2025年10月

2025年10月27日 (月)

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Copilot Studio にはエージェント フローという機能が用意されています。ベースは Power Automate で作成されているので基本的には Power Automate と似ているのですが、高度な承認フローが使えるなど機能面でも異なる点がいろいろとあります。

ですが、そもそも Power Automateがすでにあるのに類似するフロー作成ツールとしてエージェント フローが登場することになったのか? という疑問がわきます。これには経緯があります。

これまで Power Automate の Premium コネクターを使う場合は基本的にはそのフローを使うユーザーごとに Premium ライセンスが必要でした。が、Copilot Studio のエージェントには Premium コネクターの利用権が含まれているため、追加で Pwoer Automate Premium のライセンスを必ずしも購入する必要はないわけです。

特に Microsoft 365 Copilot 有償版ライセンスを持つユーザーは一般的な業務利用の場合はフェアユース規制が設けられており、基本的には追加料金なくこうしたコネクターも使えます。ただエージェント フローの中でも一部の機能はフェアユースにはなっておらず、Copilot クレジットや AI Builder のを消費するものもあり、ライセンス体系は少々複雑です。

詳しくは Microsoftの資料で確認してください。

Copilot クレジット制ライセンス | Microsoft Learn

Human in the Loop: Multistage approval (多段階承認)

さてこのエージェントフロー内で注目したいのが、「Human in the loop」というコネクターです。

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現在、Power Automate にある承認機能は、従来は「承認」コネクターと呼ばれていたのが、今年に入ってから急に「Standard Approval」コネクターという名称に変わりました。つまり、Power Automate で提供される承認機能は標準的なものであり、より高度な承認機能はエージェント フローの Human in the loop というコネクターが持つよ、ということです。

Human in the loop とは、生成AIで用いられる概念であり、「完全な自動化ではなく人間の判断や介入を意図的に組み込む設計思想のこと」を指します。つまり、今回の話では承認にAIによるものと人によるものがくわわるというニュアンスですね。

このコネクター自体まだプレビューですが、ここに含まれるアクションの一つが「Run a multistage approval(preview)」です。要は多段階承認の仕組みですね。

このアクションでは次の3つの要素を利用できます。

  • 手動での承認ステージ
  • AI承認ステージ
  • 条件または条件による承認

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AI ステージは興味深く、人が判断するだけでなく、AIによる自動承認が可能になるというこのが画期的なところです。ちなみに、AI承認ステージはプロンプトを使って承認を判定するのですが、Copilot クレジットを必ず消費するので注意してください。

さて、このAI承認ステージなどの仕組みですが、まだプレビューというともあり、使い方についてあまり詳しい情報がありません。

基本的には次の公式情報を手掛かりに探ることになります。

ということで、いろいろと承認を試したのですが、今のところいろいろと"クセ" があるようなので、試行錯誤したところを箇条書きでまとめておきますね。

自分も試してみようとする方の参考になれば。ただし、あくまでも 2025年10月26日ごろに試した話でプレビューですし状況は変わるでしょうから、あくまで備忘録です。

1. 条件ステージの分岐先が未設定で Bad Gateway エラー

条件ステージで True または False の分岐先ステージが設定されていない場合、フローが停止し Bad Gateway エラーになります。UI上で「承認で終了」などが選択できるように見えても、実際には AI ステージまたは手動ステージを明示的に接続する必要があります。ただ、Microsoft Learn を読むと分岐でも承認判断ができるはずなので、現時点の不具合なのかもしれません。

2. 条件ステージは最初に配置できない

Copilot Studioでは、条件ステージをフローの最初に配置することはできません。金額によって AI か手動かを分岐したい場合は、AI ステージで判定を行う設計にする必要があります。

3. AI ステージの 'Rejected' 出力がフロー結果に確定される

先にAI ステージで 'Rejected' と出力すると、後続に手動ステージがあって、そこで "Approved" にしても最終結果が 'Rejected' になるようです。これは仕様に近いのですが、実質的にはバグ的にも思います。最終的に人が判断した内容で上書きしたいですからね。

今のところ、仕方がないので、AIステージでは判断できないため、最終的な人の判断を優先するようにしたければ、あえで AI ステージでエラーを出すようにしてエラー時の進み先のステージを手動承認ステージにしておくと、承認ステータスが決まらずに進められるため最終的な人の判断が優先されます。

4. 手動ステージで承認・却下ボタンが押せない

AI ステージで次ステージを明示すると、手動ステージが表示されても操作できないことがあります。「続行」設定にすることで、手動ステージが有効になります。

5. AI ステージの変数は必ずテキスト型で渡す

AI ステージに数値型や Boolean 型の変数を渡すと、暗黙的な型変換は行われず Bad Gateway エラーになります。必ず string() などで明示的にテキスト型に変換して渡す必要があります。

6. 手動ステージの後の分岐は明示できない

手動ステージでは承認・却下後の分岐先を明示的に指定することはできません。次のステージが存在すれば、自動的に続行されると考える必要があります。

7. 英語表記の重要性

Teams の承認アプリでは、日本語の文字列が文字化けすることがあるため、承認タスクのタイトルや説明文、AI ステージの出力は英語で記述するのが安全です。そもそもプレビューですし、英語前提でょうから変数名なども英語の方が無難なようです。

日本語で変数名を指定すると、一度作成した変数名が消えてくれなくて、どんどん増えていったりして、仕方がないのでいったん Multistage approval のアクションを削除して作り直したりしました。

と、とりあえず、覚えている範囲でのメモを共有しておきます。これを読んだだけだとわからないと思いますが、実際に構成してみるといくつかは参考になるのでは? 

最後にコース宣伝!

2025年11月より Copilot Studio の入門コースを弊社で開催を始めます。生成AIの基本から、応用利用まで深く学べる2日になっているので、よかったらご参加ください。

そもそもこのコース用のデモを作っていてハマっていたんですよ。。。

【オフィスアイ株式会社】Microsoft 365 Copilot ユーザーのためのCopilot Studioで始めるAIエージェント開発入門

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2026年1月にはMicrosoft は PowerPoint からスライドの再利用の機能を Windows および Mac のデスクトップ版から廃止されことになりました。以降はこの機能は使えなくなります。

この変更はPowerPoint の体験をシンプルにして、既存の機能と重複する機能を取り除くためのものだそうです。おそらくは生成AIによるスライドの再利用という方向性にいくんでしょう。

そういえば、この「スライドの再利用」の機能は PowerPoint としての機能なのですが、その昔、オンプレミスのSharePoint には「スライド ライブラリ」というスライドを組織で再利用するための専用のドキュメント ライブラリがあったんですよ。ただ、コンセプトは良いのだけれど機能的には使いにくくて(スライドを探しにくかったり、プレビューがしにくかったり) で、わりとすぐに廃止になったんです。

こうしてみてくると、いつでもMicrosoftはいかに情報を再利用できするか試行錯誤してきていて、今回の PowerPoint のスライドの再利用も生成AIを使った方向性に舵を切るために行った決断だろうと思いますね。

📅ロールアウト

この機能の廃止は2025年12月には開始し、2026年1月中に完了します。

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2025年10月21日 (火)

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Microsoft は欧州委員会(European Commission)と合意に達し、2025年11月1日からMicrosoft 365 E3 およびE5に Microsoft Teams を含めたバンドルでの販売できるようになったそうです。

Evolving our productivity offerings to resolve Microsoft Teams concerns| Microsoft 365 Blog

ちなみに、欧州委員会は EU(欧州連合)の執行機関であり、法律の提案や監視を行う機関です。この機関が加盟国の利益を代表して独占禁止法などの競争政策を監督し、企業の合併や市場支配に対して調査および是正を行います。

Teams がバンドルされなくなった背景

ことの発端は、2020年にSlack が欧州委員会に対して Microsoft を提訴したことに始まります。

Slack は「Microsoft が Teams を Office 365 にバンドルして提供することで、不公平な競争をしている」と主張。

その後、欧州委員会は 2023年7月に正式な調査を開始します。Microsoft はこの懸念に対応するために欧州経済領域(EEA)およびスイスで Microsoft Teams を Microsoft 365 から分離することを決定しました。ちなみに、スイスはEU加盟国ではないもののEUと包括的な二国間協定を結んでおり、EUの市場とは密接に連携しているためこうした対応になったようです。

さらに余談ですが、欧州経済領域(EEA)は、EU加盟国とEFTA(欧州自由貿易連合)の加盟国の一部(ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)で構成されています。

ライセンス体系の変更

今回の合意を受けて、ライセンス体系が次のように変わります。

  • Teams を含むプラン/Teamsを含まないプランを世界中で選択可能になる

  • Teams を含むプランと含まないプランの価格差を明確化することで競争の公平性を確保

  • Teams単体の価格も最低価格を設定し、バンドル版より安くならないように調整

最後に Teams 単体の最低価格をバンドル版より安くしない理由としては、例えばバンドル版を購入して Teams を外し、単体で安く買うということが可能になるような価格回避の抜け穴を防ぐためです。分離したライセンスをMicrosoft は出したものの、実際には Teams を安く入手できる

たとえば、次のようなケースを考え見ましょう。仮にTeams 単体が$6.00だとして、バンドル版より安いとします。

  • Microsoft 365 E3 (Teams あり) … $38.00 (約5,700円)

  • Microsoft 365 E3 (Teams なし) … $29.45 (約4,420円)

この場合は価格差は$6.00(約900円)です。ですが、ここに Microsoft 365 E3 (Teamsなし) + Teams単体の組み合わせで購入する場合は$33.45 (約5,320円)となり、Teams ありを購入するよりも$2.55(約380円)安くなります。

このように Teams を利用するのであれば “Teams を含む Microsoft 365” と “Teamsのない Microsoft 365 +単独のTeams” の組み合わせでも価格差がありません。ですが、Teams を必要としない場合は、Teamsを含まない Microsoft 365 を購入することで明らかに安くなるわけです。

欧州経済領域(EEA) 向けの追加保証

合意をとった以上、EEAに対して不利益がでないよう追加の保証も発表されました。EEAの顧客は契約期間中に Teams を含むブランから含まないプランへと年次更新時に切り替えられるようになります。割引率も維持され、パートナーも同様の保証が提供されます

価格差の維持

Microsoft Teams の有無による価格差は2025年11月1日から7年間、USDベースで固定される予定です。ただ、その後については未定のようですね。

Teams の有無による価格差の例) 参考換算: 1ドル=150円

Microsoft 365 と Office 365 スイートのTeams 有無による価格差
プラン 価格差 日本円換算(約)

Microsoft 365 E3 / E5

Office 365 E3/E5 

$8.55 (€8.00) 約1,280円

Microsoft 365 Business Standard

Microsoft 365 Business Premium

Office 365 E1

$3.21 (€3.00) 約480円
Microsoft 365 Business Basic $1.60 (€1.50) 約240円
Microsoft 365 F3 $1.07 (€1.00) 約160円
Teams 単独の価格
プラン 価格差 日本円換算

Microsoft Teams Enterprise

Microsoft Teams EEA

$8.55 (€8.00) 約1,280円
Microsoft Teams Essentials $3.21 (€3.00) 約480円

2025年11月1日以降のライセンス体系と価格

2025年11月1日より、世界中の新規顧客は再び Microsoft Teams が含まれるMicrosoft 365および Office 365 Enterprise スイートを購入できるようになります。また、Microsoft Teams を含まない Microsoft 365 および Office 365 Enterprise も引き続き購入可能です。

2025年10月12日 (日)

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20205年10月8日 9:00 AM (米国時間)より OneDrive の最新情報がデジタルイベントでアナウンスされました。

💻デジタル イベント

イベントは現在オンデマンドで配信されています。

Copilot + OneDrive—Intelligence in every click, inspiration in every memory | Microsoft Community Hub

今回のイベントのサブタイトルは「Intelligence in every click, inspiration in every memory」です。

「クリックするたびに利用できるAIの知性。あらゆる記憶にインスピレーションが宿る」といったところでしょうか? 前半はOneDrive 上のファイルからいつでも素早くCopilotを利用できるということでしょう。後半の記憶と言っているのは写真が中心となる話。イベントの後半では写真に関する数々の新機能が登場します。

このイベントにあわせて下記のブログも公開されています。

Copilot + OneDrive: Intelligence in Every Click, Inspiration in Every Memory | Microsoft Community Hub

ということで、この記事では今回発表された OneDrive の最新情報を整理していきます。

💡注意: Microsoft 365 Copilot 有償ライセンスについて

なお今回の発表はタイトルにあるように "Microsoft 365 Copilot の有償ライセンス" が対象となる機能が多いのですが、むろん、Copilot のライセンスが関係しない機能もあります。

とはいえ、もし現時点で当該ライセンスを持っていなかったとしても、その潜在能力を知ることができますし導入への後押しとなる情報といえるでしょう。

📝OneDrive に関する基礎知識について

OneDrive についてあまり詳しくないという方は製品の変遷についてまとめた以前の記事を読んでおくと理解が深まると思います。

SharePoint Technical Notes : OneDrive for Business の歴史 (~2023年)

🎞️デジタルイベントの概要

※各スクリーンショットは公開されている YouTube から取得していますが一部、画質があまりよくないところもありますがご了承ください。

このイベントでは Microsoft OneDrive に関わるMicrosoft の6人の方々が各トピックについて説明をしていきます。

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ちなみに、上記の画像は OneDrive の写真機能の新しいUXです! 

イベントの導入と事例紹介

トップバッターは SharePoint の父とも呼ばれる Microsoft President, Collaborative Apps and Platform | Jaff Teper 氏からで、デジタルイベントの内容の導入部分の話と pwc の OneDrive (Business) の活用事例の紹介です。デジタル改革を数年にわたり進めてきた中でも特に変革をもたらしたのが文書の要約の機能だそう。スタッフは1ファイルあたり20~30ページほどのドキュメントを要約しているそうで、日々の業務フローに組み込まれているとのこと。そもそも組織には45億ものドキュメントがあるそうで洞察を得るのは大変です。ですが、Copilot のおかげで税務チームの一部ではトレーニングプロセスが効率化でき、以前はトレーニングに80~100時間かかっていたのが、今は4~5時間で済むようになったとのこと。またOneDriveの同期機能の導入により、移動中でもいつでも手元にデータがあるので必要なデータにすぐにアクセスできるようになったのはメリットの一つ。

ということで、事例については実際にビデオを見るのがいいと思います。

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OneDrive (Business) Web版と同期アプリの新機能

さて、導入部分がおわり次のスピーカーは、Microsoft OneDrive Product Manager | Cami Mejia 氏 です。

Copilot のフローティングメニュー

OneDrive (Business) に Copilot のフローティング メニューが追加されます。現在、SharePoint の Knowledg agents はフローティング メニューになっているので同様に OneDrive でも画面右下にフローティングが表示されるようになります。

例えば、複数のファイルを選択している状態で Copilot のフローティングメニューをクリックすると次のような項目が表示されます。

  • 選択したファイルの要約をする
  • 選択したファイルを比較する
  • Copilot が自分に対して何ができるのか聞いてみる
  • 選択したファイルに関する質問をする

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デモでは、要約の例が紹介されていました。以前から選択したファイルの要約は可能でしたが、使用されている生成AIのモデルがアップデートされていくたびに情報量やその精度などが向上していることがわかります。

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OneDrive と同期されたローカルPC上のファイル

続いては Windows などに搭載されているOneDrive 同期アプリに関して。同期されたファイルやフォルダー群はローカルPC上で ファイル エクスプローラー上から直接アクセスできますが、この同期されたファイルからも直接 Copilot が利用できるようになります。

ファイルを選択した際に表示される「OneDrive」をクリックするとこの中に、Copilot を利用する「要約やFAQの作成、質問など」のメニューが表示されます。既にこの機能は利用できるようになっているようで、手元の環境でスクリーンショットをとってみました。オンデマンドビデオとは異なり日本語なのでイメージしやすいと思います。

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ちなみに、現時点でもPC上のローカルファイルを右クリックしたときに表示されるコンテキスト メニューには "Ask Copilot" がありますが、これをクリックするとWindows 上の Copilot が起動するだけで選択したファイルに特化したアクションではありません。また、OneDrive で同期されているファイル以外でもローカルファイルにはこのメニューが存在します。

さらに、OneDrive の同期アプリ自体をクリックした際に表示される「アクティビティ センター」からファイルの横の三点マークをクリックするときにも Copilot のメニューが表示されるようになります。

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またファイル エクスプローラー上からOneDriveに同期されたファイルを右クリックすると新たに「AI アクション」メニューが利用できるようになります。

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この機能は現在 SharePoint のドキュメント ライブラリにロールアウトされてきているものであり、これまでコマンドバーにあった Copilot メニューは 「AI アクション」に変更されています。これをOneDriveと同期されているローカルPC上のファイル(フォルダーも含む)からも直接利用できるようにしようということのようです。

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マルチモーダル対応

Copilot はマルチモーダルです。マルチモーダルとは文字以外に画像や音声、会議の録画などにも対応しているということです。

そのため OneDrive に格納されているTeams会議の録画ファイルから直接 Copilot メニューを利用して会議の要約や質問などができるようになります。録画に生成されているトランスクリプトをもとにやり取りすることになります。

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他にもホワイトボードに手書きで書いた内容を写真にとり OneDrive に格納していたとしても、この画像について Copilotを使って説明させたり文字を抽出したり、質問したりできます。

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デモの中では「私が最優先ですべきことは何?」と聞いています。これに対してCopilotはJPEGの画像内の手書き文字を読み取り次のように回答しています。

  • Cami には9/5 までに提案書を提出してもらう
  • Alexにはスライドの最終調整を9/2までに行ってもらう

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オーディオ概要 (Audio overviews)

Copilotはファイルの概要をオーディオ概要として作成できます。Podcast を聞くように内容を聞き流しながら情報を把握できます。通勤中などに便利です。

モバイルデバイスの OneDriveからこうしたオーディオ概要の作成もできるようになります。ちなみに、OneDrive for the web にもオーディオ機能はすでに展開されているはずなのですが英語のみとなっているそうで、いまだに OneDrive にはオーディオ概要を作成するメニューは登場していません。日本語対応にはもうしばらく時間がかかりそうです。

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OneDrive と SharePoint

さて次は、Microsoft OneDrive Principal PM Architect | Arvind Mishra 氏 のパートです。OneDrive とかかわりの深いSharePointについても言及しています。

OneDrive の新しいロゴ、登場!

まずは、OneDrive のロゴが新しくなりました! という話から。ちなみに、Microsoft 365 の製品ロゴがこのイベント前から変わったので SharePointや Word, Excel, PowerPoint, OneNote なども新しくなりましたね。

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SharePoint のドキュメント ライブラリ

SharePoint のドキュメント ライブラリに OneDrive の操作性が加わります。デモの画面はライブラリのイマーシブモード(拡大表示)のようですが、フィルター項目にファイルのアイコンが並んでいたり、コマンドバーの位置が右上に移動したりといろいろと変化していますね。

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ビューの操作アイコンもちょっとわかりやすくなっていますし、デモではグループ化表示も直感的にできるようになっていました。

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OneDrive にショートカットを作成する

何年も前から Microsoft は OneDrive 同期アプリで SharePoint を同期する際に SharePoint から "OneDrive と同期" ではなく、ショートカットを使うよう推奨しています。

今回のデジタル イベントでもこれをことさらに強調していました。ショートカット経由で同期した方がスマートだし、選択したものだけを同期できる。現状では、従来の同期ボタンと比較してショートカットが5倍も使われているのだそうです。実際、Microsoft 社もショートカット機能をより使って欲しいので、目立つ場所にこのメニューを表示するようにしています。従来の同期はメニューの後ろの方に追いやられています。

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また、すでに同期されているコンテンツをスムーズに「ショートカット」へと移行できるようにすでに同期されているファイルなどに対してショートカットを追加すると「置き換える(Replace)」できるようになります。20251011_144832

People Card 

OneDrive と同期しているPC上ではファイル エクスプローラーのホームに OneDrive が統合されています。ここの「共有」タブでは誰と一緒にファイルを利用しているかを確認できます。そのためここにはファイルやフォルダーにつながりのあるユーザーのプロファイルやアクティビティの主体となるユーザーが表示されます。

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この「ひと」のアバターをクリックすると新しい People Card が表示されます。ここでは連絡先や最近自分と共有されたファイル群、TeamsやOutlook でのやり取りなどが確認できます。20251011_230350

新規ファイルの保存場所が既定で OneDrive へ

Word, Excel, PowerPointなどの Office アプリケーションの新規ファイルの保存場所を直接、OneDrive に保存できるようになります。ファイルに書き込みを始めると「AutoSave」が自動的に有効になり OneDrive にファイルが保存されます。そのためすぐにほかの人と共有することが可能です。

この機能は、Windows 版の Word の Insider Channel で現在利用可能です。今のところ Wordのみがサポートされますが、Excel と PowerPoint も近くサポートされるとこと。

OneDrive とチームワーク

Microsoft OneDrive Principal Product Manager の Stephen Rice氏がスピーカーであり、OneDrive とチームワークについて述べています。情報のシェアにフォーカスしながら、運用管理面での新機能などについても言及しています。

Hero Link 

最初に紹介されたのが「ヒーローリンク」です。これはこのブログでも以前取り上げました。詳しくは下記をご参照ください。

SharePoint Technical Notes : Microsoft 365 に導入される次世代の共有機能について: ヒーローリンク

当初は今年の秋ごろ(つまり今頃)に詳細が分かるはずだったのが、Microsoft 365 Roadmap を見ると来年の春ごろにずれ込んだようです。

追加情報としてはヒーローリンクをメールで送信する際に Copilot によるファイルの概要生成ができるというところでしょうか。現在の共有リンクでもサポートされていますが、ヒーローリンクでも利用できるようです。リンクを送信された相手はファイルを開かなくても概要がさっと把握できるわけです。

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アクセス要求画面のアップデート

ユーザーがアクセスしようとするサイトやファイルなどのコンテンツにアクセス権限がない場合は、既定では「アクセス要求」を行えるようになっています(サイトの既定値)。

これまで提供されてきたアクセス要求画面は確か SharePoint Server 2010もしくは SharePoint Server 2013 あたりから提供されているもので、もうかなり古臭くなってしまっていますが、ようやく新しいアクセス要求画面が登場するようです!

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ドキュメント ライフサイクル管理: ファイルの一括転送

退職するユーザーがいた場合、基本的にはそのユーザーのOneDriveは最終的には削除されることになるため、重要なファイルなどを迅速に別の場所に移動させる必要があります。

新しいアップデートでは、OneDrive の所有者は保持していたファイルを別のユーザーやSharePoint のコラボレーションサイトなどに一括移動できるようになります。

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この移動画面では目的のファイルを移動、コピー、ダウンロード、削除ができます。

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この画面に表示されるファイルはフィルターが可能で、他のユーザーと共有されているファイルのみに絞り込んで確認することもできます。

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ファイルのアーカイブ

Microsoft 365 アーカイブは利用頻度の少ないファイルや削除予定のファイルなどを安価なストレージに移動して運用するための仕組みです。利用するには従量課金制の設定をテナントレベルで事前に行っておく必要があります。

現在はサイト単位のアーカイブのみが可能でが、新たにファイル単位のアーカイブが可能になるとのこと。Microsoft 365 アーカイブがアナウンスされた時から多くの方が関心を持っていたトピックでMicrosoft はこれをサポートする予定であるとは明言していました。待望の機能といえそうです。

デモを見るとドキュメント ライブラリに新たに「アーカイブ」メニューが追加されています。

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アーカイブする際に、最初の7日間はすぐに再アクティブ化できることと、再アクティブ化する場合は最大24時間かかることを知らせるメッセージが表示されます。

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アーカイブするとアーカイブされたことを示すアイコンが表示されます。このアイコンは Teams のチームをアーカイブしている場合と同じものですね。

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ちなみに、夏の終わりごろから SharePoint の検索画面ではアーカイブしたコンテンツの検索ができるようになっています。

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OneDrive の同期の正常性ダッシュボード

Microsoft 365 Apps 管理センター(https://config.office.com)に OneDrive同期の正常性ダッシュボードに「OneDriveの同期」があります。

ここでは組織内において同期エラーの発生しているデバイス、フォルダーバックアップを使っているデバイス、最新バージョンを持たないデバイスなどの比率が確認できます。

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レポートはPower BI にエクスポートして分析することも可能です。

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SharePoint 管理センター内の Copilot 

SharePoint 管理センター内でも Copilot は利用できます。デモでは次のようなやり取りをしています。意訳するとこんな感じ↓。

ユーザー「あなたが見つけた過剰に公開されているサイトを削除してほしい」

Copilot 「さすがにそれはリスクの高い操作ですよ。当該サイトを一度確認してから手動で削除する方がいいですよ」

ユーザー「おっと。そうしたサイト上でのサイトアクセスレビューを始めて欲しいという意味だったんだ。」

Copilot 「それはいいね! サイトレビューが完了するまで毎週月曜にサマリーをメール送信しますね」

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ということで、もちろん、SharePoint 管理センターなどでの管理機能を熟知しているうえでとなりますが、Copilot と対話することでスムーズに管理操作を行えるようになります。

ちなみに、弊社では SharePoint 管理センターを利用する管理者向けのオリジナル研修を行っています。他ではあまり扱っていないようなIT管理者向けの濃い内容の研修です。ご参考まで。

【オフィスアイ株式会社】Microsoft 365 SharePoint の構成と管理 ~Microsoft 365 Copilot 対応~

個人向けのOneDrive 

続いては個人向けの OneDrive についてのアップデート情報です。スピーカーは Microsoft OneDrive の Principal Group Product Manager の Kalpana Berman さん。

OneDrive モバイルアプリ

去年、OneDrive のモバイルアプリのUXが大きくに変わりました。

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このUXが OneDrive (個人向け) のWeb版に導入されます。写真に関してはモーメント、ギャラリー、アルバム、ひと、お気に入りなどで分類があります。

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モーメントタブでは特定の日付を選択するとAIがその日に関連する写真をキュレートしてくれます。思い出をうまく整理してくれるわけですね。

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思い出の写真からスライドショーも作成できビデオとして自動保存できます。

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写真の検索もできるようになっており、デモでは「庭にいるうちの子どもたち」で検索しています。

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またモバイルアプリの新機能として選んだ写真をアニメ風に加工したりできるようになります。

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カメラロールには類似する写真が複数あったりしますが、これを1つにまとめてくれる機能も搭載されています。

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スタックした写真から1つだけを残して後は削除するといったことも可能です。

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Photo Agent

Microsoft 365 Copilot チャットに新しく Photo Agent が加わります。これは Microsoft 365 Premium のサブスクライバーが間もなく利用できるようになる機能です。今のところエンタープライズ向けの展開ではないのでご注意ください。

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例えば「Cobo に出かけたときの写真からベストショットを見つけて!」と依頼します。

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目的の写真を見つけてきてくれます。

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プロンプトからアルバムの作成依頼などもできます。

これからのOneDrive 

最後は Microsoft OneDrive チームの VP, Product Management  Jason Moore 氏がスピーカーです。これからの OneDrive について語ります。

ファイルの整理

OneDrive のCopilot フローティングメニューには「Organize your files, without the effort(手を煩わせることなく、ファイルを整理しますよ)」というメニューが用意されます。

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これによって、散らかっている自分の OneDrive の中のファイル群をCopilotが整理してくれます。フォルダーに整理してくれたり、フォルダーを色分けしてくれたりとあれこれ提案してくれます。

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提案内容をプレビューすることもでき、Before / After での比較も可能です。ちょっと魔法使いみたいな機能ですね。家の中なんかもこうやって苦労なくさっと片付くといいのに。。。

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OneDrive のホームにある検索ボックスはもともとサイト(コレクション)横断検索などができるようになっていましたが、これが新しくなり、Copilot 検索と同じような検索になります。

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キーワード検索ではなく、自然言語による文脈に配慮した検索ができるわけです。

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OneDrive カスタム エージェント

SharePoint ですでにカスタム エージェントが作成できるようになっていますが、ようやく OneDrive にも同様のものがお目見えです。

特定のフォルダー内のファイルに特化したエージェントを作成できます。

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エージェントの作成画面は SharePoint のものと同じですね。

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Researcher Agent

OneDrive のCopilotからResearcher による推論が可能になります。特定のフォルダー内の複数のファイルを横断的に調査しレポートを生成します。

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画面はあえて小さくしているようですが、詳細なレポートが画面に表示されています。

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OneDrive 内からワンストップで戦略までたてることができるわけですね。この機能は近く利用できるようになるそうです。

OneDrive Photos in Windows

来年に登場する予定なのが Windows の OneDrive Photo アプリです。Web版のOneDrive の写真と同様の機能が Windows にも投入されます。

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その他の参考情報

2025年11月18日~12日(米国)にはサンフランシスコにて Microsoft Ignite が開催されます。

こちらでもいろいろな情報がでてくるとのことで期待大ですね。有償の現地開催ではありますが、ハイブリット開催となっているためデジタル イベントとして無償で参加することも可能です。