Micorosoft Loop アプリのパブリックプレビューが公開されたあと有志による勉強会を行いました。その時の内容は下記の記事からも参照できます。
Microsoft Loop Public Preview の勉強会開催
この時に私が色々と調べてみた結果「どうも Microsoft Loop アプリは特殊な SharePoint サイトの上に構築されているようだ」と述べたのですが正しくはありませんでした。正確にはSharePointサイトではなく、Microsoft Syntex repository services (リポジトリ サービス) に構築されていることがわかりました。このサービスは5月末の Microsoft Build 2023 で発表され、その時に明らかになったのです。
このブログでも Microsoft Syntex についてはたびたび取り上げていますが、簡単に Syntex について説明しましょう。Microsoft Syntex はもともとは SharePoint Syntex と呼ばれていましたが、2022年に開催された Microsoft Ignite 2022 で Microsoft Syntex と名前が変わりました。従来は AI を使った高度なドキュメント管理に特化していたのですが、新たな “Syntex” ブランドではより包括的なソリューションとなり、組織内の高度なコンテンツ管理に関わる機能を提供する仕組みになっています。
Syntex リポジトリサービスとは?
※2023年7月6日現在、プライベートプレビューです。そのためまだ広くには公開されてはいません。
基本的には開発者向けのサービスですが、冒頭でも紹介した通りMicrosoft Loop もこの仕組みを使っているため Loop に興味のある方はぜひとも押さえておきたいところ。このサービスは名前通りファイルのリポジトリ(保管場所)を提供するものです。アプリ開発者にとって、ファイルを取り扱う場合にリポジトリをどうするのかというのを考えなくてはいけません。単に保管するだけではなくバージョン管理するとか検索させるとか、セキュリティはどう担保するかなど考えることが多くあるわけです。
そこで既存のノウハウをより広く活用できるようにしようという話がでてくるのです。Microsoft 365 では、SharePoint が20年以上培ってきた多くの機能を持っています。Syntex リポジトリ サービスはこの Microsoft 365 のコンテンツ管理機能を自前で作成するアプリのバックエンドとして利用できるようにしようというもの (PaaS)。このサービスを使えば単なるファイルストレージではなく、次のような機能を自前で開発していかなくてもそのまま流用できるのです。
- バージョン管理
- 同時編集
- 共有
- 検索
- セキュリティ (アクセス権限)
- コンプライアンス対応 など
SharePoint の歴史をさかのぼると、こうした SharePoint が標準で持っているポテンシャルを生かすために SharePoint 上で拡張機能としてアプリを作りこもうとしてきた時期があります。ですが、欲しい機能以外に SharePoint としてのUX 上の制約も色々と受けてしまうことも少なくありませんでした。しかし、この Sytnex リポジトリ サービスを利用することで Teams や SharePoint のユーザーエクスペリエンス(UX)の制約にとらわれることなく、自由にUX を設計できるようになります。
次の図は Syntex リポジトリサービスの位置づけを示すものです。Microsoft Designer や Microsoft Loop が PaaSとしてこのサービスを使っていることがわかります。Loop アプリが出てきた当初は、特殊な SharePoint サイト上にアプリが構築されていると思っていたのですが、このサービスの発表によりそうではなくリポジトリサービスを使っていたことがわかりました。
Syntex リポジトリサービスがもたらすメリット
エンタープライズ アプリと ISV アプリのどちらも、Microsoft 365 の信頼境界の内側に構築することになります。ISVは、独自のリポジトリソリューションをいちから構築するのではなく、顧客の個々のMicrosoft 365テナント内でファイルやドキュメントを管理できます。
SharePoint が提供する Microsoft 365 のコンテンツ管理機能をアプリに組み込めます。Syntex リポジトリ サービスには、バージョン管理、きめ細かなアクセス許可、ごみ箱、検索、サムネイル、共有などの機能が含まれています。
高度な Microsoft 365 セキュリティとコンプライアンス対応を独自のアプリにも適用できます。 Microsoft Purview 機能が提供する監査、eDiscovery、データ損失防止 (DLP)、機密ラベル、保持ラベル、暗号化制御などが利用できるということです。
アプリの一部として、顧客、ユーザー、ゲストユーザーの間で Office ドキュメントが持つ Microsoft 365 リッチコラボレーションを利用できます。Syntex リポジトリサービスを利用したアプリには、プレゼンスインジケータ、コメントでの @ メンションによる注目の喚起と文書共有の促進、リアルタイムの共同執筆などの機能も含まれます。
利用例
すでに先行していくつかのベンダーが Syntex リポジトリサービスを使ったアプリを構築しているそうです。概略をピックアップしておきます。
AvePoint社
Modern Work Solutions 社のパートナーである AvePoint 社は、Microsoft Syntex リポジトリサービスを中心に設計された AvePoint Confide アプリの新バージョンを構築
Peppermint Technology社
法律事務所管理ソフトウェアのグローバルプロバイダーであるPeppermint Technologyは、SyntexのリポジトリサービスをPeppermint CX365と統合し、包括的な文書・記録管理システムを共同顧客のMicrosoft 365テナントに提供します。
Bentley Systems社
インフラストラクチャー・エンジニアリング・ソフトウェア会社であるBentley Systems, Incorporatedは、Microsoft Syntexリポジトリサービスを活用してBentley Infrastructure Cloudを強化し、重要なファイルベースの共同オーサリングワークフローをサポートするとともに、ITによる導入障壁を取り除くことに努めています。
関連情報
詳しくは Microsoft 社の公開している次の資料を参照してください。
Introducing Syntex repository services: Microsoft 365 superpowers for your app