Microsoft Ignite 2024 の数多くあるセッションの中から下記の内容について、デモ内容を中心に主要なポイントを一部抜粋しつつ整理しておきたいと思います。45分ビデオを見てる時間がない方も、ざっと把握できるはずです。
[この記事のもととなる Microsoft Ingite のセッション情報]
- タイトル: Reimagine content management with agents in SharePoint
- セッションID: BRK279
- 時間:45分
SharePoint は Microsoft 365 の各サービスのコンテンツ管理の中核を担っているというところから話が始まります。
セッション冒頭ではコンテンツの増大をうまく印象付けるために、マジックナンバーの "2" をうまく利用していきます。
現在、毎日、20億を超えるドキュメントが新規ファイルとして SharePoint に格納されています(更新されたファイルは含みません)。
2022年に書いた記事を確認すると、2年前で16億ドキュメントが新規に追加されていたと書いています。この当時で5年の10倍に増えており、さらにそこから2年経過した今年は4億ドキュメントに増えているわけです。
そしてSharePointを通じて実行されるフローの数が週当たり 20億あります。自動化する際のコンテンツの基盤としての利用率の高さがわかります。そして、毎日 200万サイトが新規に作成されているとのこと。
コンテンツは減ることはなく増大し続けており、コンテンツ管理を10~20年前くらいの感覚で管理することは非合理的になってきていることが暗に示されています。新しい仕組みへのシフトが急務でしょう。
さて、SharePoint は業務において次の3つのユースケースがあり、ここに対して Copilot が効果的に寄与することになります。
- Boost Collaboration (コラボレーションの促進)
- Enhance Automation (自動化の強化)
- Elevate Communication (コミュニケーションの向上)
Collaboration
Copilot Agents in SharePoint
次の図はSharePoint の Copilot エージェントのコンセプトの説明です。 SharePoint のCopilot エージェントはSharePoint 内の既存コンテンツをもとにLLMを用いて情報を得ることができ、手軽に会話の中にエージェントを持ち込めるのが利点であり、ビジネストランスフォーメーションをもたらす。AIを駆使した洞察と実行可能性により、より良いビジネス上の意思決定を行い、組織を変革し、真のビジネス成果を導けるということです。
ちなみに、セッション内ではSharePoint エージェントの導入事例としては イートン社が登場しました。
イートン・エレクトリック・ジャパン-世界規格取得済の電気制御保護管理ソリューション
セッション内のほとんどは Copilot エージェントの作成方法や使い方についての説明です。
SharePoint の Copilot エージェントですが、Ignite の初日に GA が発表されました。Microsoft 365 Copilot のライセンスがあるユーザーなら利用可能であり、私が利用しているテナントでも数週間前から利用できるようになっています。
サイト単位で Out-of-box で利用できるエージェントが用意されています。エージェントの名前はサイト名と同一です。Microsoft 365 のスイートバーに Copilot のアイコンが表示されるのでそれをクリックするだけです。情報の取得範囲は当該サイト内のファイルやページです。
画面右側に表示される Copilot エージェントのウィンドウですが、上部の Copiot 名をクリックすると Approved for this site と Reccomended for you の2つのセクションがあります。Approved for this site はこのサイト用に承認されたエージェントであり、このサイトを訪れるすべてのユーザーが共通して利用できます。独自にエージェントを作成することができますが、独自に作成したエージェントをサイトの所有者やサイト管理者が承認すれば、このセクションに複数のエージェントが表示されることとなりサイト内で共有利用できるようになるわけです。Reccomended for you セクションはユーザー自身が最近作成したりユーザーに共有されたエージェントが一覧表示されます。
ライブラリ内の特定のファイルを選択した状態でCopilot に質問するとそのファイルをもとに答えてくれます。
サイト全体をグラウンディングするエージェントだけでなく特定のファイル群やフォルダー、ライブラリを単位でグラウンディングするエージェントも独自に作成できます。デモでは特定のフォルダーを選択してから「Create an agent」メニューをクリックするとすぐに独自のエージェントが作成できます。
エージェントは既定ではフォルダー名と同じ名前で作成されます。
エージェントは作成後に編集することができます(ただし、サイトに用意されているOut-of-boxのエージェントはカスタマイズ不可)。
エージェントの名前やアイコン、説明を変更できます。
Sources タブでは、すでに先ほどエージェント作成時に指定したフォルダーが追加されています。
つまりこのエージェントからの回答にこのフォルダー内の情報がもととなるということです。またフォルダー内に新たにファイルが追加されたり変更された場合もすぐに反映されます。エージェントはユーザーがコンテンツに対する適切なアクセス権を持っているか常に確認しています。そのため、コンテンツオーナーはエージェントを利用するユーザーがソースに対して適切なアクセス権を付与することを忘れずに管理する必要があるわけです。
さらに、このエージェントに別のサイトのURL、ライブラリ、フォルダーやファイルを追加することもできます。
Behavior タブではユーザーがこのエージェントを使って何をしたらいいのかを適切に誘導するよう指定できます。エージェントで何ができるのかについての説明を書いたり、最初に表示されるプロンプトを独自に用意したりできます。
画面右側ではそのままプロンプトを試せます。
エージェントを作成するとライブラリ内ですぐに利用できるように右側のウィンドウに表示されます。先ほど編集したエージェントの説明やスタートプロンプトなどが反映されているのがわかります。また、エージェントの実態は .agent という拡張子のファイルで、例えば今回はドキュメント ライブラリからエージェントを作成したのでここにファイルが作成されています。
.agentファイルはダウンロード可能です。中身はJSONであり、メモ帳などで開けます。中にはconversationStarterList プロパティやgtpDefinition プロパティなどが書かれているのがわかります。
SharePoint 内で .agent ファイルを開くと SharePoint のビューアー内で開き、そのままCopilotにプロンプトを入力できます。
またこのファイルは他のファイルと同様に SharePoint でバージョン管理されています。
作成したエージェントはサイトの所有者や管理者は Approved に指定できます。これによりこのサイトを訪れた他のユーザーも利用できるようになります。
画面をリフレッシュすると Approved セクションに移動していることがわかります。
また作成したエージェントをサイトの既定のエージェントに指定することもできます。
作成したエージェントは Teams でも共有できます。まずエージェントの共有リンクをコピーします。
このリンクをグループチャットで共有します。エージェントがカードで表示されるので、カード内の「Add to this chat」をクリックします。これでチャット内でエージェントが素早く利用できるようにになります。
この Copilot を会話内で呼び出す場合は @でメンションします。
あとはプロンプトを続けるだけです。
このチャットグループに新しいメンバーである Adele を追加します。すると、先ほどと同じ内容を Copilot に指示しているのですが、表示されるメッセージが異なります。内容はチャット内のメンバーの一部がソースにアクセスできないので情報をシェアする前に Copilot 自身の返信内容を確認してほしいというものです。
View response をクリックして内容を確認します。返信に利用されているファイルもリストアップされ秘密度ラベルの適用状況も確認できるようになっています。画面最下部には "24時間以内は、これらのファイルをもとにした回答に関してはダイアログを表示させないようにする"ためのチェックボックスが用意されており、毎回、このメッセージが表示されることを抑制できるようになっています。
問題なければ Send をクリックします。
作ったエージェントファイルは OneDrive (Business) のホームにある最近使ったファイル一覧にも表示されます。プレビューから直接利用できます。
近く、OneDrive 内からもエージェントが作成できるようになる予定です。
SharePoint のコンテンツ ガバナンス
セッション内ではコンテンツガバナンスにも触れられていましたが、監査、電子情報開示、マルチGEO、多要素認証、情報バリア、秘密度ラベルと情報の保護など細かいアクセス制御といったガバナンス領域もAIが対応できるようになってきているという話でCopilot Securiy に少し言及した程度です。
初日のキーノートでも説明があったようにAI ガバナンスをSharePoint に投入することを非常に重視しているとのこと。
このセッションで SharePoint Premium の SharePoint Advanced Management について詳細に触れられるのかなと期待していたのですが、具体的な話はほとんどありませんでした。その代わり、過剰共有を見つけるための2つの協力なツールとして Microsoft 365 Copilot は SharePoint Advanced Management と Microsoft Puview を利用しようという話でした。
[参考] 弊社の研修
弊社でもこのあたりの動きは見越しており、 すでにPurview に関しては Copilot を利用する上で欠かせない基礎知識を習得できる研修を弊社で提供しておりますし、SharePoint Advanced Managment を含む SharePoint 管理者向けの新コースを来年リリースします。よかったらこれらのコースもどうぞ。
- Microsoft Purview コンプライアンス入門~Microsoft 365 ファイルおよびメールに対する機密情報保護と情報ガバナンス~
- Microsoft 365 SharePoint の構成と管理 ~Microsoft 365 Copilot 対応~
プロモーション期間
より多くの人にエージェント機能を体験してもらえるように2024年12月1日~2025年6月30日までの期間、Microsoft 365 Copilot のライセンスを少なくとも 50持っていれば組織内の誰でも SharePoint のエージェントを作成し共有し、対話できるようになります。当該する組織は毎月10,000クエリのクレジットを享受でき、クレジットは各月の1日に更新されるそうです。
Automation
オートメーションの話としては、まず SharePoint Copilot エージェントは Copilot Studio で高度にカスタマイズできるということが説明されました。
また、SharePoint Premium で利用できるオートフィルの機能が説明されています。
オートフィルは去年のIgnite で発表され、今年利用できるようになりました。
SharePoint Technical Notes : Microsoft SharePoint Premium の発表
余談ですが、日本語の正式サポートはされていないようですが実際私の環境では使えるので使っています。日本語でも基本的には問題なさそうで、ドキュメントの概要や製品コードの抽出などに使っています。
また次の四半期で登場するライブラリに搭載される承認機能についてデモしていました。現時点でリストに追加できる承認機能をドキュメント ライブラリでも利用できるようになります。
ちなみに、リスト搭載の承認機能や Teams の承認アプリを使った承認の作成などについても弊社の Power Automate 入門コースで一連の情報として説明しています。
【オフィスアイ株式会社】Microsoft 365 - Power Automate 入門
他には Teams 内で利用できる契約書管理に特化した「Agreements」アプリを紹介していましたが、このアプリは現在、英語のみのサポートであり中で利用できる e-Signature も日本では今のところ利用できないので、これについては割愛します。
Communication
SharePoint のオーサリング機能
去年の Ignite 以降、SharePoint のオーサリング機能には数多く、同時編集やデザインアイディア、ヘッダー領域のオプション化、ブランドセンターなどの新機能が搭載されました。ちなみに、今年の5月に最新アップデート情報が公開されたので、その時の内容は下記のブログにまとめています。
SharePoint Technical Notes : SharePoint の最新アップデート情報 (2024年5月)
Copliot によるページ作成
現在、SharePoint ページのテキストWebパーツでは Copilot のリライト機能が利用できますが、ページ自体を作成する機能はありません。ここに新たにページ作成の機能も加わってきます。新規メニューに「Page with Copilot (Preview)」がありこれをクリックするとCopilotに支援してもらいつつページを自動生成できます。
通常のページ作成と同様にテンプレートを選択します。デモでは News letter を選んでいました。
テンプレートを選ぶと定型フォーマットが用意されており、タイトルやセクションの情報などを入力できるようになっています。
必要に応じてファイルも追加できます。Word のみのようですね。
これをもとに Create page ボタンをクリックすると画像も含めて自動的にページが生成されます。
フレックス レイアウト
以前のイベントでもフレックス レイアウトの導入には触れられていましたが、今回は一応動いているところをデモで見ることができました。画像や文字の配置が従来よりも柔軟に行えます。
またこれに応じて新しいセクションテンプレートが用意されているようです。
Viva Amplify
SharePoint の新しいオーサリング機能が利用できるようになったことくらいで新機能はほぼなく、目新しいところとしてはいよいよ Viva Engage も発信先チャネルとして選択できるようになるのかなというところですね。デモ画面では選択できていたのですけど、手元の環境ではまだ利用できるようにはなっていません。
以上です。
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