラリを仕分けていきます。
見つけやすくする工夫は拙著の書籍にも色々とヒントを書いています。
結局、フォルダー階層が作れるからといってファイルサーバーと同じ発想でいたら、課題もそのまま引きずります。そもそも「移行」という言葉は誤解を招くと私は考えており、新たな環境に「再構築」するという方が適していると思います。
そのためには、ユーザーに対してもSharePoint を導入するメリットとして「ファイルサーバーでこんな課題があるでしょ。これを何とか改善していこうと思います。例えば、こういった機能があるので使いたい。ぜひ、協力してほしい」という話を伝える努力も必要です。とはいえ、現場は色々と既存の使い方を変えたくない、新しいことを覚えたくないという気持ちが強いのも事実で(全員ではもちろんありませんが、総じて)、そういった方々には「現状であと20年、30年とこのままでいいと思っている? 後輩たちにこの環境を残していくのが本当に最善なの? 」ということを問いたい。自分たちだけ良ければ、それでいいのかということです。これを導くには、強力なリーダシップが必要で周囲のメンバーの理解、上長や経営層の理解など必要です。ですが、この辺りは地道に仲間を増やして改善に向けて進んでいくしかないと思います。
Word, Excel, PowerPoint のファイルの拡張子を最新版にしよう
現場を見ていると doc, xls, ppt などといった古い拡張子を使っているのをよく目にします。現在の最新の拡張子は、docx, xlsx, pptx など最後に x が付くものです。最新といっても、この拡張子は Office 2007 から導入されているので、もうかれこれ15年は経過しています。最新のファイルフォーマットにすることで、古い拡張子を利用するよりもファイルサイズも小さくなりますし、SharePoint 上でブラウザー表示したり、共同編集したければdocx, xlsx, pptxなどにしておかなくては恩恵が得られないことが多いので、見直しましょう。
バージョン管理の有効利用
よく目にするのがファイルサーバーと同様にファイル名の末尾に保存日を書いて、念のためにと複数ファイルを保管すること。これは自分だけが使っている OneDrive for Business 上ならまだしも、他の人に公開する場所にバックアップファイルを置くのはお勧めしません。どれが最新であるか、わかりません。検索結果にも類似するファイルが沢山表示されることになります。
SharePoint ではバージョン管理が自動でできるようになっているので、ファイル名はそのままに30分まえ、1日前などの状態に戻せます。ファイル名の末尾に日付を入れる必要がない。そもそも、自動保存をしていると日付も正しくないでしょうし確実性にも乏しい。バックアップ用の日付をファイル名に入れるのはやめましょう。
バージョン管理機能はうまく使えば、他のユーザーと不定期にファイルを更新していくような運用でも、2,3か月の間であれば、いつだれがどのあたりを変更したのかも確認できるようになっています。
なんでもファイルにしなくてはいけないという思い込み
これは研修でもよく話をするのですが、なんでもファイルにして管理しなくてはいけないわけではありません。
ファイルにするのが当たり前という発想でいる組織を見ていると、たった一行のコメントともにファイルが添付してあるニュースが投稿されていたりします。ですが、よく見ると直接ページに書いて共有するだけで事足りるのでは? と思うことも非常に多い。印刷して持ち出す必要がなければ SharePoint のページを使いましょう。今の SharePoint は以前と異なり、直感的にページを作成できます。画像やファイルもドラッグ&ドロップできます。
さらにページにしておけば、ファイルのようにメールに添付したり USB に落としたりということが簡単にはできません。悪意を持ってスクリーンショットを撮ったりするのはまた別の話で、あくまでも不用意に情報を外に出してしまうことが少なくなるという意味です。
権限管理とサイト、ライブラリとメタデータを使った分類
権限管理はシンプルなのが一番です。よく「柔軟に管理できます」という言葉を耳にしますが、細かい管理をすることが当然ととらえるべきではないでしょう。情報量はこれからも増え続けます。見通し良く、シンプルに管理できるようにサイト設計と運用を考えることが大切です。間違っても、フォルダーをたくさん作成して、そこに権限をどんどん設定していく運用は避けたいところ。サイトで分ける、ライブラリで分ける。この辺でまずは権限を管理できるようにして、フォルダーやファイルには直接権限を付与しないようにすること。これがうまくいかないのであれば、最初からサイト設計を見直す必要があるのかもしれません。
フォルダー作成はなるべく作らないこと。作るなら階層は1,2 階層程度まで。あとは、ライブラリにうまくメタデータを設定して運用していく。ライブラリに任意の列を追加するわけです。そうすると Excel のスプレッドシートのように複数の列の条件で絞り込めるので、分類も柔軟に行えます。フォルダーは属性という観点で見れば1つのみでありしかもファイルにべたっと従属するわけではないので移動してしまうと属性が途端に変わってしまいます。しかし、メタデータを活用するならフォルダー構造を意識することなく、複数の属性が設定できるのです。また属性は移動させても場所を問わずついて回ります。
ファイル管理をしっかり行いたい方は「コンテンツ タイプ」の概念は必ず学んでおくようにしてください。見積書、契約書、請求書だといったドキュメントの種類を仕分ける仕組みがコンテンツ タイプであり、これもメタデータの一種です。
[社内規程の例。"社内規程の分類" という列を追加している。この列でグループ化もできる。]
[メタデータを使って、ドキュメントをカード形式で表示している]
[用語セットを使えば、メタデータの階層化も可能]
[Power Automate, Office Scripts を組み合わせて Excel ファイルの内容を自動的に抽出して列の値として設定することもできる]
検索の仕組みを利用する
検索の仕組みは単にキーワードを入力してファイルを見つけ出すことだけではありません。ニュースWebパーツ、イベントWebパーツ、サイトWebパーツ、強調表示されたコンテンツ Webパーツなども検索機能を使って異なるサイトの情報を集約できるようになっています。できるだけ、サイト単位での権限で運用できるようになっていれば、最小限の管理だけでユーザーに対して参照していい情報だけを見せることができます。検索の仕組みを利用するときには必ずユーザーの閲覧権限は確認されるため、権限を適切に設定していれば検索結果でも不必要に情報が公開されることはありません。
つまり、フォルダーで仕分けなくても、必要なタグが付いていればどこに格納していてもいろいろな切り口で収集できるのです。
Microsoft 365 コンプライアンス
ファイルを共有するだけではなく、ファイルごとに機密性を判別し、個人情報や銀行の口座番号などが含まれるファイルがないかどうか捜索、外部に漏れないように保護したりするには Microsoft 365 コンプライアンス機能を利用できます。SharePoint 上でのアクセス権限管理と組み合わせて利用します。情報の暗号化、保持期限の設定なども Microsoft 365 コンプライアンスの仕組みで対応できます。他にも、ライセンスによっては社内のコンプライアンスに則り、ハラスメントなど含んだ情報がないかもチェックすることもできます。
SharePoint でのファイル管理を行うなら、権限管理、メタデータ、検索に続いてMicrosoft 365 コンプライアンスも学んでおくとよいでしょう。コンプライアンス機能を利用する場合もメタデータと検索の知識が必要になることがあります。
AI とドキュメント管理
これをさらに推し進め、現在は SharePoint Syntex (シンテックス)という名前で AI を組み合わせた高度なコンテンツ管理ができるようになってきています。
Microsoft SharePoint Syntex の概要 | Microsoft Docs
この機能は Power Platform で提供される AI Builder などを組み合わせることで事前に構築された機械学習モデルを使って、ドキュメントが格納されたら内容を解析し、分類し(コンテンツ タイプの割り当て)、内容からメタデータを抽出してプロパティにセットするところまで自動的に行ってくれます。メタデータを設定するときに課題になるのが、設定するのが面倒だということ。こうした問題を少しでも解決できます。
特に分類については、秘密度ラベルや保持ラベルも同時に設定してくれるので、契約書を自動的に社外秘扱いで管理できるようになったり、削除期限が自動適用されたりするのです。
今年に入ってからアップデートで追加されたのが、コンテンツ アセンブリ機能。これにより、既存のデータを使って新しくファイルを生成しようというものです。共有されているデータは有効活用するために再利用しよう。例えば、Word で契約書のひな型を作り、そこに既存の顧客データなどを流し込み新しいデータを生成するという仕組みです。現時点では、ひな型に流し込めるデータは新規作成時に手入力するか、SharePointリストのデータを利用できますが、近く外部データもサポートする予定があるそうです。
SharePoint Syntex のモダンテンプレート機能 (ファイル管理機能) (lekumo.biz)
ドキュメントをただ共有するのではなく、解析し有効活用できるように仕分け、データ抽出、再利用までを考えているこうした仕組みはファイルサーバーだけで管理していた時代と比較すると隔世の感があります。
※まだ、主な対応言語は英語だけですが (2022年4月現在)、日本語対応も少しずつ進んできています。
SharePoint Syntex に関しては以前、「.NET ラボ勉強会」でこの内容で登壇させていただきました。関連ブログは下記をご覧ください。
[.NETラボ勉強会] SharePoint Syntex についてのセッション録画および資料公開 (lekumo.biz)
また、今年の Microsoft 365 Virtual Marathon 2022 でも「SharePoint Syntex を使ったドキュメント管理」というそのものずばりの内容で登壇予定です。オンラインのイベントで参加費は無料です。ぜひ、ご参加ください。
Microsoft 365 Virtual Marathon 2022 - 今年も開催します! (lekumo.biz)
組織としての取り組み方について思うこと
ここまで個人的な見解ではありますが、SharePoint を生かしたファイル管理がどういうものなのかを手短に(とはいえ長いですが) 説明してきました。
難しいなと感じたかもしれませんが、色々と取り組み方があることを紹介したかっただけで、必ずしもすべてを使い切ることが使いこなすことではありません。目標を掲げ、どの手段、ツールを使えばそこに近づけるか、もしくは到達できるか言う話です。組織によって目標値は異なるはずですが、近い将来だけみているのと、中長期的な将来を見据えて今を考えるのとでは意味合いが大きく異なってきます。
また、従業員の多くは変化を好みません。組織には「イノベーションが大切だ!」とずいぶん前から言われてきていますが、いつも言われるように大きな変革には痛みを伴います。抵抗勢力も多い。そこを納得してもらいながら進めていくのは大変な労力です。そのため、「使い勝手を大きく変えたらユーザーがびっくりする」とか「うちの従業員はリテラシーが低いから、こういう操作はできない」とか「そもそも、経営層から理解が得られない」などいろいろあるでしょう。
本気で取り組む必要があるかどうかは最終的には組織の判断です。もし、改善する気持ちがあるなら生半可な気持ちでは結局何も進みません。従業員のリテラシーの低さを嘆いて守りに入っていてもいつまでも改善はされません。少しずつでも、できるところから使ってみて、とにかくやってみること。子育てと同じで経験させないと人は育ちません。日ごろから課題意識が強く、情報のアンテナをたくさん持っている人や、特に新卒採用の人などは新しいシステムに抵抗があまりないものです。どう取り組もうか、という好奇心が勝る。こうした人たちを組織は大事にし、原動力として少しずつでも改革が進められればと願ってやみません。
また、現在までの課題を洗い出し、どう改善をしていくかを考えるのは IT部門の人だけの仕事ではありませんし、外部の人に丸投げすべき仕事でもありません。現場のユーザーの方が主役であるはずです。現状維持ではなく、もっと改善できるはずという思いを持ってほしい。そしてIT部門はそこに知恵を貸し、時には手を貸す存在であってほしい。おんぶにだっこではなく。
自分の所属する組織です。自分たちの手で良くしなくては! そして、組織は業務効率を上げていこうと努力する人たちをしっかりと支えていくべきで、そうした優れた人材を組織に長く定着させることが大切だと思うのです。
そうあってほしいと望みます。
関連コース
弊社で実施しているオリジナル研修も掲載しておきます。自分だけで学ぶのは大変だと感じたら、是非こうした研修も活用してみてください